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厚労委:大臣所信に対する質疑(中島克仁2019/03/13)

大臣所信に対する質疑(衆議院厚生労働委員会)

かかりつけ医の制度化

○中島克仁委員 昨日の子ども子育て支援法改正案の質疑で、医療制度改革の入り口論として、かかりつけ医の制度化、かかりつけ医を登録制・包括報酬制にする必要性を訴え、その前提となる現段階でのかかりつけ医の人数、そして政策評価をどのようにしていくのか質問した。
 「かかりつけ医の環境整備を進めることが重要」「かかりつけ医の普及定着に取り組んでいく」と答弁された一方、かかりつけ医の人数については把握していないということだった。
 政策評価については、「かかりつけ医の普及のプロセスに着目し」と答弁されていたが、まずお聞きしたいのは、この「かかりつけ医の普及のプロセス」とは具体的にどんなプロセスをおっしゃっているのか。
○根本匠厚生労働大臣 患者が身近な地域で頼りになるかかりつけ医を持つことができるよう環境整備を進めることが重要になっている。
 その全体のプロセスということでは、診療報酬において、かかりつけ医機能の強化を推進している。平成30年度改定では、かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料の要件緩和などの対応を行っている。具体的には、医師の配置基準、常勤2名以上を、常勤換算2名以上のうち常勤医師1名でいいと緩和し、かかりつけ医機能を推進していく。
 さらに、平成31年度から、都道府県による医療機関などの情報提供制度を見直し、新たにかかりつけ医機能に関する情報も提供することにしている。
 さらに、かかりつけ医の普及を推進するため、平成32年度までに全ての都道府県において、かかりつけ医の普及に資する事業を実施することを目標として、今年度から事業の実施・未実施を把握することにしている。かかりつけ医の普及に関する事業としては、地域医師会などによる医療関係者向けの研修会の実施、あるいは地域医療介護総合基金の活用などで、かかりつけ医の普及に資する事業を実施している。
 このような取り組みを通じて、都道府県や医師会等の関係団体と連携しながら、かかりつけ医の普及定着に一層努めていきたい。
○中島克仁委員 従来から、かかりつけ医をどう定義するか、なかなか集約できなかったが、平成25年8月に「日本医師会・四病院団体協議会合同提言」で、かかりつけ医の定義や機能が提言された。これは大変大きい提言だったと思う。
 事業を行っていると大臣はおっしゃったが、かかりつけ医の定義・機能を前提として、これから普及定着させていくということでよろしいか。
○根本匠厚生労働大臣 そういう考え方で推進していきたい。
○中島克仁委員 おそらく厚生労働省、そして大臣、私も認識は共有していると思うが、少子高齢化、人口減少、さまざまな課題がある中で、地域包括ケアシステムであったり、医療と予防、医療と介護、医療と福祉、さまざまな連携が必要だ。これからの日本社会はかかりつけ医のあり方が鍵を握っていると思うが、患者さん側からすれば、一体どの地域にどのぐらいいて、どこに行ったらかかりつけ医を見出せるのか、全く見えていない現状だ。
 我々は、かかりつけ医を制度化し、登録制の包括報酬制度を構築していく必要があるのではないかと考えているが、大臣の見解を求めたい。
○根本匠厚生労働大臣 例えば複数の疾患を有する高齢の患者さんが何度も相談できる、信頼できるかかりつけ医を持つ。これは本当に大事であり、その環境整備を進めることは重要だ。
 ご指摘の登録制、制度化、ここが本質的なお話だと思うが、少なくともかかりつけ医の定義、かかりつけ医をどんどんふやしていきましょうと、ここは共通していると思うが、登録制にするかどうかという制度論になると、基本的には患者が選択するものだから第三者が認定するのはなじまないのではないかという議論がある。
 一方、地域で日常的に医療を提供し健康相談を受けられるかかりつけ医は地域包括ケア推進に当たり重要と考えており、診療報酬改定においてかかりつけ医機能の強化を推進し、都道府県の医療機関の情報提供制度を見直し新たにかかりつけ医機能に関する情報も提供することで対応していきたい。
○中島克仁委員 大変苦しい答弁だ。問題意識は共有できていると思うし、さまざま議論の余地があることも承知しているが、かかりつけ医が定着普及することによって、その後の展開が劇的に変わってくる。さまざまな議論を乗り越えて、明確に規定していくべきだ。
 例えば、登録制にすることで、ICTの普及も言われているが、一定条件のもとで遠隔診療も可能となり得る。
 また、登録制と包括報酬制度を組み合わせることで、外来そのものが要らなくなると言うと変だが、在宅医療と同じような状況になり、設備投資や人件費の問題、さらに結果的に医療費が効率化できる可能性がある。
 さらには、医師偏在の問題も含め、医師の働き方の根底の制度設計に立てつけ直すことができる。
 今後の日本社会、医療制度の改革の入り口論として、今後もまた問題提起をしていきたい。

