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豊島区のniima(ニーマ)を訪問。 地域生活支援拠点 コーディネーターさんにお話しを聞きました!【 後編 】

みなさん、こんにちは。石神井いとなみの起点プロジェクトの竹内(デジタル・アド・サービス)です。

石神井いとなみの起点プロジェクトは、2026年春、東京・石神井に新しく生まれる福祉の拠点(設置主体:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)をベースに、東京・都市部の抱える課題の多様性と絶対量に向き合いながら「基本となる福祉事業」と「みらい創造型拠点事業」そして、その2つの融合で、誰もがあたりまえのいとなみを続けていくことのできる地域づくりのモデルとなっていくことを目指すプロジェクトです。

▶︎ #01:はじめまして「石神井いとなみの起点プロジェクト」です!

今回は、#13(前編)に引き続き、豊島区にある社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会の事業所「niima(ニーマ)」を訪問し、地域生活支援拠点の取り組みについてのお話しをうかがったインタビューの後編をお届けします!

主に、前編では地域生活支援拠点とはどのような役割や機能をもつ場所なのか、後編では地域生活支援拠点のコーディネーターがどのような活動をしているのか、といったことについてインタビューを通じてお伝えしています。

▶︎ 前編はこちら


目標をみんなで考えて進みはじめることが大事

── 小川さんがコーディネーターとして、実際にどんな活動をされているのかを教えていただけますか?

小川さん:「令和5年度 拠点コーディネーター事業実施スケジュール(地域生活支援拠点コーディネート事業)【全体版】」の資料を見ていただくとわかりやすいと思います。

拠点コーディネーター事業実施スケジュール(地域生活支援拠点コーディネート事業)【全体版】

仁田坂さん:これわかりやすいね。新しい拠点の体制づくりやそのボリュームが見てとれる。

上原さん:5つの機能(相談/緊急時の受け入れ・対応/体験の機会・場/専門的人材の確保・養成/地域体制づくり)それぞれを、基幹相談支援センターと地域生活支援コーディネーターとで、どういうふうに役割分担をしてやっていくのか、その計画と実績が書かれています。

まず最初に、基幹相談支援センターとコーディネーターを中心に話しあいをして、この地域で精神も知的もなく、その人を見ていきたいという考え方を共有しました。全部が全部、うまくはいかないでしょうけど、目標をみんなで考えて進みはじめるということが大事だと思ったので。そうすることで、この地域らしく、豊島区らしくなっていくんじゃないかと。

この資料には、令和5年度一年間のことが載っているのですが、更新しながらずっと動いているので、コーディネーターがやって来たこと、やっていくことが全部ここに入っているんですね。

事業所を一軒一軒訪問。直接知り合うことで、ぐっと距離が縮まった

── この一年は、特にどのような活動を重点的に行ってきたのでしょうか?

小川さん:コーディネーターというものができて、まずは、計画相談と短期入所の事業所を一軒一軒訪問して、区としてこんなふうに考えていきたい、動いていきたいということを伝えてきました。今は引き続き、地域活動支援センターと居宅介護事業所を回っています。

最初は、どこの事業所も「コーディネーターって何するの?」という感じで。あと「すごく協力したいけれど、24時間の相談等の対応をするのは不安」とか。そういう各事業所の不安感とか抱えてる悩みを聞いて、地域の事業所の状況を確認していきました。

もともと、豊島区は事業所間も仲が良くて、いろいろ言い合える関係ではあったのですが、直接訪問して知り合うことで、さらにぐっと距離が縮まりました。今は、認定拠点の登録や24時間の対応も、みなさん協力すると言ってくださっていて。今年度は、豊島区の事業所同士がさらにつながっていく、その間に入るような活動に注力してきました。

その他、定期的な動きでいうと、区内でもう一ヶ所の地域生活支援拠点事業を行う、域生活支援センターこかげさん(社会福祉法人豊芯会)のコーディネーターと週に一回、必ず打合せをしています。それ以外に月に一度、豊島区の障害福祉課と基幹相談支援センターとコーディネーターの三者で会議を行い、今後の流れなど拠点事業全体の確認を行なっています。

福祉につながっていない人たちが、まだいっぱいいる

仁田坂さん:豊島区の人口30万人くらいの規模の自治体で、比較的こぢんまりしているとはいえ、なかなか全体像ってつかみにくいじゃない? 東京は人口流動性も高いし。そのなかで見通しとしては、地域生活支援拠点としての取り組みを一つひとつ積み上げていく先が、ある程度見えてきそう?それとも、あまりにも遠いなってイメージ?

