子供が混乱する大人からのメッセージとは?

大人から発せられる悪気のない矛盾


最近は、テストでいい点数をとりいい大学に入って、大きな会社に入りさえすれば人生は安泰などと言う人はさすがに少なくなってきていると思いますが、


逆にふだんから、

「大人になってからは、学校の勉強なんて役に立たない。」
「人生では勉強以外のことが大切だ。」
「勉強は受験にしか役に立たない。」

というようなことを言っている人はいることでしょう。


一方で、

「勉強しなさい。」
「宿題やったの?」

とつい言ってしまうこともあると思います。


大人からすれば、どちらも一面で正しいこれらのことは、子供からすれば矛盾しているように見えます。


2つの矛盾したメッセージを受けて混乱し、反発したり、勉強にやる気が出ない子がいます。心理学的にはダブルバインドといいます。


子供は、矛盾したメッセージを受け続けることで、意識的にも無意識的にも心理的ダメージを受けます。もし表面的にはそれほど気にしていないようにみえても。


勉強は将来役に立つ? 受験にしか役に立たない?


世の中の風潮を見ていると、いまだかつてないほどに、学歴やテストのための勉強というものの価値が下がっているようにも思います。


でも、テストの点数が落ちれば心配になり、上がればうれしいものでしょう。


いったい、これからの時代であっても、テスト勉強さえしておけば仕事もできるようになったり、幸せになれたりするのでしょうか? あるいは、受験にしか役に立たないものなのでしょうか?


子供に矛盾したメッセージを伝えないためにも、今回はこのあたりを整理したいと思います。


教科書の知識は将来役に立つこともあれば、役に立たないこともある


二次方程式の解の公式とか、古文・漢文などの知識は、将来使う人とあまり使わない人がいます。


計算はExcelがやってくれるし、漢字も変換してくれる。英語は翻訳してくれるし、これからは同時通訳の仕組みも一般的になってくるでしょう。


一方、漢字の読みなどは、多くの方にとって役に立つものです。方程式の知識を仕事でバリバリ利用している人もいます。勉強した知識が役に立つかどうかは人それぞれ。進む道によって変わりますよね。


そのため、自分は将来勉強が必要な仕事を目指しているわけではない、と考える子にとっては、使わない知識を学ばされることに抵抗を感じることもあると思います。


特に、親御さんが学歴に関係なく商売で成功していたり、人生を楽しんでいたりするのを見たりすればなおさらです。


そのため、そういう親御さんから「勉強しなさい。」と言われても説得力がないというのが子供達の正直な感覚かもしれません。


勉強の過程でさまざまな能力を身につけられれば将来役に立つ


勉強の過程では、さまざまな能力をみがくことができます。


例えば、集中力、記憶力、思考力、書く力、読解力、自己管理力、主体性、やり抜く力、などさまざまな能力です。


おそらく、多くの方が学生時代は勉強をしておいたほうがいいと考えるのは、知識自体よりも、その過程でいろいろな能力が身につけられるからではないでしょうか?


なお、これらの能力は勉強以外でも身につけられるものもあります。


5教科の知識も役に立つように学ぶことはできる


知識自体は、将来役に立つ人も、そうでない人もいると書きましたが、実は多くの人にとって役に立つこともあると考えています。


まず1つ目は、学校で学ぶ知識は、一般教養として人の幅を広げてくれるためです。


2つ目は、学び方によっては、知識も役に立つように学ぶことができるという点です。それは、学ぶ知識を抽象化して、本質をとらえるということです。一つの例をこちらのブログに記載しましたので、よければご一読ください。


ブログ: なぜ因数分解を学ぶのだろう? 文系の方向けのお話



将来役に立つように学ぶには?


ここまでのことを整理してみます。


1. 知識自体は将来役に立つこともあるし、役に立たないこともある

2. 知識が役に立つように学ぶためには、抽象化された本質を学ぶほうがいい

3. 勉強の過程で将来役に立つ能力を身につけることができる


しかし、ここで問題があるのです。


まず1つ目ですが、テストで点数をとるテクニックの中には、本質的なことはあまり含まれていません。受験にしか役に立たないことが多いため、問題を解く手続きやテクニックだけを学び、素早く正解にたどりつくことに終始するのはおススメしていません。なお、何が本質と考えるかは人によって変わると思いますので、これも注意が必要でしょう。


2つ目は、他人から「詰め込み」のやり方で勉強をさせられた場合、1を聞いて10を知ることができる一部の勘のいい子以外は、主体性や自立心、自己管理力、思考力、やり抜く力などが身につかないことがあるどころか、邪魔になるリスクがあるという点です。


3つ目ですが、テスト勉強の過程で変なプライドや変な劣等感をもってしまうと、それが将来人間関係において悪さをすることがあるという点です。


そのため、同じ勉強をするのでも、「どのように学ぶか?」が非常に大切と考えています。


お子様にはできるだけ一貫したメッセージを


お子さんがイキイキと勉強をする姿を見ることは親御さんからすれば、何よりのものでしょう。


私も子供がいるので実感がありますが、親としては単にテストの点数をとるための勉強だけでなく、勉強をしたことが将来のお子さんの自立と幸せにつながってほしいと願うものです。


もちろん親とはいっても一人の人間。いつも理想通りにできるわけではありません。


でも、言葉足らずで矛盾したメッセージを送り、無意識に子供たちの将来にダメージを残してしまわないよう、十分に気をつけたいと思うのです。


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