お手洗いに入ると、こんな張り紙が。
「Thank you for your cooperation.」

「いつもキレイに使って頂きありがとうございます。」
先制パンチ。
まだこれからなのに。
というか、いつもって言うけど、初対面だし。

お手洗いで、こういう張り紙を一度は見たことがあるかと思います。
（ひょっとして、男子トイレだけなのでしょうか？）

先に言ってしまうことで「もうキレイにしか使えなくなる」という人間の心理をうまく捉えた、高等テクニックではないでしょうか。
先に前提を作ってしまうという・・・。
先にそのテイで話を進めるという・・・。

先日、通販で買った商品が自宅に届きました。

その段ボール箱には、「商品販売元のメーカー」から「配送ドライバーの方」宛てに、こんな張り紙がしてありました。

なるほど・・・。
これも、さっきのお手洗いの張り紙と同様に、人間の心理をうまく掴んでいませんか？？

もしもですよ、いきなり、
「こちらのお荷物はお客様の大切な荷物が入っています。丁寧に運んでください。」

と、要件だけを書いた場合。

配送ドライバーの方がそれを読んだら、こう思うでしょう。

「丁寧に運べ、だと？そんなの百も承知さ！なんだよ、俺たちを信用してないのか？？まったく・・・プレッシャーなんかかけやがって。俺たちだってプロだぞ！そんなに信用できないなら、自分たちで配送しやがれってんだ！おととい来やがれ！」

・・・後半、取り乱してしまいました。。
まぁここまで腹を立てないとは思いますが、あまり良い気分にはなりませんよね。

なんか、上司が部下に注意してるみたいですよね。
「大切に運んでよね？え？大丈夫だよね？分かってる？お客様の大切な大切な商品なんだよ？壊さないでよ？ちょっと、ホント、大丈夫かい？」
みたいに。。

しかし！
「いつも丁寧に運んで頂きありがとうございます。」から入るとどうでしょうか？

さっきの威圧的な、いや～な上司が、こんな感じに変わります。

「いやぁ、いつも悪いねぇ。どうよ、最近は？まあ腰掛けてよ。あ、吸うかい？あ、君は吸わないんだったな。まぁ大変だよな、実際。商品傷つけたら俺たちのせいにされかねないしさぁ。ホント、良くガンバってくれてるよ。ありがとうな。スゥ・・・プハァー。（タバコの煙を吐き出す。）でさ、忙しいところ悪いんだけどさぁ、今回もひとつ、よろしく頼めないかなぁ～。大変だと思うんだけどサ。あ、そうだ！来週さ、みんなでパーッと飲みに行くか！君の歓迎会も、まだだったもんなぁ。」

・・・ここまでは言ってないので、明らかに言い過ぎではあります。

とにかく！
「いつも丁寧にありがとうね」から入るだけで、相手の心を開き、寄り添うような、とても温かみのあるメッセージに早変わりするのです！

さっきのような事務的な、システマチックな、無機的な、人工的な、冷たい感じはありません。

交渉上手というか、お願い上手というか、世渡り上手というか・・・。
人間の心理を見事に捉えた、うまい言葉だなと思った次第です。

それだとちょっと打算的な感じがするので、もっとポジティブに言うなら、血の通った、温かみのある言葉だなと思った次第です。

言い方ひとつで、伝わり方は変わりますね・・・。