小川さん:まだすごい足りないと思うんですね。訪問していてわかったのは、福祉につながっていない人たちがいっぱいいるんですよね。例えば、以前は各事業所に行っていたけれどうまくいかなくてやめて、20年間在宅だったところ、ご家族の病気とかでポッと出てきて。今までどうなっていたんだろうっていう。そうしたことは予想外でした。

上原さん:なんでこんなに見過ごされてきたんだろうっていう、みんなが見て見ぬふりしてきた人がね。コーディネーターとかができたことで、見つかることがあるんですよね。大変なケースではあるんですけど、もしここで介入できなければ、また見過ごされてしまうんじゃないか。そうした人たちにも、今は対応ができるんですよね、みんなでつながっおいたことで。地域で見られるようになってきたのかなというのは感じますね。

小川さん:みんな、協力するよって言ってくれて。

仁田坂さん:やっぱり、もともとそういう文化があったっていうのが、良いまちだね。

── 飯嶋さんにもお話しをうかがいたいのですが、福祉施設でアルバイトをするとなったときに、地域生活支援拠点のコーディネーターですよって言われてピンときましたか?

飯嶋さん:全然きてなくて。たまたまバイトの求人を見て応募して、いざ来たらこういう仕事になって。何にもわからないことばかりではじまったんですけど、区の人とこんなに近くで話す場があるんだっていうこととか、いろんな事業所の人と関わりが想像以上に深かったりとか。すごいことに携わってるなって日々、実感してます。

── 学生さんをコーディネーターにと決められた、何かきっかけや理由はあったのでしょうか? 特に福祉職の経験がある訳ではないということになると思うんですけれど。

上原さん:彼女の話しを聴いて、先に目指すものに福祉があったのと、同時に、そこまでこの先ずいぶん長いなと思ったんですよ。そのなかで、今は短大に通っていて、今度は大学(日本福祉大学)に行って社会福祉士の資格をとってというプランが本人のなかにあって。勉強だけやっているよりも、現場も知って、勉強と現場をつなげられることが福祉人として絶対にとても大事なので。じゃあ、そのプロセスを一緒にやってみようと考えました。それに、コーディネーターって、長く時間をかけて仕事をしないといけないなと思っていますので。短大卒業までの一年とかであれば、そうはしなかったと思うんですね。

「できるかもしれない」は、いろんな仲間ができたから

── 改めてこれまでをふり返っていただいて、苦労されてきた部分、手応えを感じられている部分、さらに今後の展望などをみなさんにお聞きしたいと思います。

小川さん:今回、拠点のコーディネーターになって、相談支援の連絡会とかで拠点事業やコーディネーターの役割や仕事について伝えたときに「何をやるの?」「何の意味があるの?」って、もともとつながりはあったとしても、やはりそういう声もあったんですよね。

何度も説明会をして、各事業所も訪問して、そうしたら「何の意味があるの?」って言っていた相談支援事業所の方が、自立支援協議会のときとかに「協力するよ」と態度を変えてくれて。この7カ月ぐらいでやってきたことが少しずつ理解してもらえて、みんなで協力していこうって思ってくれたことが、私はすごいうれしかったです。ちょっと泣きそうでした。わかってもらえて、協力し合えれば、さらにつながりが深まっていくな、一歩進んだ体制がつくれるなと思って。

今までのところでは、緊急時の対応のところをメインに進めてきたんですけれども、先ほど言ったような、これまで見過ごされてきた人たちへの対応もしていきたいです。それから、知的障害の分野でも事業所とつながっていない親御さんたちにも働きかけていきたい。若い親御さんたちは、サービスを使う重要性をすごくわかっているんですけれど、高齢の方は「死ぬまで家で見ます」みたいに言う方も多いのですが、本人のためにはそれでいいとうことではないので。働きかけて、つなげていきたいと思っています。

飯嶋さん:私はまだ、中心的になってコーディネート事業に参加できてる訳ではないんですけれど、コーディネーターさんたちが、区とのいろいろな対応のときとかにも、もっとこうしたほうがいいとか考えて進めていく姿を見て、すごいなって思っています。私もこれからは、少しでも関わっていけたらうれしいです。今すごく、自分の将来にとって充実した経験ができてると感じています。

上原さん:私も会議の場で、場面は違いますけど、じーんとくるときっていうのがあって。通常ほとんど、精神障害のグループホームってヘルパー(居宅介護)を併用できないんですよ。それが今回、緊急時対応の事業をはじめるってなったときに、障害福祉課の精神障害のグループホーム担当の方が「体験を行う支援」として支給決定を出すって決めてくれたんですよね。障害福祉課のみんなで話し合ってくれたそうで「今後、何かあったときに大事だからやります」と言ってくれた瞬間は、すごくじーんときました。みんなで新しいことをはじめて、踏み出せたっていうのがうれしかったですね。

