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毛と人間のロマンス

たまに訳わからないところから毛が生えてきますよね。


ある一本の毛は平居に恋をしていた。激しく恋い焦がれ、感情をコントロールできなくなった毛は平居の体内に忍び込んでしまった。

毛『あぁ、この胸が締め付けられる感覚。あの人を考えるだけで何も手がつけられなくなるの。でも自信がない。あの人は私のことをどう思ってるのかしら。』

毛フレンド『だったら、確かめてみればいいじゃないか。』

毛『え、どうやって?』

毛フレンド『平居の訳わからないところから顔を出すんだ。もし平居がキミのことを見つけられたら、それはもう両思いってことさ。簡単だろ?』

毛『あなたって人は。。。』

こうして、毛は平居の訳わからないところから顔を出すことにした。選んだ場所はうなじ。平居にとっては目に見えない場所。かなり難しい場所を毛は選んだ。それでも毛は信じていた。必ず平居は見つけ出してくれると。

ニョキニョキ

3日後 長さ:1cm

毛『難しすぎたかしら。うんうん、そんなことない。簡単な場所を選んでしまっては意味がないもの。今は信じるしかないわ。』

平居『あーあ彼女欲しいなあ。』

毛『・・・私じゃダメなのかな。』

3日が経ち、毛は自信を失いかけていた。平居の些細な一言が毛を苦しめる。そのことに平居は気づかない。しかし時間は待ってくれない。刻々と時間が過ぎ、毛は5cmまで成長していた。

1週間後 長さ:5cm

平居『なんか首かゆいな。』カキカキ

毛『あぁあん。あんん。平居くんの温もりを感じるわ。なんて激しいの。あぁああん。』

平居『ふぅ』

平居の温もりを感じ、毛は生きる勇気を得た。毛は抜けまいと日々奮闘した。できる限りの力を尽くした。平居に気づいてもらいたい、抜いてもらいたいという一心で。

それから2週間、毛は生き抜いた。7cmまで成長していた。

2週間後 長さ:7cm

毛『そろそろ気づいて。私もう7cmまで成長したわ。もう抜けちゃう。抜けたらもう二度と平居くんの温もりを感じることはできない。それどころか一生のお別れになってしまうわ。気づいて平居くん。私はここよ。』

ささやくようなか細い声で毛は平居に訴えかける。
そして、その瞬間は突然やってきた。

ブチっ

毛『え?』

平居『・・・なっが。髪の毛みたい。
でもツヤツヤしていてとても綺麗だ。』

平居は自分のうなじから生えていた長く綺麗な毛を不思議に思い、毛を見つめる。

毛『平居くんと見つめ合ってる。。。夢に見た瞬間だわ。私よ、平居くん。あなたをずっと待ってたの。あなたは私を見つけ出してくれた。私たちは結ばれる運命だっry』

平居『おい、七瀬。訳わからないところから毛が生えてた (笑)』

平居の横には女がいた。毛の顔色が曇る。

七瀬『気持ち悪い。捨てなよ、そんな毛。』

平居『そうだね。』ポイ

次の瞬間、毛はクルクル回転しながら床に落ちていった。その時、毛の目に映ったのは勝ち誇った表情を浮かべる女の顔。そして愛しの人。

毛の目に涙がにじむ。それは悲しみの涙ではなく、悔悟の涙だった。


【次回】毛の復讐



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