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豊島区のniima(ニーマ)を訪問。 地域生活支援拠点 コーディネーターさんにお話しを聞きました!【 前編 】

みなさん、こんにちは。石神井いとなみの起点プロジェクトの竹内(デジタル・アド・サービス)です。

石神井いとなみの起点プロジェクトは、2026年春、東京・石神井に新しく生まれる福祉の拠点(設置主体:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)をベースに、東京・都市部の抱える課題の多様性と絶対量に向き合いながら「基本となる福祉事業」と「みらい創造型拠点事業」そして、その2つの融合で、誰もがあたりまえのいとなみを続けていくことのできる地域づくりのモデルとなっていくことを目指すプロジェクトです。

▶︎ #01:はじめまして「石神井いとなみの起点プロジェクト」です!

今回は、豊島区にある社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会の事業所「niima(ニーマ)」を訪問し、地域生活支援拠点の取り組みについてのお話しをうかがったときのことを前編・後編の2つにわけてお届けします!

主に、前編では地域生活支援拠点とはどのような役割や機能をもつ場所なのか、後編では地域生活支援拠点のコーディネーターがどのような活動をしているのか、といったことについてインタビューを通じてお伝えしています。


地域生活支援拠点を調べてみると

石神井の新しい拠点では、共同⽣活援助(重度障害者グループホーム)、短期⼊所、特定相談⽀援に加えて、多機能整備型地域⽣活⽀援拠点の事業も行っていきます。

■ 地域⽣活⽀援拠点
拠点等は、障害者等の重度化・高齢化や「親亡き後」に備えるとともに、地域移行を進めるため、重度障害にも対応できる専門性を有し、地域生活において、障害者等やその家族の緊急事態に対応を図るもの。

■ 地域生活支援拠点等として各圏域内で整備する5つの機能
①相談:基幹相談支援センター、委託相談支援事業、特定相談支援事業とともに地域定着支援を活用してコーディネーターを配置し、緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握・登録した上で、常時の連絡体制を確保し、障害の特性に起因して生じた緊急の事態等に必要なサービスのコーディネートや相談その他必要な支援を行う機能
②緊急時の受け入れ・対応:短期入所を活用した常時の緊急受入体制等を確保した上で、介護者の急病や障害者の状態変化等の緊急時の受け入れや医療機関への連絡等の必要な対応を行う機能
③体験の機会・場:地域移行支援や親元からの自立等に当たって、共同生活援助等の障害福祉サービスの利用や一人暮らしの体験の機会・場を提供する機能
④専門的人材の確保・養成:医療的ケアが必要な者や行動障害を有する者、高齢化に伴い重度化した障害者に対して、専門的な対応を行うことができる体制の確保や、専門的な対応ができる人材の養成を行う機能
⑤地域の体制づくり:基幹相談支援センター、委託相談支援事業、特定相談支援、一般相談支援等を活用してコーディネーターを配置し、地域の様々なニーズに対応できるサービス提供体制の確保や、地域の社会資源の連携体制の構築等を行う機能

地域生活支援拠点等について ~地域生活支援体制の推進~ 第2版
厚生労働省障害保健福祉部 障害福祉課/平成31年3月

地域生活支援拠点等について調べてみると、上記のことが示されていたり、「地域生活支援拠点等の好事例集」(厚生労働省/平成30年3月)が作成されていたりするのですが・・・どうしても実際の活動がイメージできていない部分もありました。

そこで今回、石神井いとなみの起点プロジェクトのリーダー 仁田坂和夫さん(東京都手をつなぐ育成会 事務局長)といっしょに、東京都手をつなぐ育成会のなかでも多機能整備型地域⽣活⽀援拠点として先駆的に取り組みを行っている豊島区の事業所 niima(ニーマ)を訪れ、施設長の上原直哉さん、地域生活支援拠点コーディネーターの小川紗世さん、飯嶋あみさんにお話しをうかがいました。