後は、とても困難なケース、例えば、精神障害の急性期にあるような人たちに対して、今までの自分たちだったら「自分たちにはもうできない、無理だ」って言ってたと思うんです。それが、そういうケースが出てきたときに、小川が「できるかわからない、でも、いってみないとわからないですよね。やっていいですか?」と聞いてくれて。「できるかもしれないな」って、なってくるんですよね。その「できるかもしれない」は、いろんな仲間ができたからだと思うんです。精神障害の事業所の人たちとつながって、障害福祉課も応援してくれるし、そういうバックボーンができたから。今までではあり得ないことだと思ったので、力がついてきたんだなとうれしかったですね。

── 最後に、今こうして、ご本人とご家族、支援者の方同士、行政との関係性ができてきているなかで、さらに、地域のなかで、どういう人たちと、どんな関わり方ができていくと、より誰にとっても暮らしやすい地域になると思いますか? 私自身もなのですが、地域に生活する一人の人として、関係のあることでありながら、関わり方とかがよくわからないという状態の人たちも少なくないと思っていて。

小川さん:合ってるかどうかわからないんですけど、地域でこういう人たちがいるってわかっていてもらえることが、いちばんいいなって思っています。niimaの近くのお宅の方とお話ししたときに「うちの息子も入所施設に入っているのよ」って、niimaができるときには、特にそういう会話はなかったんですけれど。本当は身近にいるんだけど、口に出してくものでもない、そんな感じがあるじゃないですか。でも、地域で生活しているということを、別に無理に交流しなくてもいいけど、みんながわかってくれている環境ってすごくいいなと思っています。

お話しを聞いて

今回お話しを聞かせていただいて「地域生活支援拠点とは?」「コーディネーターとは?」その答えに定型と言えるものがないなかで、模索しながら進められている様子の一端を知ることができました。そのなかで、何度も足を運び、説明をし、会話をする、そのていねいで諦めないコミュニケーションが、手を取り合い活動を進めていくために不可欠であったことを強く感じます。そうした積み重ねが、相手の方の意思決定や言動の変化につながっていったお話しは、うかがっていて私もじーんとくるものがありました。

また、「地域生活支援拠点って何?」と、地域の支援者の方々みんなが手探りの状態から、活動の現在地として、豊島区での地域生活支援拠点の体制やスケジュール、その全体像が見える化され、共有できるものとしてアウトプットされていることも、理解と連携を助けるとても重要なポイントだと感じました。

そして、福祉につながっていない「見過ごされてきた人」「みんなが見て見ぬふりしてきた人」という言葉がとても印象に残っています。同時に、最近読んだ『みんなの社会的処方』(西 智弘 編著/学芸出版社)のなかにあった「社会的行方不明者」という言葉を思い出しました。高円寺にある小杉湯さんという銭湯が持つ社会的処方としての意義について語られている章のなかで出てくるのですが、少し引用したいと思います。

そこに存在しているにも関わらず、誰からも存在しているように扱われない。それは「社会的行方不明者」の状態にあると言えるだろう。これからの社会では、この「社会的行方不明者」を少しでも減らすことが求められる。(中略)銭湯で週に1回見かける、誰ともつながりをつくろうとしないお兄さんがいたとしても「おやすみなさい」と声をかけて目が合うだけで、そこに関係性は存在している。それでもう彼は社会的に行方不明ではないのだ。私物化された公共にあふれたまちの中で、銭湯を含めた生活をしている全体が、その人にとっての「居場所」になる。(中略)そしていまは孤立に困っていない彼が、いつかより強いつながりを求めてくる機会があれば、その先は無限に広がっている。そんなコミュニティを育てていくことが大切ではないだろうか。

『みんなの社会的処方』(西 智弘 編著/学芸出版社)

小杉湯さんの場合は銭湯としてそれが具現化されていますが、その本質は「生活の動線上で、人と人とが行き交う、ハブとなる場である」とも書かれています。社会のなかで見て見ぬふりをされる。存在しているように扱われない。文字として記すだけでも胸が苦しくなるように感じます。だからこそ、まちのなかにある福祉施設の地域交流のスペース(石神井いとなみの起点プロジェクトでは「まちなか広場」と呼んでいます)が、ハブとしての機能を果たせるような、一方的な介入ではない開かれた場としてのデザインがなされることの重要性を強く感じました。

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🌱 このnoteでは、こんなコンテンツをお届けしています!
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・VISION:中⻑期の視点でのプロジェクトの考えや思いを伝える
・TEAM:インタビューや対談で、プロジェクトの⼈を伝える
・ACTION:プロジェクトでのリアルな活動を伝える
・FIELD:⽯神井のまちとそのいとなみを紹介する
・LAB. :学術機関や企業との共同研究からの学びをシェアする
・STORY:ここで生まれるいとなみを想像し、言葉や絵で表現する
・MEETING:プロジェクトを通じて出会い、つどい、つながる
・PICK UP:思考や対話の起点となる視点を共有する

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