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安保委:大臣所信に対する質疑(重徳和彦2019/03/28)

国の安全保障に関する件【衆議院安全保障委員会】※要旨

沖ノ鳥島の低潮線保全/中国の無断調査

○重徳和彦委員 またしても、日本最南端の沖ノ鳥島沖の排他的経済水域・EEZで、23日の午後0時半ごろ、中国の海洋調査船が活動したということだ。この事案の事実関係と、最近の類似の事例について答弁願いたい。
○星澄男海上保安庁警備救難部長 本年3月23日から25日までの間、沖ノ鳥島周辺の我が国排他的経済水域において、海上保安庁の巡視船及び航空機により、中国海洋調査船「嘉庚」が観測機器のようなものを繰り返し海中に投入している状況などを確認している。
 このほか、中国海洋調査船による沖ノ鳥島周辺海域における我が国の同意を得ない調査活動については、平成25年7月に2件、平成28年3月及び10月にそれぞれ1件確認している。平成30年12月には中国海洋調査船「向陽紅01」が同海域で航行していることを確認しており、その後の報道において、中国側から海洋調査を行った旨の発言があったと承知している。
 これらの活動に対し海上保安庁では、関係機関と連携しつつ、巡視船などによる監視や中止要求などを行っている。
○重徳和彦委員 中止要求してもなかなか退去しないというのが現実だ。そして毎回お決まりのように外務省は外交ルートを通じて中国政府に申し入れを行っているが、また発生するという関係が続いている。今までのところ、こういった外交上の対応、努力の成果をどのように見ておられるか。
○田村政美外務省大臣官房参事官 本件中国海洋調査船をめぐる海上保安庁からの情報を受け、ただちに外交ルートを通じ中国側に対し、日本側は本件海洋の科学的調査に同意していない旨を明確にした上で、当該調査を即刻中止すべき旨の抗議を繰り返し行っているところだ。
○重徳和彦委員 やっていることはわかっているが、それをやって、どうなのかということを知りたい。
○田村政美外務省大臣官房参事官 外交上のやりとりであり、詳細は差し控えたいと思うが、中国からは独自の立場に基づく主張があった。
 いずれにしても、そのような機会にも中国に対しては、本件海洋の科学的調査に同意していない旨を明確にして、即時中止を求めているところだ。
○重徳和彦委員 「独自の立場」と。外交だから差し控えるべき案件もあるかもしれないが、これは事実上、表でやっている話だ。
 中国の主張は、沖ノ鳥島は岩だと。
 歴史上領土であり、かつ島であり、したがって排他的経済水域を設定し得るというのが我々の立場だ。
 国際法上、島と岩は何で線が引かれるか伺いたい。
○三上正裕外務省国際法局長 国連海洋法条約第121条1項において、「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義されている。
 岩に関しては、そのような定義は特に置かれていない。
○重徳和彦委員 満潮時にも水面上にあれば、これは島だと。これは国際法上そうなっているのか、日本の立場ということなのか。それと違う主張というのは国際法上違うということになるわけなのだが、もう少し具体的にお願いしたい。
○三上正裕外務省国際法局長 国際法上、すなわち国連海洋法条約上「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義されており、沖ノ鳥島はこれに当たり島として地位が確立しているというのが我々の立場だ。
○重徳和彦委員 そうすると、中国の「独自の立場」というのはどのようなものなのか。