▶︎ 仁田坂さんの対談記事はこちら

素敵なアート作品がいっぱいの「2丁目の居間」niima(ニーマ)

niimaは、池袋駅から歩いて10分ほどのところにある、2020年8月に開所した事業所。共同生活援助(グループホーム)、短期入所、相談支援(特定・児童・一般)、地域生活支援拠点コーディネート(豊島区委託)の事業を行っています。好きなことをして、自分らしく過ごす・暮らすことができる「2丁目の居間」のような存在になりたいという思いから、niima(ニーマ)と名づけられたそうです。

niimaのパンフレット

グループホームは、4つのユニット(知的障害のある男性/知的障害のある女性/身体的な介護を必要とする方/短期入所)で構成。強度行動障害の方も多く入居されていて、常勤の支援員さんはみんな、強度行動障害支援に関する支援者養成研修を修了されています。

niima(ニーマ)を訪れると、建物内のいろいろなところで見られる素敵なアート作品がとても印象的! というのも、施設長の上原さん、地域生活支援拠点コーディネーターの小川さんは、東京都手をつなぐ育成会のなかでも「メジロック」のブランド名でのアート活動で注目されている豊島区立目白生活実習所・目白福祉作業所から異動されてきたそうです。

niimaの利用者さんのなかには、日中「メジロック」に通って創作活動をしている方も。建物内には、利用者さんがつくったアート作品もあるそうです。

何かあったときにも、地域でみなさんと暮らしていけるような場所をつくりたい

それではここからは、niimaの上原さん、小川さん、飯嶋さんへのインタビューをお伝えします。

左から施設長の上原直哉さん、
地域生活支援拠点コーディネーターの小川紗世さん、飯嶋あみさん

── はじめに、コーディネーターをされているお二人の簡単な自己紹介をお願いします。

小川さん:2007年に新卒で東京都手をつなぐ育成会に入職しました。中野区のかみさぎこぶし園に立ち上げから入って7年間、次に、世田谷区の給田福祉園で1年半くらい勤務しました。その後は、砧地域障害者相談支援センター(2019年より別事業者が運営)で3ヶ月ほど勤務して、目白生活実習所・目白福祉作業所に異動しました。

niimaが立ち上がるというときに話しを聞いて、目白生活実習所・目白福祉作業所の利用者さんも入居するだろうということで、希望して準備段階から入りました。ただこの時点ではまだ、コーディネーターとして働くということは全然視野には入っていなくて、支援員として移ってきました。

飯嶋さん:私は、2023年の10月からniimaで非常勤として働いています。今は、短大で心理学の勉強をしていてこの3月で卒業します。卒業後は、日本福祉大学に編入して福祉の勉強をしつつ、引き続き、niimaで働いていく予定です。将来的には、福祉の分野で働きたいと思っています。

── ありがとうございます。それでは、さっそくお話しをうかがっていきたいのですが、地域生活支援拠点の5つの機能(相談/緊急時の受け入れ・対応/体験の機会・場/専門的人材の確保・養成/地域体制づくり)が示されていますが、そのあり方や求められる姿というのは、その地域によってさまざまかと思います。豊島区、niimaではどのようなイメージで整備を進められてきたのでしょうか?

小川さん:今まで3年間niimaでやってきて、こういうのが地域生活支援拠点だとそこまではっきりとは言えないかもしれないんですけど。グループホームとして、緊急で短期入所を受け入れるとなったときにイメージしていたのが、目白生活実習所・目白福祉作業所や駒込生活実習所・駒込福祉作業所で生活しているような方々のことでした。そうした方々が、夜に落ち着かなくなってしまったり、ご家族が病気になってしまったりしたときに、24時間対応できる、地域でみなさんと暮らしていけるような場所をつくりたいという思いがありました。加えて、計画相談で対応している方や、児童の短期入所施設が少ないのが現状なので、そういう方も対象に見ていきたいなと思ってやってきました。

これまでのところ、夜間の緊急時に受け入れたりっていうのはないんですけれども、グループホームに入りたいとか、今まで施設を利用したことない人をniimaの短期入所を使って体験というかたちで受け入れてきたケースが多いかなと思います。

上原さん:豊島区ではもともと、知的・精神・身体の三障害が、それぞれに活動をしながらつながっていて、仲間みたいな感じだったんですよね。連携しようっていうよりも、自然につながっていたなかで、地域でもっといっしょに何かできることないかなというときに、地域生活支援拠点ができて。コロナ禍ではなかなか思うように活動できなかったのですが、この1年でコーディネーターを中心に協力体制が整ってきました。

知的障害・身体障害はniima(多機能拠点型)を中心に、精神障害は面的整備型でと、多機能プラス面的というごちゃ混ぜなかたちで、三障害を包括的にという考え方で進めています。