児童虐待防止 医療関係者・医療機関との連携

○中島克仁委員 昨日、児童虐待について、その現状認識も含めて質問したが、言うまでもなく、昨今、重大事件まで発展している案件がふえている。
 児童相談所の虐待相談の内容は、心理的虐待の割合が最も多く、次いで身体的虐待の割合が多い。
 野田市の小学4年生女児の一時保護に関しては、身体的な所見、またPTSDの疑いがあると診断したにもかかわらず、その後、帰宅を容認していた。目黒の案件においても、5歳女児に虐待が疑われる外傷があったにもかかわらず、医師に相談せず適切な安全確保を図らなかった。身体的所見がありながら、一時保護、一時保護の継続に医師の意見が反映されずに重大事件に発展してしまった。
 さまざまな取り組みによって虐待の相談件数はふえているが、経路別件数の推移は、警察や近隣の地域住民の方がふえている一方で、医療機関は、総数は10年前の1700から3000超えということでふえているが、全体の割合からいくと10年前は4%だったのが現在においては2から3%だ。身体的所見に最も気がつきやすい医師・医療機関からの通報が割合として低い現状をどのように厚労省として考えているのか、見解をお尋ねしたい。
○根本匠厚生労働大臣 全体の虐待件数が増加している。これは国民や関係機関の児童虐待に対する意識が変わった。近隣の皆さんからの通告という話があったが、警察を初めとした関係機関との連携強化ということも要因の一つだろうと思う。
 一方で、医療機関からの連絡件数自体は一貫して増加傾向にあるが、全体に占める割合は減少傾向にある。これは警察からの通告が毎年大幅に増加し続けることによって、相対的にその他の経路の割合が低くなっている。
 通告件数の多寡を評価することはできないが、大事なのは、通告されるべきものが通告されないことが問題で、より適切に通告される体制が確保されることが重要だと思っている。
 早期に気づき、迅速かつ的確な支援につなげていく。これはお医者さんがよくわかるわけで、地域における医療関係者や医療機関との連携体制を構築することが必要だと考えている。医療関係者が虐待の兆候や端緒に気づき、医療機関で児童虐待を発見しやすい体制を整備するために、例えば研修費用の補助も行っている。まずは、こうした取り組みを進めることによって、児童虐待にかかわる医師の確保等の体制整備を進めていきたい。
○中島克仁委員 私は今も外来やっているが、1例、「これは、もしかしたら」というケースがあった。やはりいきなり通報まではいかないで、地域の保健師さんに相談して、結果的に一時保護された。
 これは医学部でもそうだが、前線にいる患者さんを診る医師の通報の仕方も含めて、研修しているというが、なかなか進んでいない。
 子ども虐待医学会がやっているBEAMSという研修がある。ステージ1は開業医レベル、ステージ2は地域の中核病院レベル、ステージ3は専門医的なレベルで、ステージ1は初歩段階の所見を診る医師の講習で、45分ぐらいで受けられる。私も今度受けてみようと思っているが、こういったことを医師の義務として法制化していく必要があるのではないかと考えるが、大臣の見解を伺いたい。
○根本匠厚生労働大臣 ご指摘のように、児童相談所において医学的な知見を踏まえた対応ができるように、児童相談所における意思決定に医師が日常的に関与し、児童福祉士などとともに対応できるような体制整備を推進することが重要だ。今回の児童福祉法の一部改正案では、まず児童相談所における医師の配置の義務づけなどの内容を盛り込む方向で検討中だ。
 加えて、児童虐待について早期に気づき、迅速かつ的確な支援につなげていくため、医療関係者や医療機関との連携体制を構築することが必要だと考えている。医療関係者が虐待の兆候や端緒に気づき、医療機関で児童虐待を発見しやすいように、施策として研修費用などの補助を行っている。このような取り組みを進めることによって、児童虐待にかかわる医師の確保等の体系整備を進めていきたい。
○中島克仁委員 今回、児童虐待防止法改正案も閣法で出ているのでその際にも質問していきたいと思うが、早期発見、迅速な対応をするために、医療機関の重層的な対応体制を整えることが大変重要だと思うので、今後もよろしくお願いしたい。

(以上)

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