○三上正裕外務省国際法局長 外交上の今回のやりとりについては控えさせていただきたいが、一般的に、中国は沖ノ鳥島に関して、島として地位が確立しているという日本の立場に同意していないと承知している。
○重徳和彦委員 奥歯に物が挟まったような言い方で非常にわかりにくいが、何にしても中国は「これを島ではない」と言っており、日本は日本で国際社会に日本の立場を広く理解してもらう必要がある。このための努力の一環と捉えているが、2010年施行の低潮線保全法。海洋資源の開発利用、海洋調査の活動拠点となる港湾施設整備などが目的と理解しているが、沖ノ鳥島も特定離島に指定され、これまでさまざまな取り組みをされていると思う。その取り組み内容について伺いたい。
○林俊行国土交通省水管理・国土保全局次長 我が国最南端の島である沖ノ鳥島については、日本の国土面積を上回る約40万平方キロメートルの排他的経済水域を有する極めて重要な島であり、国土交通省においても低潮線保全法に基づきさまざまな取り組みを行っている。
 具体的には、排他的経済水域の基礎となる低潮線を保全するために、船舶等による定期的な巡視や衛星画像による調査を行うとともに、周辺海域における我が国の経済活動の拠点としての港湾施設の整備に取り組んでいる。
 そのほかにも、沖ノ鳥島については、島自体を保全するために、海岸法に基づき、職員による状況確認や、護岸等の保全工事、あるいは観測拠点施設の更新などを行っている。
 これらの取り組みを通じ、引き続き沖ノ鳥島の保全に万全を尽くしてまいりたい。
○重徳和彦委員 経済活動拠点の形成、島そのものの保全などに、国交省を中心に取り組んでおられる。
 国際法の解釈の違いというか立場の違い、中国と日本との間にそのあたりでの違いがあるのだとして、日本の低潮線保全法に基づく取り組みが日本の立場を補強・強化することにどのように役立っているか。中国の「独自の立場」にどのように向き合っていくのか考えたときに、この低潮線保全法の施行状況がきちっと役立っているのかどうか。こういう観点からどのように外務省として捉えておられるか。
○三上正裕外務省国際法局長 政府としては、沖ノ鳥島は国際法上の排他的経済水域及び大陸棚を有する島であるという認識だ。そして国連海洋法条約上、領海・排他的経済水域・大陸棚の幅は、一般的には低潮線からの距離を測定することとなっている。したがって、先ほど国土交通省からご紹介のあった取り組みを通じ、沖ノ鳥島の低潮線の維持等を図るということは、我が国の排他的経済水域等を保全することにつながるものであると考えている。
○重徳和彦委員 少し踏み込むが、国土交通省からの答弁でも、島そのものの保全のほかに経済活動の拠点という、いわば機能を強化するというような答弁があったが、この点は国際社会において我が国の立場を強化するものになるか。
○三上正裕外務省国際法局長 我が国としては、中国の主張とは無関係に、沖ノ鳥島の島としての地位は既に確立したものと考えており、低潮線保全等の取り組みについては、中国の主張を念頭に沖ノ鳥島が岩ではなく島であることを法的に主張するという目的でやっているわけではないと考えている。
○重徳和彦委員 別に中国の主張を相手にする必要はないと、これはこれで一つのやり方、言い方なのかもしれないが、参考までに、中国以外の諸国はきちっと日本の立場を理解していると考えてよろしいか。
○三上正裕外務省国際法局長 私の承知しているところ、沖ノ鳥島は島であるという日本の立場について、中国と同様の異議を唱えているのは韓国と承知している。そのほかの国については、我々の立場をしっかり説明しているところだ。

