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法務委:大臣所信に対する質疑(井出庸生2019/03/08)

大臣所信に対する質疑(衆議院法務委員会) ※要旨

ゴーン氏保釈時の状況

○井出庸生委員 おととい、カルロス・ゴーン氏が保釈になり、変装して出てきたのではないかとか相当話題になった。警備員の方も大変多かった。大変印象的なシーンだと思って見ていたが、変装してきたような格好で出てきた、周りを拘置所の方が取り囲んだ、ああいうことに対して何か拘置所サイドからの協力や便宜を図ったというようなことがあったのかなかったのか伺いたい。
○山下貴司法務大臣 まず、個別の被収容者が釈放される様子についてお答えすることは差し控えたい。これが大前提。
 一般論として申し上げれば、釈放時の衣類については、被収容者が持っている衣類、または出迎え者が当日持参した衣類を着用するという取り扱いをしており、拘置所が便宜を図るということはないと承知している。
○井出庸生委員 私も一般論で伺っておきたが、他の方が「じゃあ私も変装して出たい」「誰がいるかわからないから、警備をたくさんつけてくれ」と、そういうことは認められるか。
○山下貴司法務大臣 これは変装と言うかどうかという問題があろうかと思う。私がお答えできるのは、被収容者が所持している衣類、または出迎え者が持参した衣類を着用するという取り扱いをしているところだ。
○井出庸生委員 刑事収容施設法の逐条解説、これは刑事局長を勤められた林真琴さんが書かれているが、持っていく物とか服などについては規定があるが、警備だとかそういったものについては何か明文のこともない。私も今回の件でそれをどうこう言うつもりもないが、ゴーンさんの保釈、これからの裁判というものは、既にその勾留の環境や日数などもメディアに取り上げられているので、日本の刑事司法制度を考える一つのきっかけになるのではないかなと思っている。

性犯罪の保護法益

○井出庸生委員 前回(閉会中審査)の続きで、性犯罪について伺いたい。 1月23日の法務委員会で、大臣から最後に少し、「委員ご指摘の点も含めて、適切な検討を行うことができるよう、性犯罪被害の実情の把握をしっかりと努めてまいりたい」というお話があった。私があのとき訴えたのは、性犯罪の常識を変えたいと。それは例えば、お酒を飲んでいたからとか、ツイッターやフェイスブックで知り合ったからとか、そういうことが理由で立件・事件化に慎重になる、捜査が慎重になってしまうようなケースだ。
 保護法益である性的自己決定権の自由を害されないために刑法で性犯罪の定めがあると思うし、大臣自身も私が取り上げた暴行・脅迫要件については、保護法益を守るために客観的に明らかな行為を捕らえなければいけないと、そういう趣旨の答弁があったと思う。
 その答弁を踏まえても、暴行・脅迫要件があった性行為を取り締まるのではなく、本来は、同意のない、性的自己決定権を侵害するような性行為を取り締まる。あくまでも保護法益である性的自由を守る、同意のない性交を罰する、それがこの性犯罪の刑法の本質であると、そこのところはこの際はっきりしておいてほしいと思うが、大臣いかがか。
○山下貴司法務大臣 強制性交等罪の保護法益についてのお尋ねだが、一般に、強制性交等罪及び強制わいせつ罪の保護法益は、性的自由または性的自己決定権と解されていると承知している。
○井出庸生委員 もう1回ストレートに伺うが、強制性交等罪などは暴行・脅迫のあった性行為を罰するのはもちろんのこと、それも含めて、本来は、同意のない、保護法益である性的自己決定権・性的自由を害したような性行為に対して捜査をして立件していくということではないか。
○山下貴司法務大臣 平成29年の刑法一部改正で強制性交等罪が定められた。そこには要件として求められているものがあるが、それを前提に政府はこの法律の施行を3年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしている。
 まずは既存の法律を前提に、これをしっかりと適用していく。他方で、附則9条に基づき、まずは性犯罪に係る事案の実態、これをしっかりと把握していくということで、今、性犯罪に関する政策検討に向けた実態調査、ワーキンググループを設けて、被害の実情等の把握に努めているところだ。
○井出庸生委員 かつて「ミスター議員立法」と言われた大臣には、ぜひ「ミスター刑法改正」の法務大臣になっていただきたいが。
 児童虐待の問題をとっても、体罰はいかんと。民法の懲戒権についても議論しようと。自民党の方が立ち上げた超党派の勉強会、ほとんど自民党の方のご参加だが、自民党の中でも懲戒権がやはり勘違いされている一番の大元だという話がある。懲戒・体罰・しつけの分野も、例えば顔は駄目だがお尻とか背中をひっぱたくのはいいとか、物置に閉じ込めるのはいいとか、そういうものはもはや通用しなくなってきた。体罰、子どもに手を出すことはいけないということをきっちりと法律化すべきではないかという議論だと思う。
 ぜひ性犯罪についても、暴行・脅迫がなければ駄目というところから少しずつ変わってきていることは私も法務省から伺ってきているが、法律の検討に値する大きな議論だと思うので、やっていただきたい。「ミスター刑法改正」になっていただきたいと思うが、なっていただけるか。
○山下貴司法務大臣 刑法を考えるに当たっては罪刑法定主義、なかんずくやはり明確性の原則というのがあり、犯罪になる行為とならない行為がはっきりしているのかどうかというところが問題になる。今般、強制性交等罪の議論においても、暴行・脅迫のような外形的行為がないときには被害者の同意を証明することが容易ではない。これはもう性交に応じるか否かという内心にかかわる、この立証や認定が難しいというご指摘もあった。そういった指摘を踏まえ、今般の改正ではこういうことになったわけだが、なお事態把握に努めて必要な措置をとってまいりたい。

