001-スタッフ宇留鷲つぐみの記録(セットアップ1)

街に怪人が現れた。
名前はデスパパ。デスブラック所属。
デスブラックは悪の組織で、
怪人と戦闘員が隔週でどこかの街に現れては暴れている。

何故、隔週なのだろう。

そして、いつものようにアイボリーが現場へ急行した。
特別防衛組織FORT所属の戦隊ヒーローだ。
アイボリーは若手のスーパーヒーローとして
自信家だがそれに見合った高い実力を持っている。
そのアイボリーには、FORTの君島研究所スタッフが
サポートにつくわけだが、それが私、宇留鷲つぐみだ。
などとしょうもない説明をしている内に
アイボリーが現場に到着したようだ。

「あんたがデスパパっすか」

怪人デスパパの背後からアイボリーが声をかけた。

「あぁ?」

振り向きながら応えるデスパパの顔面に
アイボリーがたっぷりな助走付きのドロップキックを食らわせた。

「き、貴様は色彩戦隊カラレンジャーのアイボリー!」

蹴られて吹っ飛びながら叫ぶ怪人デスパパ。
器用な奴だ。

「前々から思っていたが、何で戦隊なのに
いつもひとりなんだ。それとアイボリーってw
レッドやブルーでいいのにアイボリーってww
トイレの便座かお前は」

などと、うだうだ叫びながらも反撃に転じようとするデスパパが
激ウザだったので、私はアイボリーに指示を出した。

「早急にとどめを」
「了解っス。カラレンセイバー!」

そう言ってアイボリーはカラレンセイバーを取り出した。
金属製の柄から光刃が出る君島研究所所長製作の剣だ。
所長はSF映画を見て『アレいいな』と思い、作ったらしい。

子供か。

アイボリーが右手に持っているセイバーを起動させると、
鈍い音とともに光刃が延びた。
妖しい光がアイボリーの顔を照らす。
迫る怪人デスパパを見据え、
アイボリーがセイバーを振るおうとした瞬間、
光の剣が鈍い音とともにみるみる消えていった。

「おや?」

怪訝な表情でセイバーの柄を眺めるアイボリーに、
デスパパの必殺の一撃が眼前に迫る。

「ハイ、勝ったー!」
「ちょっとウルサイっスよ」

アイボリーがセイバーの調子を確かめながら、
デスパパの顔面に左アッパーカットをぶち込んだ。
デスパパが凄まじい勢いで空中に吹っ飛んだ。
アイボリーはそんなデスパパを気にもとめず
セイバーを起動させようとしていた。

「お…おにぎりの具はツナマ…イヤやっぱ明た…」

宙を舞うデスパパが、最期の言葉を残しきれず爆散した。

何を言うとるんだこの怪人は。

「怪人倒したっス。帰還するっス」
「了解、お疲れ様です」

アイボリーからの連絡に返事し、私は無線を切った。
隣に座る君島所長がバツの悪そうな顔をしている。

「所長。カラレンセイバー起動しませんでしたね」
「うん。そうだね。やっぱり今回も来るかな、副指令…」
「おそらく来ますね」

加藤副指令が研究所の失態を責めにやってくる。
それを思うと私は気分がダウナーになっていった…。


<登場人物>
宇留鷲つぐみ…
主人公。君島研究所スタッフで、容姿端麗、冷静沈着若手。

アイボリー…
スーパーヒーロー。先輩を軽見下しする後輩口調で激強若手。

君島君雄…
研究所所長。戦闘の役に立たないものばかり作っている暢気中年。

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