防衛産業再編

○重徳和彦委員 前回の委員会や本会議でも指摘した、日本の防衛産業について質問したい。
 つい最近、朝日新聞の「瀬戸際の防衛産業:下 業界再編・輸出、旗振る政府」という特集記事があった。
 「先月22日、都内の日本航空宇宙工業会に、三菱重工業や川崎重工業、スバルなど日本の防衛大手10社の幹部が顔をそろえた。日本政府が導入をめざす次世代戦闘機の受注に向け、開発スキーム(枠組み)を話し合う内輪の研究会だった」
 「10社は次世代戦闘機の開発に特化した新会社を共同出資で設立する検討を進めることになった。各社に散らばっている人材や技術をひとまとめにすることで、欧米企業との受注競争を有利に進めるねらいがある」
 政府としてこの動きを承知しているか。これは事実か。
○深山延暁防衛装備庁長官 日本航空宇宙工業会及び会員企業10社が参加して、将来戦闘機開発への取り組みに関する研究会が立ち上げられ、本年2月20日を含め、これまでに研究会が5回開催され、企業間連携の強化に関して議論がされたと承知している。
○重徳和彦委員 この記事で、「新会社を共同出資で設立する検討を進める」と書かれている。この点について、これまで大臣や深山長官は、「こういった企業の再編については各社の経営判断による」「『こういうふうに統合しろ』みたいなことを我々が一義的に申し上げるのは難しい点もある」「まずは防衛関連産業間で再編を含めてしっかりと意見交換していただくことが重要だ」と述べられてきたが、実際こうやって意見交換されているわけで、ここにもっとかかわっていくことができないのか伺いたい。
○深山延暁防衛装備庁長官 ご指摘の報道にあるような防衛産業の再編や次世代戦闘機に向けた新会社の設立といった個々の企業の組織のあり方は、あくまでも各社の独自の経営判断によるものであると考えている。
 その上で申し上げれば、戦闘機については、我が国の防衛産業は機体の部位、レーダー等の構成品、エンジンのそれぞれについて、各社の得意分野があり、また将来戦闘機について我が国主導の開発に早期に着手するとしている状況の中で、こうした企業がより効率的な開発生産の体制を模索していくことは、防衛産業が置かれている厳しい状況を踏まえれば前向きな取り組みとして歓迎すべきものであると考えている。
 我々としては、従来から防衛産業を取り巻く現状の把握と適時適切な対応に努めているところだが、引き続き防衛関連産業と緊密に意見交換を行ってまいりたい。
○重徳和彦委員 防衛省の立場については先般来お聞きをしているので、今おっしゃったような感じなのだろうなと思いながら、一方でこの記事を見ると、経済産業省が登場する。航空機武器宇宙産業課長が(内閣官房国家安全保障局・NSSの会合で)「防衛産業の効率化を進めるべきだ」と訴えたという話も載っている。
 考えてみれば、防衛装備品の調達については防衛省が唯一のプレーヤーだが、これを国内産業の技術力強化・基盤整備という観点から関心をもっと持たなければいけないのは経済産業省だ。次期中期防にも再編や統合の必要性が初めて明記される状況にあって、本当に苦境に立たされている各企業を目の前にしながら今まで放ってきたような印象があるが、もっと経産省が危機感を持たなければならないのではないか。見解をいただきたい。
○関芳弘経済産業副大臣 防衛装備品に関する産業基盤は、防衛装備品の生産・運用・維持に必要不可欠であり、その適切な維持育成が重要な課題と我々も認識している。
 具体的には、既存の防衛産業の技術力のみならず、他産業の先進的なノウハウも生かし開発生産が行えるよう、経済産業省としても、民間航空機の製造における先進的な取り組みの情報提供など、関係省庁と協力して進めてまいりたい。
 今後とも防衛装備品に関する技術基盤の重要性を踏まえ、国内の防衛産業の競争力、そして技術力の強化に向け、防衛省と協力して頑張ってまいりたい。
○重徳和彦委員 防衛装備品のみならず民生品にも転用し得る技術がたくさん生まれてくることを期待しながら、この分野にも研究開発投資をしていくことを、少し視野を広げていくためにも経産省と連携する観点からしっかり取り組んでいただきたい。
 この記事には、「米国では冷戦終結後の1993年、国防総省が国内の防衛大手15社の経営トップを招いた夕食会で防衛予算の削減方針を伝え、自主的な再編統合を促した」と。これは国防総省が音頭をとっている。こうした「最後の晩餐」と呼ばれる会合がきっかけで業界再編が一気に進んだと。もう四半世紀前の話だ。
 日本は、そういう意味では大きく出遅れている。ヨーロッパではエアバスを中心とした再編が、国をまたがって行われている。このような状況の中で、なぜこんなに遅れてしまったのか。この90年代の動きから四半世紀、日本は何をやっていたのか。大臣はどのようにお考えか。
○岩屋毅防衛大臣 我が国の場合は、武器輸出三原則が新たな防衛装備移転三原則になるまでは、国際共同開発・生産、防衛装備移転といった道は基本的には閉ざされていた。そこが欧米とは一番大きな違いだったのではないか。
 武器輸出三原則の見直しは民主党政権のときに始まり、それを受けて、自民党が政権に復帰して新たな原則にまとめたわけだが、これが数年前のことだ。
 我が国の防衛産業は非常に高コスト構造、国際競争力が不足しているという問題を抱え、非常に厳しい状況にある。我々としては、これまで以上に強い危機感を持って、競争力のある防衛産業を構築しなければいけないと思っている。
 先生が言われた「最後の晩餐」をやるというわけにもなかなかいかないが、民間の中でもご紹介のあったような取り組みが段々始まってきているので、よく意思疎通を図り、また経産省ともいろいろ情報交換をしながら、そういった競争力強化の取り組みをしっかり後押ししてまいりたい。

