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読書感想文 #56 駐露全権公使 榎本武揚(下)

みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。

今日は日曜日で晴れましたが少し気温が低く、だんだん秋というか季節が冬に近づいてきているのを感じた1日でした。

先日の読書感想文の下編になります。

駐露全権公使 榎本武揚(下)

カリキンスキイ 著
藤田葵 翻訳

概要

帝都ペテルブルグで思いのほかロシア皇帝に気に入られ他国の外交官もうらやむほどの厚遇を受けていた榎本武揚であったが、西郷隆盛の思惑を受けて随行員に加わっている足利書記官の単独行動には不安がつのる。領土交渉が大きな進展をみせて千島列島を含めた条約締結に向かう一方で、ロシアとの外交を日本政府内の主導権争いに利用しようとする暗躍が榎本の足元に影をおとしてくる。榎本の身を案じる若いロシア人将校は我が身を賭して友人を救うべく行動を開始するが……。 外交という異文化間の権謀術数を血の通った人間のドラマとして描くサハリン在住作家の意欲作。 描く長編外交サスペンス

感想
ベルグ少尉補と足利中尉の決闘は動く鉄道の屋根の上で、サーベルと刀でという驚くべき展開に、そういえばアニメ鬼滅の刃でも似たシーンが出てきました。この話は日本語版は2017年発刊ですが、原作はもっと前ですので、鬼滅の作者がオマージュしたのかもしれません。(この話は明治時代で鬼滅や大正時代が舞台)運良くベルグが勝つものの、医師とともに行方不明となり、日本からの公人の死という事態にロシア側は大騒ぎになってしまいます。ベルグは榎本の親友であり、ベルグの婚約者の父も事件に困惑し、榎本と会いますが葛藤が感じられます。登場する日本人は西郷隆盛はじめ、足利中尉以外は実在した人たちで、一部事実と異なる話になっているものの、こんなことがあったのか、と面白くなっていて、この作者はいわば”ロシアの司馬遼太郎”という印象を受けました。どこまでが真実かはわかりませんが、ここにでてくるロシア人は誠実であり、ソ連になるロシア革命以前の帝政の時代ですが、現在の独裁政権に比べるととてもいい人達のように見えます。
日本人とロシア人のやりとりが、ヨーロッパとロシアを舞台に1800年代後半にこのように行われていた(フィクションもいくらか含めて)というのは面白く、斬新で新鮮な本だというのが感じられるものでした。

それではまた。


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