偶然SCRAP#42: South Africaのアート界は`Afrophobia [アフリカ恐怖症]`に対抗しなければならない

(追記:2020年1月1日)
展覧会レビューもあるけど、friezeはオピニオンという社会動向をアートと絡めて紹介している。それも面白い。前の料理の特集もそうだけど、この色んなジャンルに行けるのも、アートの面白いところ。

今回は、ヨーロッパを飛んで、南アフリカの記事があったので、目が行った。なかなかラグビー以外で、南アフリカの記事を読むきっかけがない。

どうやら南アフリカで外国人排斥運動みたいのが起こってるらしい。ヨハネスブルグでのアート・フェスで、ナイジェリアのギャラリーが出展を辞退して、本当はそのギャラリーが入るはずだった空っぽのスペースの壁にナイジェリアのアーティストが「ありがとう、外国人嫌い」というステートメントをペンキで描いたらしい。ナイジェリア出身のタクシー運転手が南アフリカで殺されたり、南アフリカ以外のアフリカ人が南アフリカで殺されたりしているかららしい。

この記事によると、これはアパルトヘイトよりも前からあって、南アフリカに移住してきたアフリカ人たちは不明瞭な存在で辺境住み、変ななまりとかを嘲笑されたり、根拠のない偏見的なストーリーが日常の会話の中に散りばめられているそうだ。

これを今、展覧会によって、アーティストが浮き彫りにして、問題に対峙しよう投げかけているところのようだ。

(初投稿:2019年9月29日)
イギリスのアートマガジン「Frieze」から南アフリカで拡大する暴動に関する論評を引用紹介します。

Opinion /
South Africaのアート界は`Afrophobia [アフリカ人恐怖症]`に抵抗しなければならない
BY SEAN O’TOOLE
25 SEP 2019

アーティストたちは、南アフリカで増加するナイジェリア人や他の外国人に対する暴力に対処する方法を見つけようともがいている

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9月13日、FNB Art Joburg [Johannesburgで開催されるアートフェア]の観客たちは、空っぽのブース、「Thanks, xenophobia [ありがとう、外国人嫌い]」とぶっきらぼうなメッセージが描かれた壁を通り過ぎたはずだ。ナイジェリアのアーティストのSheila Chukwulozieによるステートメントは、16/16およびhFactorという二つのLagosに拠点を置くギャラリーの出展ブースに彼らの代わりとして描かれたものだ。この二つのギャラリーは、外国人に対する暴動が広まっている恐怖のため、土壇場でこのアートフェアから撤退した、しかし、このステートメントはまた、Durban港の外で、トラックで寝ていたZimbabweanの男性がガソリンで爆破された4月以降、South Africa中で、xenophobicの暴動が増加していることに対しても言及している。彼は重度の火傷を負い、彼の亡命書類、運転免許証やパスポートは焼き捨てられた。一ヶ月後、今度は、Mpumalanga州で発生した別の武装集団によるドライバーたちへの襲撃が繰り広げられた。その襲撃中、Malawianのドライバーは「No foreigners on our trucks [俺たちのトラックに外国人はいらない]」と言われたという。2018年3月以来、South Africaで雇用された外国人トラック運転手を中心に200人以上が殺害されている。―これはさらに酷い恐怖の序章だった。

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The 16/16 and hFactor booth at FNB Art Joburg. Courtesy: Stevenson Gallery

8月、19歳の大学生であるUyinene Mrwetyanaは、Cape Townの郵便局から小包を集荷中の郵便職員によって、強姦された後に撲殺された。彼女の遺体は、経済的困窮と犯罪で荒れた近隣地域に打ち捨てられていた。市民は激しく憤怒した。最近、再選された大統領であるCyril Ramaphosaは、国会の外に集まった黒装束の抗議する人たちとの話し合いに応じるため、アフリカの指導者たちとの会議を途中退席した。彼は、「もうたくさんだ!というあなた達の意見に同意しています」と話した。Femicide [女性に対する性犯罪]に関する2016年のWorld Health Organisation reportでは、南アフリカは、Honduras, Jamaica, Lesothoに次ぐ4番目の死亡者数であった。

Mrweyanaについて大々的な公開捜査が続く中、Pretoriaのタクシー運転手が薬物のディーラーとされる人間との口論中に射殺された。タクシー運転手は、ナイジェリア国籍だとされている。今度は、同じような事件に関連する黒人のアフリカ人たちやアフリカの企業に対する報復で、12人以上の人々が殺害された。Nigeriaは、その後2機の緊急空輸で500人を超える人々を避難させた。ナイジェリア国内で抗議する人々は、南アフリカの企業を標的にしている。

