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アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる②(25話-51話)

前回1-24話にあたる感想を書いた。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の初期の作風、そして一貫して存在する笑いの概要についてはひと通り網羅できたつもりである。今回の記事はアニメの中盤戦にあたる25-51話についてを書こうと思う。

ところで、驚くようなニュースが飛び込んできた。ボーボボの舞台化が決定したのである。このやはり今年はボーボボと向き合うべき年だと確信したので、意気揚々とこの記事も書き進めたいと思う。異形のY2Kとしてのボーボボ考である。


シチュエーション大喜利の台頭

25-51話はZブロック編、ハジケブロック編、OVER城編、ハレルヤランド編、サイバーシティ編という5編から成る。いわゆる敵側の幹部戦、言うなれば中ボス戦が続く流れ。この時期は初期にあった戦況すら煙に巻くスタイルは廃され、敵を倒すことが主目的になる。

そして、この頃に前景化するのはボーボボの“シチュエーション大喜利”としての側面である。特にOVER城編以降はそれが顕著になる。以下に列挙してみたい。

OVER城
ルビー戦:子をあやす
無限蹴人戦:サッカー、溶岩フィールド
四大文明戦:忍者、洋式トイレ

ハレルヤランド編
カネマール戦:電車
ナイトメア戦:子供になって戦う

サイバーシティ編
パナ戦:車輪で戦う
ソニック戦:逆さ吊りで戦う
クルマン戦:俳句で戦う

このように敵の特徴+バトルフィールドの特徴によって生まれる特異なシチュエーションに対し、ボーボボたちがいかにボケていくかというのが話の中心になっていく。これは非常に明快で観やすく、初期のシュールで置いてけぼりな点はなくなる。最も分かりやすい時期だったと言える。

またそれぞれのボスを倒す際に繰り出すボーボボの必殺奥義もまた特徴的だ。それぞれの敵の信条やその特性(ハレルヤランドのハレクラニなら金、サイバーシティのギガなら芸術)に対抗し、大喜利を羅列するようにして技を繰り出す。この勢いと大団円感が物語全体に起伏を生んでいる。


3バカフォーメーションの完成

この時期の特徴といえば、いわゆる3バカがレギュラー戦闘メンバーとして定着することだろう。ボーボボと首領パッチは永遠の相棒同士であるとして、意外にもところ天の助が仲間に正式加入するのはハジケブロック編から。第30話にしてようやくこの3人のフォーメーションが完成する。

基本的にはボーボボと首領パッチの間で膨らませたくだりに天の助を巻き込む、という形で進行していくこのフォーメーション。上に挙げたシチュエーション大喜利の中でもこの3人が3発続けてボケていく流れは非常に分かりやすく、戦局におけるテンポも増す。ボーボボにおける1つの定型の完成だ。

すると次第に、お馴染みのくだりも出来上がっていく。例えば戦いの幕開けにおいてボーボボが首領パッチと天の助で攻撃をガードするくだり。天の助をパンチにして、つるんと飛び出た顔や体の一部で攻撃するくだり。「はいこれもパターンです」と明確にメタな台詞が飛び出すのも特徴的である。

その結果として、この頃の戦いにおいてはボーボボの暴力性が際立っている。とにかく仲間を敵に向けて投げ飛ばしまくる。特にOVER城編から仲間に加わった田楽マンの武器としての使用率が高い。こうした大味かつ見た目にも激しいボケによって、ボーボボそのものの不条理っぷりは強化された。



ビュティの覚醒

この時期のボーボボを語る上で欠かせないのはツッコミ役であるビュティの覚醒だろう。Zブロック編で、フェニックスから敵が生まれるというくだりにおいてツッコミの許容量を超えて壊れてしまって以降、肝が据わったようにボーボボたちの動きを受け止めていくようになる。この変化は重要である。

ビュティのツッコミは時にスカしたり、時に無視をしたりと初期の方が手数は多く、それ自体笑いを生む装置となっていた。しかしこの時期、”横顔+目飛び出し+口開き“によるツッコミのスタイルが磨き上がり、この連打が繰り出される。声優を務める野中藍の技量向上もあり、場面のテンポが急加速する。

さらに正面を向いて目を見開くツッコミや、時にノリツッコミも行うなど、別方向に手数を増やし始めるのも特徴的だ。これらも全て、そのシーンでの笑いの熱量を維持する役割を果たし、物語全体のテンションを飛躍的に持ち上げた。初期にあったシュールな間合いの笑いはビュティの覚醒で衰退した。

3バカフォーメーションの完成×ビュティの覚醒。この掛け合わせが中期をキャッチーなものにし、分かりやすく笑えるワンセットとして届けられたのは画期的だ。中身のボケは相変わらず極めて突飛で理解不能なものも多いが、そのパッケージをポップに仕立てることでより明快な笑いへと繋がったのだ。


見せ方のバリエーション

敵側も一定のボケ指数を持っていた初期と比べればOVER、ハレクラニ、ギガの3人は巨悪として描かれ、その支配性に対する手段としてひたすらボケ続けるボーボボたちのコントラストは際立つ。王道のバトル展開を用意するからこそ、ボーボボの持つ過剰な要素が表出しやすくなっているとも言えるだろう。

一方で、田楽マンはその存在自体が「最強ブロックのリーダー」というフリのオチであるし、ライスは覚醒時に極めてハジケた人物になり、OVERは怒りが溜まると魚雷ガールに変身するなど、そのギャップを大きな仕掛けとするパターンも生まれている。敵の見せ方のバリエーションも豊かになってくるのだ。

また一応は子供向きアニメゆえ、原作から改変された部分も多くそれがむしろ本作の異様さを強めていた。代表的なのはライスで、原作では覚醒すると「おっぱいを揉みたい」というキャラクターだが、これを「親孝行したい」と改変し、行動を腰や肩を“揉む”ことに変化させる見せ方には心底関心したものだ。

さらに原作ではパロディ色が強く、実在する曲(「ハッピーサマーウエディング」など)が登場することも多々あったがこれらが全てオリジナルソングに置き換わっている。このアレンジもまた、作品世界と現実世界の接地面を減らし、ボーボボの独自性を極めた。大人の事情をも巻き込む求心力を持つのだ。


この頃からボーボボたちがいくつかの班に分かれて戦う場面が出てくる。ハレルヤランドやサイバーシティではボーボボと首領パッチの別行動を並行して描くシーンも出てくる。このキャラクターの個性を活かした見せ方は、次なる52話以降に繋がる。”キャラクターモノ“として完成していくボーボボ最終章は4/20よりNetflix配信開始。是非ともご覧ください。


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