防衛装備移転

○重徳和彦委員 武器輸出三原則については、私の認識では野田内閣のころから本格的な見直しが進んできたと思っているが、どういう場合に輸出できるのか明確化された。輸出も場合によっては前向きに捉えてきたという認識がその中には入っていると思うが、ただ、この国内大手の幹部のコメントにあるように、「どういう基準でどんな物が輸出できるのかよくわからない」という感触もある。
 確かに、「こういうものを」とははっきり明記されていない。まして完成品の輸出というところまで本当に至ることができれば、そういう意味では一番いいことだと思うが、業界のこういう思いに対する政府の対応はどのようになっているか。
○深山延暁防衛装備庁長官 輸出できる装備品の基準がわかりにくいというご指摘があるということは、我々も承知している。防衛省としては、こうしたことを解消するためにも、官民間のさらなる連携・情報交換・意見交換が必要だと考えている。この3カ月間もそうした会合を我々主催し、意見交換の促進を行っている。
 また、完成品の輸出ができればというご指摘もあった。これまでも豪州あるいはタイなどに完成品の輸出について試みを行ってきた。国際的な選定プロセスの結果、残念ながらいずれの事例も我が国が受注するに至らなかったが、こうした経験を踏まえ、相手国のニーズ等の情報収集や、効率的な情報発信、装備品の維持整備への支援も含めた提案など、これまで以上に積極的に行うことが重要だと認識している。こうした点についても防衛産業とよく連携をしていきたいと考えている。
○重徳和彦委員 最後に大臣にお聞きしたいのだが、今のような文脈で話をすると、「輸出をするべし」「完成品どんどん出そう」という話になり得るが、ただ、やはり企業自身も「武器商人」と言われたくないというのもある。政治的にも、こういう場ではやはり専門的な知見も加えて議論すべきテーマだと思うが、広く世の中に出すときにいろいろ懸念されることもある。こういった点をどう両立させていくか、大臣の見解を伺いたい。
○岩屋毅防衛大臣 武器輸出三原則を防衛装備移転三原則に変えたわけだが、言うまでもないことだが、何もゆるゆるにしたということではない。移転が認められる案件はあくまでも平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合、それから我が国の安全保障に資する場合に限定する仕組みにしている。
 企業側のもし懸念があるとすれば、そういうご理解が、必ずしもまだ幅広く国民の皆さんの間に広がっていないということから心配をされている向きもあるのだとすれば、我々としてもこういった懸念が解消できるように国内外の理解をさらに深めていただくための努力をしっかりさせていただきたい。
○重徳和彦委員 私は、この点については、何より国民の理解だと思っている。だましだましやるのはどんなことでもよくないと思うし、苦言を申し上げれば、安倍政権、だましだましやっていることはたくさんあるので……首振っていますが、本当に多いですよ。それは国民も感じている。そういったことについて、やはりもっと正直に国民を信じて、国民の理解をいただくように努力すべきだと申し上げて質問を終わります。

(以上)

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