競合と差をつける「真の競争優位性」に必要な2つの視点
「御社のサービスの差別化はなんですか?」
起業家や事業責任者、サービスのマーケティング担当なら、誰もが1度は言われたことがあるセリフだと思います。
差別化はサービスや商品はもちろん、SNS上でのセルフブランディングでも非常に重要になります。
そこで、本記事では差別化について掘り下げ、真の競争優位性を築くために押さえるポイントをお伝えします(3000文字)。
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1. 差別化の目的と定義
2. 差別化の2つの種類
3. 2つの差別化で真の競争優位性を組み立てる方法
4. 差別化を学びたい方へオススメの書籍5選
なぜ差別化しないといけないのか?
差別化が必要な理由は、自分たちのサービスをお客様に選んでもらうためです(あまりに常識すぎますが)。
仮に他のサービスとの違いが全く無ければ、理論上は消費者にサービスを選ばれる確率は他のサービスと同様になります。
全く同じサービスが5つ存在すれば市場の20%ずつの顧客をそれぞれのサービスで分け合う形となりますね。
当然、全ての企業は工夫を凝らし「うちの商品は他とは違う」とお客様に理解してもらおうとします。これが差別化の基本です。
そうして作り出した違い、特にお客様にとって魅力的な違いを競争優位性と言います。
差別化できている状態とは?
ここでの差別化の定義は「企業が長期的に利益を得ることができている状態を作り出すこと」です。
この定義によって、以下のようは方法は差別化にならないことが分かります。
・完全無料でサービスを提供し続ける
・一過性のキャンペーン
長期で利益に結びつくような差別化でなければ、競争優位性ではない。
一方で、常に商品を低価格で販売するエブリデイロープライスは差別化となり得ます。低価格で販売し続けることで自社を選んでもらい、結果として収益性を高めることができるからです。
差別化のよくある誤解
差別化でよく言われるのは「1つのコアな強みを見つけろ」です。
これは半分合っていて、半分間違えています。
確かに他のサービスと差をつけるなら、自分の得意領域で勝負するべきです。これが強みですね。
また、人は複数のことを言われても全てを理解できません。だからこそ1つの強みに絞り込んで尖らせる方がサービスは印象に残りやすくなります。
しかし、残念ながら1つだけの強みで勝てるほど今のビジネス環境は甘くはありません。簡単に競合にマネされるのがオチです。
では、顧客に選ばれ続ける競争優位性を作るにはどうすれば良いのでしょうか?
2つの差別化
差別化には細分化して2つの種類があります。
①顧客へのメッセージとしての差別化
②組織能力としての差別化
①は社外向け、②は社内向けとも言えるでしょう。
この2つの差別化を組み合わせていくことで、持続的な競争優位性を築くことができます。
①顧客へのメッセージとしての差別化
商品を選ぶのはお客様です。
そのため、お客様に自社の商品がどんな用途で使うもので他社とどこが違うのかを知ってもらう必要があります。
言い換えれば、お客様の頭の中に自社の製品のイメージを確立させるということです。
マーケティング用語では「ポジショニング」と言います。
メッセージは「1つのコアな強みを打ち出す」ことが効果的です。なぜなら膨大な情報に晒されているお客様は、以下のような特性があるためです。
・お客様は1つのことしか覚えない
・お客様は感覚や印象で良し悪しを判断する
・お客様は1番のものを選ぶ
だからこそ、私達は
1. 自分たちが一番である領域を絞り込み
2. そこにド真ん中で刺さる強みを1つだけ打ち出す
必要があるのです。
②組織能力としての差別化
では強力な1つのメッセージが打ち出せれば、それで差別化だと言えるでしょうか?
