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2023.4.17 不便益の意義: 烏合の衆と一匹狼の群れ

 不便益の意義が分かった。「烏合の衆」を、「一匹狼の群れ」に変えるための視座である。現代というのは、個人(各人)の持つ能力・エフォート、すなわち生命の発露というものが最大化されていないにも関わらず、自分の生を他者に頼る・委ねる構造になっている。換言すれば、自己の生殺与奪の権利を、最大限の努力なしに放棄している。

 現代社会システムは、生活インフラへの過度な依存や、意思決定における肚の欠如を助長する。結果的に、そうした個の独立的な生命活動を取り除いて、共依存関係・相互依存関係に陥れ、一人じゃ生きられない人間を生産している。だから、昔からの「自然発生的な村」と「現代社会のコミュニティ」というのは、実はベクトルが全く逆である。

 個人の能力やエフォート、つまり生命の発露というものが最大化された上で、それでも足りないからチームを組むという本来的なコミュニティの在り方に対し、どんどん人のやることを減らしていって、個人の生命の発露をどんどん減らしていって、それにも関わらずコミュニティじゃないと生きていけない構造を取っているのが現代(日本)である。つまり、現代社会というのは、共依存の状態を作り上げるようなシステムになっている。

 これによって、人間ひとりひとりが堕落していく。ヒトの関与を排除すること、すなわち“便利”な社会というラベルが、毒となっている。なぜなら、ヒトが自分の生を全うできていないから。そして、だから死人みたいになっていく。本来目指すべきチームというのは、一人一人が立っていて、その上でできないことをみんなで協力しようとするものである。

 つまり、端的に言うと不便益というのは、人間の生物的な活力に回帰し、社会性とテクノロジーとの調和を図った生活システムを探索するための新たなデザインの視点である。

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