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【教員免許取得小論文】体育教育における発育速度の違いによる留意点

現在、発育速度の差異は時間的な要素のみで区分され、それに合わせて学習指導要領が策定され授業が行われている。

しかし、発育速度には同年齢でも早熟、標準、晩熟とあり、さらに男女差や個人差がある為、特に成長過程にいる子ども達では同学年でも体重の差異だけで3~4年もの違いがある。

発育速度にこれだけの差があるにも関わらず、そうした位相差、男女差に配慮しないまま画一的に授業を行えば、ひとりひとりの子どもに対して健康な身体作りという目標を達することができないだけでなく、安全の確保も難しくなるだろう。

健康な身体作りに十分な成果を挙げるには、機能的発達における位相差を熟知した上で、ひとりひとりの子どもの発育パターンを考慮し、それぞれの子どもにもっとも適した運動を行わせることが必要となる。

それではすべての子ども達が安全かつ効率的に健康な体作りを達するのに必要十分な運動を行えるようにする為にはどのような点に留意して授業を行えばよいのであろうか。


機能的発達の男女差には男女間の発育時期のスパート差がある。男子の発育スパート期がおよそ14歳ごろであるのに対して、女子は12歳ごろとその時期が早い。

その為、一般的に女子は10歳~12歳で身長、体重において優位となる。さらに体力測定の結果では、女子は10歳~15歳まで柔軟性において優位な結果が表れるが、他の項目では男子が優位となる。

さらに、10歳~12歳の女子は精神的にも発育のスパート期であり女性としての意識も生まれることから、運動することをはしたない、極度にボールを怖がるなど運動に対して後向きになるなどの影響もある。女子に対して健康的な身体作りを十分に行うには、そうした精神的なことに対する配慮も必要になる。

発育時期には、男女差のみならず個人においても、当然ながら違いが表れる。

早生まれの子と遅生まれの子では当然ながら約1年という位相差が存在するし、仮に同じ誕生日であったとしても、遺伝・環境・運動の有無・食事・ストレスなど様々な要因によって、早熟、標準、晩熟といった違いが表れてくる。

つまり、この時期は第二次性徴が発現してくる子どもと未発現の子どもが混在することになり、精神的発育差、体格や運動能力の差が著しく大きくなるのである。

授業を行う際、このことを念頭に入れておかなければ、すべての子どもに対して必要かつ十分に健康な体作りを行うことはできず安全面にも問題が出てくるだろう。

学童期の子ども達、特に高学年の子ども達は上述したような位相差こそあるものの、著しい早さで成長をしている。

こうした子ども達は身体の成長とともに、ある程度の運動能力の自然発達が見られるかもしれない。しかし、運動能力は素質や環境の条件に大きく左右され、適した時期を逃せば運動による成長があまり期待できなくなる。

よって運動能力の発達をより促し、子ども達の健康な身体作りを行うには、積極的に伸びる時期に適当な運動を行わせることによって伸ばすことを考えるべきである。

さらには、身長が急激に伸びた子どもの中には一時的に動作がぎこちなくなったり、女子の中には体重の急増により鉄棒、短距離、長距離を嫌う者が出てくる。その為、上述したような位相差に留意するとともに、学童期の子ども達の機能的発達をも理解し、そのことを常に留意しなければならない。

学童期の子ども達の筋力は未熟であり、その発達は自然発達である。その為、筋肉に負荷を与えるような運動環境を与えても障害を与えるだけで筋力にはあまり効果を表さない。

一方、学童期は敏捷性に優れ、転回、回転バランス系の運動など調整力の伸びが目覚ましい。また、筋力に負荷を与える運動と敏捷性を鍛える運動の両方の要素を持つ走る、投げるといった運動はちょうどその中間くらいの伸びを期待でき、持久性も注意しながら指導すれば一定の効果が期待できる。

こうしたことから、体育の授業において筋肉を増強する為に行う筋トレのような運動は避け、敏捷性や調整力といった神経機能を強化するような運動を取り入れるよう留意すべきである。

また、過度に養護するよりもバランスに注意しながら各子どもが運動能力を最も発達できる内容や時期を見極めて指導すべきである。

健康な体作りを一人一人において実現するには、上述してきたように、学童期における機能的発達に留意するとともに、様々な発達状態の子どもが混在しており、個人差が著しく大きいことに留意しなければならない。

つまり、いかに工夫して個に対応ていけるかが鍵となる。

もちろん、集団学習には学習の能率化や社会的訓練といった目的があり、現実的にも教育的にも集団学習は必要である。

しかし、個を無視した画一的な集団を対象に授業を行っても、健康な体作りに十分な成果が期待できないだけでなく、子どもの運動離れやケガを招く恐れすらある。

体育という授業は主に集団で行われることが多いが、同時に個人単位でも行われるべきである。

あくまで個々の差に留意した上で、その個人の集団が教育の対象として考えられなければならない。

こうしたことから個々の発育パターンが考慮されたグループによる学習や自学学習形態による教育が必要となる。

その際には、子ども達がグループ分けによって劣等感を持たないように配慮したり、自学学習を安全かつ効果的に行えるように支援する必要がある。 このように集団において授業を行う上でも、できる限り個に応じた授業が行えるよう工夫すべきである。

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