即興×競作【即興小説】2023/10/3

Word Cascadeからキーワードを3つ拾って、15分で即興小説。

少し肌寒くなってきたある冬の夜のコンテナターミナルに人影が二つあった。
「先輩本当にこんなところでやってるんすかあ?もう2時間経ちましたよ」
いかにも新人というような男が拳銃を持ってコンテナの影に隠れている。
「いや、必ずくる。ここが密売の現場だ。それは間違いない。」
50を超えたような大柄の男が新人の男の向かいのコンテナの影で息を潜めている。
「はあ、ここが本当に鼻取引の場所なんですね?」
鼻取引、それは今巷で話題の裏商売のことだ。鼻は花の隠語などではなく、正真正銘の鼻。顔の部位の一つのあの鼻だ。政府に個人情報を全て管理される時代になってから早10年。その間にいくつもの逃走手段が開発された。整形が科学的物質の混入などの原因で禁止されたため、指名手配犯は簡単に整形ができなくなった。しかし、その代わりにできたのが鼻取引だ。実は人間の顔は鼻で形成されていると言っても過言ではないぐらいに鼻が変わると印象が変わる。また、整形のような跡も残らないので今、指名手配犯に大人気の商売なのだ。
「しかし、そんなことで本当に逃げられます?普通に裏の整形師使った方が良くないすか?」
「いや、鼻の入れ替えは一瞬だ。警察に追われている時に鼻を持たれていると、途中で鼻を変えられ、分からなくなってしまう」
鼻の入れ替えにかかる時間はほんの一瞬。死神の目を入れ替えるのと同じくらいの速さと噂されている。しかし、それが本当なのか。なぜ一瞬で入れ替えられるのか。まだ謎に包まれている。
「おい。あの光、車じゃないか?」
2人の視線の先には白い光が二つ。
「おい、隠れろ!」
「は、はい!」
先輩の刑事であろう男と新人の男はコンテナの影にうずくまるようにして隠れた。
その数秒後、黒いリムジンが止まり、黒服の男がゾロゾロと降りてきた。
おい!誰もいないか確認しろ!銃は持ったか?誰もいません!
などという物騒な会話が一つ先のコンテナから聞こえてくる。
「よし、全員cー27に入れ」
その言葉が黒服の男の誰か

中学2年

昔から人は争いつづけてきた。最近では武力による争いより言論による闘争の方が多くなっているが、昔から戦闘のためだけに生まれてきた戦闘民族という人種がある。彼らは戦うことを目的として育ち社会に出ていく。通常のような「学校」には通わず、里で常に武術を磨きながら生活していた。一昔前では一人前になってから
実際に戦闘に駆り出されるなんていうこともあったが、最近では一般的に恐ろしい過酷などと言われている社会に出ていく。というのが一般的になりつつあった。戦闘に行くことが少なくなってもなお里では通例通り里育ちが続いていたので教育を受けていない彼らにはそこで生き抜いていくのは厳しかった。
「おい!!なんでこんなこともできないんだよ!」
自分より強く無いくせに生意気な。戦闘民族の青年はいつもそう思っている。ここでは先頭のことなど一切役に立たないと言っても過言ではない。人を殺すことはこっちでは御法度とされているし、実際にそんなことをして消された奴もいる。この世界では満足に暴れることができない。暴れたい、そんな欲求が彼の中にためっていた。ここでは、最近傾国の美女だなんだ騒がれている奴がいるらしい。なんだかんだここに適応していくには情報を手に入れることが大切だと、こっちの書には書いてあった。

中学2年

「ひねり」

 男は起きると、右腕に違和感を感じた。痛いわけでも痒い訳でもないが、たった豆程の大きさの、何か冷たいものがへばりついているような感覚だった。
恐る恐る腕を上げ、確認する。少し重かった。
 そこには、ボタン。四つ、縦に綺麗に並んでいる。それぞれ赤、青、緑、黄の四色で、見るからに人工物である。取ろうとしても、肌ごと持ち上がってしまって取れず、少しひんやりとしたそのボタンの感触が残っただけだった。逆に押してみてはどうかと思ったが、これも肌ごと沈んだだけである。男は少々苛ついたが、その日は大切な予定がある日だったので、こうしてはいられないと準備を始めた。
 その日は古くからの友人と久しぶりの飲みだった。

