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SEOBOK/ソボク 死がとりもつもの

こんにちは!
毎日暑いですね、お元気ですか?

本日は、映画の感想をば。

デデーン!
韓国映画の「SEOBOK/ソボク」です。

少しだけあらすじ書きますね。
コン・ユさん演じる死期が迫った元エージェント、ギホンと、パク・ボゴムくん演じる永遠の命を持ち、人類にもそれをもたらす鍵となるクローンのソボク。
何者かに狙われるソボクを守ることと引き換えに、ギホンは自分の病を治してもらうという約束を政府の人間とします。

ここからは少しだけネタバレも含んで書いていきますので、少しでもネタバレは嫌だなと思う方はUターンしてね(ラストのネタバレはしません)

序盤から、”死”と”死への恐怖”をわたしたちにどんどん見せてきます。死ぬのは怖い。もっと生きたいと多くの人は思う。でも死は数秒先にあったりもする。

そんなことを思いながら観ていると、研究者の女性が言い放ちます。

「人間は本当に臆病で欲張りですね」

どこか諦めを含んだような表情でこの言葉を言った彼女の存在は、ソボクにとって大切な鍵でもありますが、まずこの言葉に頭を殴られたような衝撃を感じました。

初めて研究所に来たギホンの目に写ったソボクは、クローンではなく、多分普通の可愛らしい少年(青年)でした。それは彼の持つ特殊能力を見ても変わらなかった。
だからこそ、彼と二人きりで護衛を始めた時に、

「さん付けじゃなく、ヒョン(兄さん)と呼べよ」

と言ったんだと思うんです。

研究所の人間がどれほど「ソボクは人間ではない」と言っても、最初からずっとギホンにはそう思えなかったんでしょう。
その“少し恐ろしいまでの優しさ”が彼の本質であり、だからこそ、彼が過去に犯してしまった罪がずっと彼を苦しめたのかもしれません。それこそ、彼が病気になったのも、その罪の意識から来たんじゃないかと思うくらいに。

この、とことん優しいという本質を持つギホンを演じるのに、潤みを帯びた優しい瞳を持つコン・ユさんがぴったりだったんだなと納得しました。
どれだけ自暴自棄になろうとも、怒りに震えていても、その穏やかな優しさを彼から取り除くことができないから。

少し話を変えますね。

ソボクとギホンが隠れ家へ向かうために街を歩き、その隠れ家で過ごしたシーンは、時間にして10分はあったでしょうか?
ここは、わたしがこの作品で一番好きだと思ったシーンです。

屋台で焼酎を飲みながら簡素な食事をする男性、市場で些細なことで喧嘩する人たち、桶に入ったドジョウ、自分で洋服や靴を選ぶこと、健康に良くなさそうなカップ麺を思う存分食べること。

わたしたちにとっては”普通”のことでも、生まれてからずっと研究所で生きてきて、実験体としての日々を送ってきたソボクにはすべてが新鮮で、興味深かったんでしょう。
そして、そんなソボクを見ながら、わたしも気づいたんです。
(あぁ、この景色こそ、幸せ以外のなにものでもないじゃないか)と。

普通だ、平凡だと、退屈だと、日々の中で見過ごしているものが、どれだけ美しく尊いか。

劇中にずっとピンと張り巡らされている”死の恐怖と生への執着”という糸。
それがふわっと緩んだのが、この体感にして10分ほどのシーンだったように思います。

さて、物語は進み、とても印象的なウルサンへの小さな旅を経て(この辺りのシーンは映像がとても美しく素晴らしかったのでぜひ映画館の大画面で見て欲しいです)、終盤へ。

クローンは、人間ではないのか?
人間でないものは粗末に扱っていいのか?

「自分の存在理由がわからない、僕も何かになることを願っていいのか?」と大粒の涙を流すソボクを見て、科学の進歩と引き換えに犠牲にしてきたものに想いを馳せました。

いままで人類が生き延びるために、どれほどまでの犠牲があったのだろう?
それは想像もつかないほどだし、実際想像できないというのが正直なところです。
でも、少しだけでもいいからそこに想像力を働かせることも必要だなと感じました。

自分が生きるために、その欲望のために、どこまで犠牲にするのか
自分らしく生きるために、利用されないために、何を守るのか

前者はギホンの行動が問いかけ、後者はソボクの行動が問いかけてきました。そして、その答えは彼らが最後にした選択で明らかになります。

わたしは、最後の海のシーンに救いを感じました。
その海は少し悲しげに見えたけれど、わたしたちの欲望や執着すら飲み込んで洗い流してくれそうでした。

“死”とはなんなのか?“生きる”とはなんなのか?

もしかしたら“死”という存在がとりもっているものはとても多くて、小さな出来事や平凡に思える日常を幸せだと思えることなどもその一つなんだろうなと思うんです。

(個人的なことですが、奇しくも好きな俳優さんがコロナに感染されたというニュースが流れて、若いので大丈夫とは思っていてもこの強いウィルスがもたらす“死の気配”みたいなものを感じざるをえない日々を送っていました。そのタイミングでこの映画を見たことも偶然とは思えなかったです)

さて、わたしの感想はこの辺で終わります。

アクションシーンも多く、そういうのが好きな方も、SFなどが好きな方も、そしてコン・ユさんとパク・ボゴムくんの関係はある意味ブロマンスとも呼べるのでそういうのがお好きな方も、いろんな切り口で楽しめるんじゃないかなと思います。

ぜひ、見てみてください!

では、では、また!

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