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初恋はスクリーンの向こう

 テレビで、ドリフや欽ちゃんのコントに大笑いし、登校したらその話題でもちきりの時代、自分は映画にどハマり中。だから周りから少し浮いていた。きっかけは映画雑誌。当時「スクリーン」と「ロードショー」が2大書で、確か¥400ぐらいの値段だったが、当時の中学生には高価なものだった。大判の写真が満載で、外国の映画スターがキラキラした笑顔で微笑んでいる。トレーシーハイドのその笑顔に、単純に堕ちた。

 彼女が出演する「小さな恋のメロディ」は、おそらく映画館で20回以上は観た。当時、客は入れ替わらなくても良かったので、一枚のチケットで朝から夜まで、何回でも見ることができた。学校をサボるっていう行為を覚えたのも、彼女きっかけ。部屋中、彼女の切り抜きでいっぱいだった。

 「スクリーン」も「ロードショー」もどちらも欲しいのだが、1冊買うのでも精一杯。そんな時、部活の後輩にも映画好きがいることを発見。遊びに行ってみると、彼の部屋にはマグナム44のモデルガンとイーストウッドの写真。そう!彼は「ダーティハリー」の大ファン。被ってない!利害が一致したことを確認し、彼が「スクリーン」自分が「ロードショー」を買って、必要な記事を交換することにした。

 トレーシーハイドの記事が、ほとんど取り上げられなくなった頃、代わりに紙面を埋めた女優に気持ちがゆれた。「タクシードライバー」に出演した同い年の彼女は、トレーシーと違って目力が強かった。可愛さとは違った魅力に、またまた堕ちた。周りでは、ブルックシールズ推しが圧倒的に多かったが、自分は断然、ジョディー派だった。その後、アカデミー主演女優賞を受賞した作品ももちろん観たが、30代中盤「コンタクト」で見せた彼女の知的さに、改めて中学生の頃に抱いた気持ちを思い出した。

 高校生になった頃、日本では「角川」ブームだった。原田知世、伊藤かずえなど、日本人の若手女優も、映画館に人を集めるようになったが、自分の推しは一択。「野生の証明」でのデビューがあまりにも衝撃だった。角川から出版された雑誌「バラエティ」を毎号購入。切り抜き用にタイムリーに購入するものと、保管用に購入するバックナンバーとの2種類が自分の部屋にはあった。ポスターをパネルにし、部屋中に飾ったのもこの頃。今でも、薬師丸ひろ子が載っている号は、綺麗なままで保管してある。

 サブスクやSNSに慣れている世代の人には分からない話かもしれない。でも、映画、とりわけスクリーンを華やかに彩る美しい女優に憧れた時代が、自分には確かにあった。

#映画にまつわる思い出

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