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モントリオール、壁画に刻まれた記憶:15年前住んだアパートを懐かしく思う

(約1100文字)

先日、娘を連れて、モントリオール美術館を訪ねた。
3階の窓から偶然見た風景。



モントリオールには、Leonard Cohen の壁画が数カ所にある。

彼を見ると、私と夫のダックさんが、最初に同棲したアパートを思い出す。

2006年末から2011年の約4年強住んだ4319 St-Dominique。

それは、Leonard Cohenの家の道路挟んでほぼ横。

市内の多くのアパートのように、そこも古く、間取りと動線がイマイチ。冬場は零下25度とかになるのに、外壁と内壁の間に断熱材が入ってるかも怪しい。さらに、大家が曲者という不都合はあった。

面倒なことに、前の住人が部屋ごとに、赤、青、黄、緑とカラフルにしてた。プライマーとペンキを買って、白に塗り替える作業は楽ではなかったな。

天井は高かった。

うんと寒い日には、洗濯機につながるパイプが凍ってしまい、洗濯機が壊れたかと心配もした。

床に小さなキノコをひとつ見つけたこともある。

こう書いてくと、全然ダメなアパートではないか。



でも、私にとって、あそこで暮らした毎日は、すばらしく特別で、恵まれてたように感じる。

その地域は、若者が集まると同時に、長く住む年寄りも多い。人口密度が高く、活気がある。最近は事情が少し変化してしまったが、当時は家賃が安かったゆえに多くのアーティストがスタジオを構えたり、生活する地域でもあった。街のエネルギーが集中する地である。Leonardの家が象徴的にその中心を作ってるように感じた。

一度、郊外に住むダックさんのご両親が、私達を訪ねにきたとき。
偶然路駐したのがLeonardの家の前。
さらなる偶然で、ご本人が玄関前に座ってる。握手してもらったそうだ。

これだけでも、わざわざ遠出してモントリオールに来てもらった甲斐があったかもしれない。

私自身は一度もご本人に会ったことはない。

2011年、娘が1才。アパートが手狭に感じ、すこし離れた地へ引っ越す(徒歩約45分先)。

離れてしまってから、やっぱり、あれはまさにモントリオールの中心だったよな、と再認識する。

引っ越しを後悔はしない。今思えば若き30台の数年、特にあの時期に、あの地で生活できたことをラッキーに思う。

2016年に彼が亡くなったとき。
彼の家の前の公園がファンで溢れかえる光景をニュースで見た。

もしまだあのアパートに住んでいたら…3階の窓からその様子を見てたことだろう、と想像した。

ここまで書いておいてなんだけど、私は特にLeonardのファンというわけではない。ただ、彼の壁画がとても大きいように、彼の存在はこの街においてとてつもなく大きいらしい。



カナダ在住アラフィフです。子宮筋腫に振り回された一年をゆっくりマンガに描いてます。


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