文芸部@世田谷学園

世田谷学園文芸部のnoteです。小説に限らず、色々な作品をアップしていきます。

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マガジン

  • 即興×競作 作品集

    世田谷学園文芸部で実施した〈テーマ即興〉の競作作品集です。

  • 文芸部誌『虐睨11号』(2023年)

    世田谷学園文芸部の部誌『虐睨11号』です。文化祭で配布した冊子のWeb版になります。

  • いわくつきの品々

    世田谷学園文芸部の部員たちが集めた、いわくつきの品々。テーマに合わせて世界各地から集めてきた品物と物語をお楽しみください。(すべてフィクションです)

  • 文芸部活動記録

    世田谷学園文芸部の活動記録です。

  • リレー小説作品集

    世田谷学園文芸部で制作したリレー小説です。

最近の記事

即興×競作【即興小説】2023/10/3

Word Cascadeからキーワードを3つ拾って、15分で即興小説。

    • シツケテアソバセ【短編小説】

       カラスの鳴く刻。黄昏。公園のうっすら橙色に染まった長椅子にも、酒につぶれた不良品が一人。口からは世間の悪口。自分を律する言葉なんて寸分も出てこない。  地元の子供たちが遊んでいる。ただただ、自分にもこんないたいけな頃があったのか、と埃にまみれた記憶を漁る。思い出すほど、今の自分の醜さが際立った。そんなことを思いながらまた、右手の缶は口元に向かう。やるせない。 「君も一緒に遊ぼうよ。」子供たちの会話に、耳を傾けてしまう。 「…」 「ほら、こっちこっち。」孤立していた子もみるみ

      • 芯物花火【短編小説】

        「なんで浴衣着ないの?」 「だって男で着てる奴いないし。」 「二〇〇円になります!」 「やべーよ、暗くて全然小銭見えねー…」  小さな街の、小さな夏祭り。数時間後に上がる小さな打ち上げ花火を楽しみにしながら、人々は屋台に並ぶ。  バカだな。夏祭りで浮かれる人々を尻目に、俺は今日も利益を上げる。一番の稼ぎ時なのだ。普通は心を躍らせるであろう屋台のカラフルなフォントも、俺にはただ軽薄なものにしか見えない。  ふと男と肩がぶつかった。相手はひどく焦っているようだった。おそらく同

        • 勘違い24時【ショートコント】

          男歩いてる 男:うわ、警察いるじゃん。目つけられないといいなあ 警察:ごめーんっちょっとお話しきかせてもらっていいかな? 男:え?いやなんもしてないっすよ 警察:いやねえ皆そういうんだよまあすぐ終わるから。まず名前は? 男:内力黒夜です 警察:へえおっけーうっちー 男:初手距離近いね 警察:えっと内なる力に黒い夜だね 男:そう考えると親厨二病っだったんかな 警察:今日は何しにこんな暗くがやがやしたところに? 男:まあゲーセンですからね。普通にゲームしにきただけっすけど。 警察

        即興×競作【即興小説】2023/10/3

        マガジン

        • 即興×競作 作品集
          10本
        • 文芸部誌『虐睨11号』(2023年)
          10本
        • いわくつきの品々
          32本
        • 文芸部活動記録
          5本
        • リレー小説作品集
          9本
        • 文芸部OB×顧問対談
          4本

        記事

          言葉遊び【ショートコント】

          (Bは椅子に座ってる。放課後の教室的な。携帯をいじってる) A:おお!奇遇!(Bの横に座る) B:お、おお(さりげなく携帯をポッケに戻す) B:いやあ、暇だね。 A:そうだ!マジナやろうぜ! B:何かを略したことだけは分かる。 A:二つの単語を組み合わせたんだよ! B:え〜っと、マジ……ジナ……。あ!マジックと手品か! A:いやマジカルバナナ。(真顔) B:無理あるだろ、バナナ、ナしか入ってないじゃん。連想ゲームのことね。 A:マジカルバナナ!(本家のリズムで) B:急すぎね

          言葉遊び【ショートコント】

          星花火【短編小説】

           今日は新技術を駆使した史上初の星花火大会だ。二酸化炭素排出量を少なくするために花火が禁止されてしまい、それに代わり発明された物が星花火である。 「これから星花火の解説を始めます」 女の人の声のような音がスピーカーから聞こえてくる。 「星花火は磁気を発している星を地球から強力な電磁石で引きつけ、動かすことでの花火のような華やかさを再現します。」 最近の技術の発展への驚きでぽかん、としていると 「それでは星花火大会スタートです!」 という声が聞こえてきて慌ててスマホのカメラを起

          星花火【短編小説】

          猫【エッセイ】

           最近、道端で黒猫を見て思い出したことがある。そこまで重要な記憶ではない。多分、走馬灯では走らないし、なんなら、推しのライブをリアタイできた、なんて記憶に負けてしまうかもしれない。でも、大切な記憶の一つではある。  僕が、確か小四か小五くらいの時の話だ。確かまだ忌々しいコロナが爆誕する前だったと思う。  前提条件として、僕の家はマンションだ。流石に家バレはまだしないと信じる。僕の部屋は間取り的に隣の部屋が少しだけ見えるようになっている。まあ本当に少しだから特に何か見えるわけで

          謎【エッセイ】

           足を止めた。夜9時、まだ少し肌寒い季節。とある謎を見つけた。渋谷のネオンの明るさがちょうど入らないビルとビルの間の暗闇。一瞬目を疑った。なんだあれはと。その時はものすごく疲れていたため、幻が見えたのだと思ったのだ。  うん? さっきから何を見つけたんだって? 謎とは何か? その言葉の通りだよ。僕が見たのは暗がりの中の青いトラック。その車体には『謎』の一文字。その時駅を目指し、僕は橋の上。いや、大きな大きな歩道橋に続くスロープを登っていた。だから、確かめようにも行くことができ

