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002-加藤副指令、怒り止まnない(セットアップ2、ii、cq)

まただ。
また彼らだ。

私の嫌いな君島研究所だ。
奴らのせいで怒りが収まらない。

特別防衛組織FORTの次期総司令、
いやまあ要は副指令のこの私、
加藤を毎度怒らせるアイツら。

悪の組織であるデスブラックを殲滅するために日々、
奮闘しているというのにまたもアイツらがやらかした。

FORTに要るのか?君島研究所って。
正直言って、私はデスブラックよりも
君島研究所が嫌いだ。
君島研究所を君研というのもなんか腹が立つ。

そんな気持ちを持ったまま、
私は奴らのいる指令部へ乗り込んだ。

「いい加減にしたまえ!君たちこれで何度目だ!」

直立不動の君島所長と助手の宇留鷲つぐみに
怒声を浴びせた。

「毎度毎度武器の不具合や故障を連発しおって!
そもそもだね」
「まあいいじゃないスか。勝ったんだし」

私が怒りを爆発させ説教が乗りに乗ってきたところに
アイボリーが話の腰を折ってきた。
ていうか、コイツ帰還するの速くね?
ついさっきまで怪人と戦ってたじゃん。
しかも、変身状態でカップ麺食ってるし。

「いや、なんか変身解除できないんスよ」

変身ウォッチを見せながらアイボリーが返答した。
またアイテムの故障か。

「君島所長、あんたはいつになったら
マトモなものを作るんだ!」
「いやあ、面目ない」

君島所長は、ひょっとこのお面を着用しながら謝罪してきた。
何なんだコイツは。
私の上司、大和田総司令の親友らしいが、
ちっとも役に立たないではないか。

そもそも君島所長の失態は枚挙にいとまがない。
彼は以前、偵察用メカ伝書鳩を開発した。
しかしメカ伝書鳩は飛んでいったきり
二度と帰ってはこず、オプションで
鳥フン機能が付いていたがそれも特に意味はなかった。
何でオプション要ると思ったんだ。

また、メカ救助犬というのもいたが、
しばらく経って『最近アイツ見ないな』と思っていたら、
いつの間にかコードレス掃除機になっていた。
少し面影が残っていたので私は複雑な気持ちになった。

極めつけは、謎の形状をした珍妙な何かを開発した時だ。
所長に「これ…何?」と尋ねると
「いやあ私にもさっぱり」と言いやがった。
ワイに聞かれても困りまんねん的なノリで、だ。
アホか?アホなのか?アホ研の所長なのか?

大和田総司令がバカンスで留守中の現在、
この男をクビにするまたとない好機なのではなかろうか。

うん、そうだ。そうに違いない。

「マトモなものを作れない奴はクビ…いや、いっそ
君島研究所を閉鎖しよう。それで他の部署が潤う」

思わず出た私の言葉に「待ってください。それは」と、
着用していたひょっとこのお面を天狗に替えて
君島所長が反応したが、それを遮るように
助手の宇留鷲つぐみが声を発した。

「では作ってみせますよ。最高の武器を」

この助手のことは容姿が良いこと以外、特に知らないのだが
意外な発言、というより大きく出たものだ。

「…できんの?」
「はい」

この容姿が良いだけの助手、
一体どこからそんな自信が出てくるのかよくわからない。
あと、このタイミングで
サイズ86cmのジャンボ靴に履き替えた君島所長も
超絶によくわからない。

「いいでしょう。ただし、7日以内に完成が条件です。
出来なければ研究所は閉鎖する。よろしいか」
「了解しました」

正直いって、
私のなかで君島研究所閉鎖は決定しているのだが、
この容姿の良い助手に猶予を与えてみた。
どちらに転んだとて私が不利益を被ることはないからだ。
もちろん、最高の武器が出来るなどビタイチ信じてはいない。

「あ、変身解けたっス」

絶対に今じゃないタイミングでアイボリーの変身が解除された。
私はあらためて君島研究所の閉鎖を固く、固く誓った。


<登場人物>
宇留鷲つぐみ…
主人公。君島研究所スタッフで、容姿端麗、冷静沈着若手。

アイボリー…
スーパーヒーロー。先輩を軽見下しする後輩口調で激強若手。

君島君雄…
研究所所長。戦闘の役に立たないものばかり作っている暢気中年。

加藤副指令…
管理職。君島研究所不要論者。制服スーツ、私服もスーツ、横分け

大和田総司令…
最高責任者。バカンス中。年中アロハ、七夕のみパーカー

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