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ONARA RECORD #15「やさしくなりたい/斉藤和義」

今回ご紹介するオナラレコードは「やさしくなりたい/斉藤和義」です。

斉藤和義は1993年に「僕の見たビートルズはTVの中」でデビューしたが、今ほどメジャーになったのは2007年『ゼクシィ』に作ったテレビCM曲「ウエディング・ソング」が話題になってからです。そしてデビュー20周年の2012年にようやく紅白歌合戦への出場を果たしました。
そんな斉藤和義の中でも最も特に有名な曲に「やさしくなりたい」があります。

▼PV

▼歌詞

さて、まずはこの曲を簡単に3行でまとめてみたいと思います。

愛なき時代に生まれた訳じゃない。
君はこんなにも強くて、優しい。
僕も強くなりたい、優しくなりたい。

何とも哀愁漂う歌詞ですね。居ますよね「何でこんなに優しいんだ」「人間ができているんだ」という人。
そういった人を見た時に感じる「感嘆」やある種の「恐れ」のようなものが描き出されているように感じます。何とも詩的です。

そしてこれもまた「オナラレコード」なのです。
では、一体どんな屁理屈を歌っているのでしょうか。

それは、凶暴なホームレスの屁理屈を歌ったオナラレコードです。
雲行きが怪しくなってきましたか?そうですよね、心中お察しします。

本当にそんな男のオナラレコードなのでしょうか?
まずはホームレスの様子を思い浮かべてみましょう。

・45歳でホームレス10年目
・高架下にダンボールハウスを構え、退去運動をする住民や役所の人間を威嚇し、抗争を続けている
・ダンボールハウスに少女を連れ込もうとしていた所を住民に見つかり通報、実刑判決を受ける
・ホームレスになったきっかけは起業した会社の倒産
・妻と娘2人の4人家族だったが、倒産して離婚

怖い、怖すぎます。もし近所にこんなやつがいたら、安心して子供外で遊ばせられないですね。

では本当に「やさしくなりたい」がこの男の屁理屈を歌っているのか、実際に見ていきましょう。

Let’s ONARA RECORD!!!


地球儀を回して世界100周旅行
キミがはしゃいでいる まぶしい瞳で

ここは連れ込んだ少女との出会いを描いた部分でしょう。

俺は社会も精度も、そもそも人ですら信じられなくなっていた。
もし生活保護を受ければ家はあったかもしれないが、自分を破滅に追いやった社会の手を借りることが出来なかった。

だが、あの子だけは違った。
俺を恐れることも無く、1人の人間として接してくれた。

「おじさん、何やってるの?」
「ここに住んでるの?」

まだ3歳にも満たない彼女はダンボールに埋もれていた地球儀ではしゃいでいた。
そういえば俺の娘もあんな時期があった。何なら俺だってそうだったかもしれない。

久しぶりに「無垢」な人間に触れている感覚はむず痒い。
自分がこんな垢だらけでいることを、ありありと実感させられる。


光のうしろ側 忍び寄る影法師
なつかしの昨日は いま雨の中に

これは少女を連れ込んでいるとして警察に逮捕される場面でしょう。

“我が家”へやってきた彼女に地球儀を触らせてやろうとしている時だった。
たくさんの足音とともに警察と住民連中がやってきた。

俺は慌てて外に出てみる。
中と外の明るさが違いすぎて、何も見えない。

あっという間に俺は羽交い締めにされ、パトカーに押し込められた。
ドアが閉まる直前で見えた彼女の涙が、かつて見た幼い表情に重なる。

どうしてこうなるんだ。

格子戸から見るシャバには大粒の雨が降り注いでいる。
昨日のことなのに、あの家も地球儀も、思い出ですらこの雨が綺麗に流してしまいそうだ。


やさしくなりたい やさしくなりたい
自分ばかりじゃ 虚しさばかりじゃ

ここは今の自分を憂いて、半生を省みる場面でしょう。

どこで歯車が噛み合わなくなったんだ。
どうして人を信じられない。

俺だって心の底では思っているんだ。
「やさしくなりたい」と。

自分ばかりのことを考えていてもダメだ、虚しいだけだって。
あの頃の俺は知っていたはずなんだ。


(中略)
サイコロ転がして1の目が出たけれど
双六の文字には「ふりだしに戻る」
キミはきっと言うだろう「あなたらしいわね」と
「1つ進めたのならよかったじゃないの!」

ここは監獄の中から、少女と別れた妻を重ね合わせて思う場面でしょう。

あの日も、来ちゃダメだと何度も行ったのに少女はやって来たんだった。
自分の体よりも大きな箱を持って来て。

「おじさん、人生ゲームやろう!」

「人生ゲーム」か。
なかなか皮肉なものだな、と笑ってみるが彼女は不思議そうにしている。

綺麗に並べられた札束にはそれらしい外国の政治家が描かれている。
おどけているようにも見え、そして俺を嘲笑っているようにも見えた。

「振り出しに戻る」
彼女は大笑いし「でも進めたからいいじゃん」と言った。

そういえば同棲して間もない頃、妻にも同じことを言われた気がする。
「進めたからいいじゃん」と。

会社を失った時、俺は自暴自棄だった。
もし妻にきちんと打ち明けていれば妻は受け入れてくれたのかもしれない。

「進めたからいいじゃん」


強くなりたい 強くなりたい
我慢ばかりじゃ 誤魔化しばかりじゃ

ここはきちんと妻と対峙することが出来なかった「弱さ」を憂う場面です。

ああ、なぜあの時自分の失敗を、惨めな自分を伝えられなかったんだ。
俺はそんなことを言って、妻から見放されることが怖かったんだ。

離婚届を一方的に書いて家を出たのは、俺の方だった。
「迷惑をかけたくない」なんて、身勝手な書き置きだけをして。

我慢ばかりじゃ、その場しのぎの誤魔化しばかりじゃ。

そう思って見ても、目の前に隔たる鉄の格子は頑としてそこを動くつもりがないようだった。


(中略)
愛なき時代に生まれたわけじゃない
キミに会いたい キミに会いたい
愛なき時代に生まれたわけじゃない
強くなりたい やさしくなりたい
愛なき時代に生きてるわけじゃない
手を繋ぎたい やさしくなりたい

ここは最後に自らの本心と対峙し、吐露する場面でしょう。

取り返しがつかないものが多すぎて、自分が無力で、心が押しつぶされそうになる。
何ならこのまま押し潰れて欲しいと思うが、そうはいかない。

愛なき時代に生まれたわけじゃなかった。
ただ、君に会いたい。それだけでよかった。

強くなりたかった。
やさしくなりたかった。

手を繋ぎたかった。
やさしくなりたかった。


いかがでしょうか。
みすぼらしい1人のホームレスには、切ない雨に滲んだ残酷なドラマがあったのです。

誰もが強くなりたいやさしくなりたいと思って生きている。
でもそれって「弱い」ってことを知ることから始まるんでしょうね。

このホームレスは、これからがやさしくなる第一歩になることでしょう。
あなたは自分を「弱い」と思いますか?

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。