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A woman sings as she holds a banner during a civil society group’s march against the recent rise of xenophobic attacks in South Africa, on 14 September, 2019, in Johannesburg’s Central Business District. Courtesy: Michele Spatari/AFP/Getty Images

The August attacks [8月の暴動]の間、Oby Ezekwesili―Cape Townで開催された世界経済フォーラムの懇談に出席している著名なナイジェリアの経済顧問―は、南アフリカにおける反アフリカの虐殺の再発問題―2008年と2015年の二つの紛争の再燃―をxenophobia [外国人恐怖症]と言うよりも、むしろ’afrophobia [アフリカ人恐怖症]に紐づくものと見なした。アフリカの移民は、長いこと、South Africaでは不明瞭で取るに足らない存在とされてきた。Apartheid [南アフリカの黒人に対する白人の人種差別政策]の廃止以降もずっと、アフリカ黒人の移住者は、「国家のbogeyman [子取り鬼]」として、広く一般の会話の中で構成され、色んな会話に散りばめられている、とMozambique生まれの社会学者David M. Matsinheは、2011年の評論『Africa’s Fear of Itself [アフリカの恐怖という名の恐怖』で書いている。

しかしながら、South Africaが大陸の隣人たちを無視したり、憎悪の念さえを抱くのは、apartheidの廃止より前の話である。この洞察は、キュレーターであるRory Besterの重要な展覧会シリーズ「Kwerekwere: Journeys into Strangeness [Kwerekwere: 未知への旅路]」(2000-03)の中核部分だった。この展覧会シリーズのタイトルは、アフリカ黒人の移住者を描写するために使われるオノマトペ的な中傷(移住者は現地語がうまく話せずkwerekwereと聞こえる)に由来している。Besterは広く探索したが、アフリカ黒人の移住者に対する現在の姿勢を形作っている、異質性および黒人の犯罪性といった植民地やアパルトヘイトといったモチーフを、いかに現代の報道写真が反復強調しているのかということを、彼の展覧会は非常に雄弁に物語っている。


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Zanele Muholi, Boitumelo Mnguni, KwaThema, Gauteng, 2017, silver gelatin print, 86.5 × 60.5cm. Courtesy: © Zanele Muholi, Stevenson, Cape Town/Johannesburg, and Yancey Richardson, New York

FemicideやAfrophobiaといったSouth Africaの伝染病に対する個々の芸術的反応は多数あり、そして様々である。Art Joburgでは、画家のLady Skollie(別名Laura Windvogel)は、Mrwetyanaの殺人事件を参照する無題の絵画を含むインク、水彩、クレヨンを用いた一連の新しい作品群を展示した。「South Africaの政府は女性を嫌っている」というステートメントが、郵便局のロゴをフィーチャーした彼女の作品に組み込まれている。Johannesburgが炎上したこのアートフェアの直前、写真家Zanel Muholiは、Stevenson Galleryで、最新のインスタレーション作品「Faces and Phases [顔と様相]」(2006-ongoing)を展示した。この作品は、今やかなりの確率で残忍な暴力を生じさせるLGBTQIをテーマとする、進化するポートレートのアーカイブだ。

South Africaの重大な危機において、アート作品だけで解決できないことは分かっている。アーティストは第一義に市民であり、配慮や歓待といった義務によって拘束されている。これはJohannesburgのアーティストSerge Alain Nitegekaが自発的に起こした2011年の行動がそれを実証している。Burundiからの亡命者であるNitegekaは、昨今のxenophobic [外国人恐怖症]が大流行した場所の近く、Pretoriaの入国管理局の外で並ぶ亡命希望者に100個の木製のスツールを配った。彼の直接的な行動は、実行可能なことのお手本であり、驚くべき静かな告発でもある。この告発は主にSouth Africaの国家的な不名誉に対して呼び掛けている。

Main image: Tushar Hathiramani and Sheila Chukwulozie’s statement at 16/16 and hFactor’s booth at FNB Art Joburg. Courtesy and photograph: Sean O’Toole

(文)SEAN O'TOOLE : A writer and contributing editor of frieze. He lives in Cape Town, South Africa
(訳)雄手舟瑞


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