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うちのふるさと宅配便

父が亡くなってから、お米や畑からの採りたて野菜、山菜やホタテ貝などの故郷食材が届いて来なくなり、めっきり寂しくそして恋しくなり、同時にものすごく食べたくなるここ数年。

お米は母の弟が米農家で、いつも父が精米所で精米してくれてから送られてきた。畑の野菜は両親が畑で育てた旬のもの(畑は主に母の趣味)を、山菜は毎年父が山に入り蕗やワラビなどを、ホタテは向かいに住むホタテの養殖業を営む親類からお裾分けで戴いたものや買ったもの、そんな感じでよく我が家には旬の食材が送られてきたのである。

実家は超絶田舎で車がないと本当に不便なところにある。実家では父が唯一車の免許を持っており、買い出しに行ったり、我が家に送るための食材などを宅急便の営業所まで持っていき送ってくれていた。

ところが父が亡くなり、免許のない母は移動手段が2時間に1本程度しかないバスかタクシーだけとなってしまった。さすがに米を持って精米所には行けないし、心筋梗塞を患い、今やめっきり足腰が悪くなってしまった以上、弟の田植えの手伝いにも行けないし、山に山菜採りにも行けない。畑も聞くところによると今は数多の野菜を育てるでもなく、ただ自分が食べていける分に、近所や数十キロ離れたところに住む私の兄夫婦にお裾分けできる程度しか育てていないらしい。畑の規模も足腰が悪くなってからは一人で管理出来る程度に縮小されたようだ。

そんなわけで今や激減してしまった我が家へのふるさと宅急便だからこそ、たまに届けられてくるととても嬉しくなる。どうやらほぼ毎週末に私の兄が母の様子を見に来たり、車のない母のために買い出しに連れ出してくれているため、その時に兄に頼んで精米してもらったり、宅急便に出してもらったりしているようだ。

母一人では出来ない我が家へのふるさと宅急便。元々は父や母が私の健康を気遣い美味しいものを食べてほしい、と20数年続けてきてくれたことを、父亡き今でもなるべくは、と私の兄に精米の仕方を教えたり、少しでもと送ってきてくれる母の気持ちに涙が出そうになる。

少し前に送られてきた長芋を豚肉と一緒に甘辛炒め

母の二番目の弟が長芋農家であるため、もらった長芋をこうしてまた私へと沢山送ってきてくれた。母からのふるさと宅急便、そして母の作ってきた料理と味を真似ながら、改めて感謝し涙が出るのであった。

早く故郷に帰って母に会いたいな、と思った。

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