          夏祭り【短編小説】

           もうこんな時期ですか。 殺し屋テラフは夏が嫌いでした。小さなころから人を不幸にする技を叩き込まれてきたので自分や人を幸せにするなんてことは考えたこともありませんでした。  夏といえば祭り、花火大会、花見とかみんなが盛り上がるイベントがあります。ですがそんなイベントに行ってなんの得になるのだろう。そう思っていました。 ある時テラルは仕事のためにターゲットのいる町の祭りに向かうことになりました。その町のお祭りは神社の境内で毎年開催されるもので結構な人で盛り上がるそうです。祭り当

          夏祭り【短編小説】

          ワン【短編小説】

          「わん!」 うちの飼い犬ワンは散歩がなによりも気に入っている。 これでも昔はワンがこんなに元気に散歩できるようになるなんて考えられなかったらしい。 「よし、準備できた。行こうか」 うちの散歩の道には小さな丘がある公園がある。公園はワンにとって最も動きやすい場所なのだろう。 「行ってこーい」 僕はワンのリードを放すとワンは一目散に丘へ向かって走って行った。  丘の麓のベンチに座ってワンを眺めていると、ベンチの隣に飼い犬を連れた小林さんが座っていた。 「今日もワンさんは丘で走って

          ワン【短編小説】

          リレー小説バトル

          かがみあわせ【中学三年チーム】第一走者:井上大志  鏡の中には弟がいた。弟がよく好んで履いていた灰色のチノパン、赤色のダサいチェックシャツ。そして、縁の無い伊達メガネ。俺と弟は瓜二つなのだ。双子、それも一卵性の双子なのだから当たり前だろう。  俺は満足して弟のクローゼットを閉め、彼が普段使っているだろう椅子に座った。胸の中で不定形の冷たい物体がざわざわ動いていると錯覚させるほど強い緊張を、鎮めるために俺は机の上の物を調べ始めた。辞書や輪ゴムで留められた写真の束、それらに付

          リレー小説バトル

          きうひい【コンパクト レトロ】

           キューピー人形は、1909年に米国で誕生したキャラクターとされているが、実はそれには前史がある。江戸時代後期、吉原の遊女たちの間で一大ブームを巻き起こした「きうひい」である。赤ん坊を模した小ぶりの人形は、釉薬を塗った焼き物で作られており、つるりとした肌触りが好まれたという。  もとは「稀有―雛」に由来し、吉原で死産された子どもを悼んで作られた素焼きの人形だった。 大正期に逆輸入の形で日本に入ってきた「きうひい」は、再びブームを巻き起こすが、江戸期のルーツは次第に忘れ去られて

          きうひい【コンパクト レトロ】

          葦原の中つ国の良き水【コンパクト レトロ】

           アロマウォーターとは、アロマオイルを抽出する際に副産物的に生成される、香りのついた水のことをいう。近年では加湿器に入れて楽しむ人も増えているが、もともとはリードと呼ばれるスティックを挿し、気化した香りを部屋に広げる、というものである。  リードは、日本語で葦のこと。日本神話において、地上世界は「葦原の中つ国」と呼ばれ、葦を通じて全ての良きものが良き香りと共に降り注いだと言われることから、アロマウォーターに使われるようになった。  今回、展示したアロマウォーターは1920年に

          葦原の中つ国の良き水【コンパクト レトロ】

          純白のパスケース【コンパクト レトロ】

           このパスケースはあの高度成長期の輝かしい時代に、ある一人の革職人が仕上げた最高級品だ。金持ち達がこぞって手に入れようとし、闇オークションにかけられたり、星の数ほどの泥棒や暗殺者が送り込まれたりした。そんな中、無精髭を生やした小汚い泥棒がこのパスケースを手に入れた。その泥棒は「こんなものあるから俺の人生はダメなんだ!!」と言い放ち、床に叩きつけ、何回も踏みつけた。パスケースはぼろぼろになってしまった。その瞬間、誰もパスケースに見向きもしなくなった。その後、次第にそのパスケース

          純白のパスケース【コンパクト レトロ】

          永久機関【コンパクト レトロ】

           現代の科学では不可能とされている永久機関を、政府の命令で研究していた物理学者がいた。研究の結果、その物理学者は現代と同じ様に不可能であると証明した。そして、無知な作業員の一人が試作品の一つを持ち帰り、それを永久機関として見せ物小屋に売り払った。科学を知る人間はそれを見てペテンだとすぐに気づいたが、大衆はそれを信じた。何しろそれは元々の試作品にゴテゴテとした歯車やらコイルなどを装飾として付けて、もっともらしい姿に改造されていた体。それは瞬く間に有名となったが、見せ物小屋の建物

          永久機関【コンパクト レトロ】

          蛍かご【コンパクト レトロ】

           このあたりの地方にはある年になると土地の守り神といわれる蛍が多く現れ、土地に恵みを与えるという伝説がある。少年は夢を抱いている。伝説の蛍を自分の作ったかごに入れることだ。少年は図書館の奥に長年眠っていたであろう伝説が綴られた本を借りた。その本には8月6日、1000年に一度この近くの河川に蛍が現れる。そう書かれていた。1000年に一度の年。ちょうど今年がその年なのである。 8月6日  その日は朝から快晴で太陽がさんざんと照っていた。あまりの暑さに熱中症警戒アラートが発動さ

          蛍かご【コンパクト レトロ】