中学3年

太平洋、一面に広がる海には、一隻の戦艦があった。日本時間12月31日11時59分。彼らは今、太平洋を占領する海賊の討伐を命令されている。
「くそっ!なんで一年にたった一度しかない大晦日の日に海に駆り出されなきゃなんねえんだ!年越しそばさえ食えやしねえ」
「仕方ないだろ仕事なんだから、きっと日本にいるみんなもこのくだらない海賊のせいで出汁さえ取れない状況にあるんだ、さっさと海賊見つけて、ぶちのめそうぜ」
 艦内に轟音が走る。「艦長、海賊船15隻の奇襲です!」
「何!すぐに戦闘配備だ!」艦長が言う
「くっ、15隻もか、流石にこの戦艦一隻では足りないだろう、すぐに増援だ!」
「艦長、インターネット通信機関破損です!日本本島に連絡できません!」
「なんてことだ、こんな形で年を越すことになるとは…」

中学2年

死んだら他の世界に行くというのは、この世のほとんどの人々が知っていることだ。知らないのなんて、死んだことのない僅かな人間だけだろう。

中学3年

俺の兄の頭はおかしい。俺が物心ついた時から父と母からは距離を置かれ、部屋に引きこもっていた。ドアの前の食事の載った台を見ていると、これまで開かれた事が一度もなかったドアが開き、白く細い手が姿を現した。俺はその光景を強く覚えている。手は食事の載った台を掴むと、内側に引くようにして食事を部屋の中に引き入れた。俺は今考えると中々変だが、その閉じられようとしているドアのドアノブを掴んだ。兄が驚いたように目を見開いたのを覚えている。俺は幼児らしく彼に質問をした。何せ随分と前なので内容も兄の答えも覚えていないが、おそらく部屋の中で引きこもり、両親すらと話さない初対面の兄にその理由やらを問うたのだろう。彼は取り繕ったかのような優しい態度でそれに答えた。その一連の流れが終わると、彼は散らかった部屋の中で寛ぐ俺に幾度か奇妙な質問をしたのを覚えている。あまり多くのことは覚えていないが、彼が真剣な眼差しをしていた事と、俺が答えるたびに彼が顔を顰めていったのははっきりと覚えている。彼は最後の質問を終えると、すぐに押し出すようにして部屋の外に俺を追い出した。それから俺は今に至るまで話した記憶は無い。
さて、なぜそんな彼の事を思い出したのかと言うと、彼が自殺したからである。部屋に引きこもっていたはずの彼は、実家と連絡を取っていなかったため知らなかったが家を出ていた。アルバイトの勤務先を転々と変えながら生計を立て、小さいアパートで暮らしていたらしい。そんな生活が三年弱続き、先日首を吊った。
俺はそんな兄の部屋にいる。兄の死体は残されていないものの、雑多な物で埋まった部屋自体には手がつけられていない様だ。部屋の床に落ちている中身の入っていないペットボトルやプラスチック製品をかき分け、部屋の奥に歩いていく。床には捨てられた物が山の様になっているものの、奥の机周辺は比較的清潔に保たれている。マスクを貫通し、立ち込める異臭を我慢しながら俺は机に向かった。
部屋の中の状態を見れば誰でも理解できるだろう。俺の兄は整理整頓が、苦手などという生易しい言葉で形容でき無い程向いていなかったのだろう。机の上には古書やノートが無造作に置かれている。机の上の物をまとめていると、途端に足を跳ね上げた。肉を裂くような鋭い痛みだ。靴下には穴が空いており、血が滲んでいる。段々と鈍くなっていく痛みを声を出しながら我慢し、床に目をやった。転がるシャープペンシルが目に入る。どうやら俺はこれを踏んでしまったようだ。それを屈んで指で掴み上げると、机の内側の壁に何かがテープで貼り付けられていることに気づいた。手で触れると、カサカサとした乾いた感触がする。大体人の顔程のサイズのそれは、ノートだ。机の上に載せたノートには、「見るな」とマークペンで書かれている。その言葉に逆らうようにしてノートを俺は開いた。

中学3年

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