答えはNOです。
なぜなら、いかに良いポジショニングができても、いずれ競合がマネしてくるからです。
新しいポジショニングはすでに別のポジショニングが定まった大手企業はマネしにくい反面、新興企業は簡単にマネできます。
特にメッセージやイメージだけであれば、簡単にマネすることができます。
そこで必要とされるのが組織能力としての差別化です。
つまり、他社が真似することができないオペレーションを構築してしまうことが重要です。
そしてこのオペレーションは1つの施策では成り立ちません。複数の施策が組み合わさり、相互にシナジーを生み出すことで他社がマネできない競争優位性へと変化します。
最近話題のコミュニティ作りもこうした差別化に入ります。
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例えば俺のイタリアン・俺のフレンチは実に無数のオペレーションの工夫で競合優位性を作り上げています。
・一流のシェフを採用する
・一流のシェフを採用するために料理人に裁量を持たせる
・裁量を持たせる以上、料理になるべくコストが掛けられるようにする
・原価ギリギリまで料理にコストを使えるように店の回転率を上げる
・店の回転率を上げるために店のレイアウトを席数重視にする
・席数を最大化するために立ち飲み形式にする
・狭いキッチンでも料理ができるように食材や調味料の配置を工夫する
こうした無数のオペレーションによって他社にはマネできない低コストで高品質の料理の提供に繋がっていきます。
2つの差別化で真の競争優位性を維持する戦略を作る
ではこの2つの差別化をどのように組み合わて競争優位性を築き上げればいいでしょうか。
セオリーは①→②の順番で差別化に取り組むことです。そして最後にはブランドによる差別化へ
①1つのコアな強みを打ち出す
まずは自社のポジショニングを明確にし、1つのメッセージに洗練させます。コアのコンセプトを定めるということです。
その際に重要なのが、やることもそうですが「やらないことを明確にすること」です。
このコアのコンセプトが自社サービスにおける骨格となる戦略になります。
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■ 1つのコアな強みを打ち出すための質問
1. あなたのサービスを説明する明確なメッセージはなんですか?
2. あなたのサービスにおいてやらないことはなんですか?
②コアコンセプトに沿ったオペレーションを複数組み合わせる
コアコンセプトが明確になったらそのコンセプトに沿ったオペレーションを構築します。当然すぐに出来上がるものではありません。むしろ時間をかけて洗練させるからこそ、マネできない差別化になっていきます。
この際に重要なのが、「他社は実行したくないと思えるようなオペレーションが存在するか?」ということです。
最も理想的な差別化は相手がマネしようと思ってもできないものです。
今の時代、特許で守られてでもいない限りマネできないことは少ないです。
だからこそ、マネしようと思わないことをいかに作るかが重要です。
再び俺のイタリアン・俺のフレンチを例に挙げると、原価率ギリギリの料理や立ち飲みスタイルは他の飲食店はマネしたくてもマネできません。複数のオペレーションが組み合わさって初めて効果がでるものだからです。
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■ コアコンセプトに沿ったオペレーションを作り出すための質問
1. 明確なメッセージを支えるオペレーションはなんですか?
2. そのオペレーションを他社がマネするにはどれだけのコストがかかりますか?
3. 他社がマネすると逆にデメリットになるような特徴的なオペレーションはなんですか?
③ブランドを築き上げる
①と②を徹底できれば、他社よりも収益性の高いサービスができています。しかし、複雑なオペレーションですらいつか競合が追いついてくる可能性はあります。
そこで、最強の競争優位性であるブランドが必要になります。
食品や化粧品は①でも②でも差別化が難しいです。そのため、ブランドを築くことを競争優位性としています。
有名女優を起用したCMや大規模イベントの協賛などは全てブランドを築き上げるためのものです。
プライベートジムで有名なライザップも今や多くの競合がいます。ライザップより安価な競合も多いのに、ライザップが成長し続けているのは、有名人を使ったCMで一気にNo.1のブランドを確立したためです。
①と②で差別化に成功し、収益性を高めたあとはプロモーションに大きく投資し、ブランド認知を確立しましょう。
差別化を成功させるための5つの質問
最後にあなたのサービスが差別化を成功させるために必要な5つの質問をまとめます。この質問に対する答えを文章に落とし込み、誰にもマネできない素晴らしいサービスを作り上げてください。
1. あなたのサービスを説明する明確なメッセージはなんですか?
2. あなたのサービスにおいてやらないことはなんですか?
3. 明確なメッセージを支えるオペレーションはなんですか?
4. そのオペレーションを他社がマネするにはどれだけのコストがかかりますか?
5. 他社がマネすると逆にデメリットになるような特徴的なオペレーションはなんですか?
【おまけ】 差別化を学びたい方へオススメの書籍
差別化を築く戦略の条件やプロセスを解説した書籍です。
ストーリーとしての競争戦略はちょっと長いので大変という方にはこちらの本もオススメです。書いてある内容は非常に近いのでどちらか一冊読み込むのが良いでしょう。
小説形式で競争と戦略構築のプロセスを学びたいという方にはこちらがオススメです。
顧客のメッセージとしての差別化における1つのコアのメッセージを「USP」と言います。そのUSPについて学ぶならこちらの本がオススメです。
最後に、例でも出させていただいた俺のフレンチ・俺のイタリアンから学ぶ競合優位性はこちら。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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