裁判記録の保存

○井出庸生委員 次に、裁判記録のことを最高裁に伺いたい。資料で新聞記事を配付しているが、「重要裁判多数の記録廃棄」と。これは民事訴訟の裁判記録で歴史的なものを永久保存するための制度が最高裁の規定の中にあるが、東京地裁ではそういった規定で永久保存されている文書が11件しかないと。270件を、とってあるがちょっと宙ぶらりんになっていると。「歴史への自覚が欠けている」「裁判所は、目の前の事件判断だけでなく、歴史をつくっているという自覚を持ってもらいたい」という識者のコメントがある。
 実際、朝日新聞が情報公開請求をしたところ、かつて「朝日訴訟」という、生活保護制度の改善につながった、生存権の意味を問うた裁判の記録が廃棄。それから「レペタ訴訟」、裁判所の傍聴でメモがとれなかった実態を改めた裁判の記録も廃棄されたということだ。
 刑事裁判記録については散々昨年からやってきており、上川前大臣のご英断を山下大臣が引き継いでくださり、これもすばらしい結論が出ると私は期待をしているが、直近の3年間で、規定によって永久保存すべきとしている民事裁判の記録がどれだけ全国の各地裁にあるのか。それと、その永久保存している記録で、これは私の質疑の中で明らかになったが廃棄となっているものが刑事の場合は少しあった。民事についてそういうことがあるのかないのか伺いたい。
○村田斉志最高裁判所事務総局総務局長 地裁を含めた下級裁判所において事件記録等が資料または参考資料となるべきものとして事件記録等保存規程9条2項で定めている特別保存に付した場合には、これを最高裁に対して報告するように求めている。
 この結果によると、2項特別保存に付された事件記録に関する下級裁から報告のあった件数は、平成28年が154件、記録の冊数で2021冊。平成29年が281件、記録の冊数では710冊。平成30年は件数11件、冊数で330冊となっている。
 今申し上げた記録について、把握している限り、その後に廃棄されたものはないと承知している。
○井出委員 民事の裁判は毎年新たに15万件程度、新しい物が発生すると聞いている。刑事裁判が年間新たに始まるものとは比較到底できないものだと思うので数字の評価は控えるが、今回のその記事とこの質問を機に、全国の地裁で特別保存をするべき文書がきちっと、東京地裁のように宙ぶらりんになっているようなものがないか。それから特別保存するしないを決めるときにもう少し、皆さんからしたら業務文書かもしれないが、国民・研究家からしたら歴史的な資料なので、そういう視点で保存をしていってほしいと思う。もっと言えば、特別文書に指定すれば、そrえはいずれ公文書館に移すのだから、もうぼんぼん特別保存して公文書館に移して、文書の保管はプロに任せて、裁判所の皆さんは裁判に専念していただくという方向で検討していただけないかなと思うが、少しでも前向きな答弁があればお願いしたい。
○村田斉志最高裁判所事務総局総務局長 まず前提として、委員ご指摘の報道にあるとおり、東京地裁において特別保存等の判断がされないまま相当数の事件記録が保存期間満了後も保存されていた。これは事実であると承知しており、規定などでは保存期間満了後は特別保存に付する場合を廃棄しなければならないとされているので、特別保全をするのか、廃棄するのか、判断をしないで事実上保存しているのは規定等に違反する状態であったと言わざるを得ない。そういう意味で、東京地裁に対しては規程等に沿って特別保存に付すべきものは手続を速やかにとるように、そうでないものは廃棄の処理を進めていくということで指導していきたい。
 その他の一般的なところをどうすべきなのかというところに関してだが、この規定の定めにもあるが、学術研究者等から事件及び保存の理由を明示して2項特別保存の要望があったときには、特別保存に付すかどうかの判断に当たってその要望を十分に参酌すると定めている。事件記録について資料等となるべきものである否かを判断するに当たり、学術研究者等から寄せられる要望の内容が検討の大きな要素になるということは間違いなく、学術研究者あるいは報道の方々も含め、適切にご要望を示していただき、これを特別保存の判断に生かしてことは我々としても大変重要であると考えている。最高裁としては、今後ともこうした要望等が示された場合にこれを十分に参酌した判断がされるように関係者に対して指導してまいりたい。
○井出庸生委員 丁寧に答弁いただいたが、中身はこれまでと一歩も変わっていないと思うので、この記事と、質問させていただいたことを受けとめて、善処していただければと思う。

(以上)

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