豊島区の障害福祉課もバックアップしてくれていて、行政がメインでもなく、事業者だけで勝手にやってる訳でもなく、いいバランスと言うんですかね。みんな、コーディネーターが配置されたことも喜んでくれていて、面的整備をやろうとなったときにもスムーズでしたね。そういう素地があるところは、豊島区の特徴として大きいかなと思います。

多機能拠点型:5つの機能を集約し、グループホームや障害者支援等に付加
面的整備型:地域における複数の機関が分担して機能を担う体制

地域生活支援拠点等について ~地域生活支援体制の推進~ 第2版
厚生労働省障害保健福祉部 障害福祉課/平成31年3月

豊島区の全体像を見える化する

── 豊島区ではもともと協力関係もしっかりあったということですけれど、活動を進めるにあたって、地域生活支援拠点事業としてどのような姿を目指すのかということを関係するみなさんで共有したりされたのでしょうか?

上原さん:「地域生活支援拠点って何?」という話しが、自立支援協議会とかいろいろな部会で話されてきたんですよね。話されてはいるんですけれども、見えないものをずっとみんなで話していている感じで、理想像みたいなものも共有できていませんでした。

しかし、ある程度動いてきて、少しかたちになったなというものを図にして、みんなでちゃんと共有しようということで、自立支援協議会(2024年1月)で提示したのが「豊島区の安心・安全な暮らし(豊島区地域生活支援拠点)」という資料です。

資料「豊島区の安心・安全な暮らし(豊島区地域生活支援拠点)」

もう1つ「ガイドブック」というものもあるのですが、これは「豊島区の安心・安全な暮らし(豊島区地域生活支援拠点)」の資料とリンクしていて、ガイドブックのほうを見ると、各事業所が主に対象としている障害は何なのかなどがわかるようになっています。

ガイドブック
載っている写真もコーディネーターの2人が豊島区中を自転車で回って撮影

豊島区の全体像を見える化したいと思い、コーディネーターが作成しました。今後、これをどう活用していくか、地域の特徴にしていくかということを考えていきたいですね。

みんなで集まってワークショップもやったんでしょ?

小川さん:地域の訪問看護師さんやコミュニティーソーシャルワーカーさんとか、今まであまりつながってない人たちも集まって、区内の地区ごとに「こういうサービスもありますよ」「あそこの○○さんは、すごく面倒見いいから、なんか困ったときは相談したらけっこう助けてくれるよ」とか、そういった情報交換をしました。

上原さん:このガイドブックに載っているのは表面的な部分なので「この事業所にはこういう素敵な人がいて、こんなことまで面倒見てくれますよ」っていうところはまだ見えていない。そういったところも深掘りして、どんどん見えるようにしていきたいですね。

仁田坂さん:近隣区の短期入所施設ともつながっているんだね。(「豊島区の安心・安全な暮らし(豊島区地域生活支援拠点)」を見ながら)

上原さん:区をまたいでもすぐ近くなんですよ。コーディネーターが実際に、区内や近隣の全部の短期入所施設を回って、いろいろな居宅介護事業所や相談支援事業所も見ていっています。短期入所も、実際に訪問して見せてもらうと、それぞれの状況や体制、得意な分野などの特徴をリアルな情報として把握できる。そうすることで、実際に相談があったときに、その本人に合う場所はどこかが見えてくるので。

niima 施設長の上原直哉さん、地域生活支援拠点コーディネーターの小川紗世さん、飯嶋あみさんへのインタビュー前編(#13)はここまです。後編(#14)では、この1年間で特に力を入れて行なってきた活動、それにより感じている変化や手応え、これからに向けてのお話しをお届けします。

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🌱 このnoteでは、こんなコンテンツをお届けしています!
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・VISION:中⻑期の視点でのプロジェクトの考えや思いを伝える
・TEAM:インタビューや対談で、プロジェクトの⼈を伝える
・ACTION:プロジェクトでのリアルな活動を伝える
・FIELD:⽯神井のまちとそのいとなみを紹介する
・LAB. :学術機関や企業との共同研究からの学びをシェアする
・STORY:ここで生まれるいとなみを想像し、言葉や絵で表現する
・MEETING:プロジェクトを通じて出会い、つどい、つながる
・PICK UP:思考や対話の起点となる視点を共有する

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