経済動物を超えて、ウェルビーイングを考える。
人新世の時代、経済合理性以外の指標をつくるべく注目されているウェルビーイング。GDPを追いかけるだけではなく、GDWも尺度にしていこうという流れです。
2020年のOECDの調査によれば、主観的ウェルビーイングを測る感情バランスでは、加盟国平均13.3%に対して、日本は8.7%(肯定的感情より否定感情の方が多い人の%)。ワークライフバランスを測る余暇時間では、加盟国平均15.1時間/日に対して、日本は14.1時間/日でした(正規雇用者の睡眠・食事を含む余暇時間)。
さらに、友人や家族との交流時間は、加盟国平均6.0時間/週に対して、日本2.0時間/週で、余暇時間と友人や家族との交流時間は全体の最低値となっています。
もちろん、平均を上回っている項目もあり、ここで紹介した項目は一部に過ぎません。
ウェルビーイングは、文部科学省の次期教育振興基本計画にも盛り込まれています。
内田由紀子先生の解説によれば、北米の獲得的幸福観に対して、日本は協調的幸福観であり、個人の視点以外にも他者や集団の視点を含むものだとされています。
個人としての独立性と他者との協調性のバランスを模索することが重要ですが、近年の教育においては、個人としての側面が強調されてきたようにも思えます。このバランス感覚における揺り戻しもあってか、世界は、個のウェルビーイングから場のウェルビーイングを考える時代に突入しました。
場のウェルビーイングを考えるうえで、地域内の社会関係資本(信頼や互酬性の規範)が大切な因子となっています。この社会関係資本と個人の向社会的な行動とがお互いに作用し、多世代の共創を生み出します。
個人と協調。個人を出発点としたとき、互いの協調・集合知は共通の社会善となり得るのでしょうか。宮田裕章先生は「共鳴する社会」をテーゼにBetter Co-Beingプロジェクトを行っています。
個人の幸福と言えど、それは常に社会とセットであり、僕たちは成熟社会あるいは停滞社会における新しい社会正義を見つけていく必要があります。この点において、「生きる」「生命倫理」などはキーワードになるのでしょう。
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