ぼくはセグウェイに乗る

 ぼくは1月の初めが誕生日である。生まれてこの方、ぼくの誕生日は学校(小・中・高・大)の冬休み期間とギリギリ重なってきた。おそらくぼくは「みんなから学校で誕生日を祝われる」というイベントを経験することのないまま、この人生をひっそりと終えていくのであろう。まあ、そんなことを言ったら8月生まれのひとなんて全員そうでしょうけどね。そもそも学校で友達に「今日って(ぼくのあだ名)の誕生日だよね? おめでとうー!」とか祝ってほしいわけじゃねえし。それ言われたところでだから何なんだって話だし。全然強がってねえし!

 ……さて、今年の冬休み。正確には「去年の暮れから今年の初めにかけての冬季休業」。元日は親族(と祖母宅からの帰りに寄ったコンビニの店員さん)以外には誰とも会わなかったが、翌日はちょっと忙しかった。ぼくはこの日、新年会を掛け持ちしていたのである。

 まず、昼間に地元の友人たちと会った。橋部、佐野、楢崎、松田の男4人である。彼らとの関係性を一言で言うなら「中学の同級生」だ。ただし楢崎とは幼稚園も小学校も一緒で、松田とは高校も一緒だった(向こうは理系クラスだったから学校ではほとんど絡みがなかったけど)。橋部と佐野の呼びかけで、ぼくらはこの5人で高校時代から定期的に集まっている。中学時代にこの5人でつるんでいた記憶はそこまでないのだが、逆に高校生になってからよく会うようになったのだ。まあ、「よく」と言っても、数か月に一度とかそんなもんなんですけどね。

 今年の新年会はなぜかお台場でやろうということになって(橋部がパリピなせいである)、ダイバーシティ東京プラザという商業施設の入口に集合することになった。JR京浜東北線に乗って大井町駅で下車、東京臨海高速鉄道りんかい線に乗り換えて東京テレポート駅へ。普段お台場に行くことなんてないのでドキドキである。でも、お台場って思っていたよりぼくの自宅から電車で近いな。大学までの距離より近いんじゃなかろうか。

 ダイバーシティ東京プラザはひとでごった返していて、ぼくらが昼食を食べるために入った「串家物語」という串カツのお店も満席だった。親子連れが多かったように思うが、男子高校生っぽいグループもいたな(このあたりに住んでいるのだろうか?)。この席でぼくは橋部たちから誕生日プレゼントをもらった。

 ぼくは毎年、この新年会で4人から誕生日プレゼントをもらうのが恒例になっている。今年ぼくがもらったのは、ドン・キホーテで売られている雑貨品のセットだ。『スター・ウォーズ』のライトセーバー、謎のゆるキャラの靴下、『アナと雪の女王』のLEGOブロック、ド派手なサングラスなど……。20代男性にとってどう考えても不要品である。ただ、4人で代金を割ったとはいえそれなりの値段がしただろうし、ぼくの好みも勘案したとは思われるので(ぼくは『アナ雪』がまあまあ好き)、「なんだよこれ!」「こんなサングラスかけて出歩けねえわ!」などとツッコみながらも感謝の言葉を述べておく。正直マジでいらないんですけどね、こんなにいっぱい。

 串カツのお店を出たあと、みんなでボウリングでもするかということで、エスカレーターで上がってラウンドワンへ向かったが、ボウリングは1時間待ちなどと画面に表示されていた。ところがスポッチャは待ち時間なしで入場できると表示されていたので、ぼくは橋部や楢崎の背中を叩きながら「スポッチャ行こう! スポッチャ!」と呼びかける。じゃあそうするかということになって、ぼくらはさらにもう一階上のスポッチャのフロアへ向かった。その時、松田がぼくに「スポッチャって何?」と聞いてきたが、実はぼくもこの時点では「スポッチャ」が何なのかを知らなかった。待ち時間なしで行けるというだけの理由で、ぼくは「スポッチャ行こう!」とみんなに呼びかけたのである。ぼくは松田に向かって「スポッチャってのは異常者とか変態が集まる社交場だよ!」と説明したが、この説明がデタラメであることはこの後すぐにバレることとなる。

 ご存じない方のために説明すると、「スポッチャ」とは、スポーツに特化したゲームセンターである。具体的には、野球のバッティングだとか、パターゴルフだとか、ダーツとかがやり放題な施設だ。ぼくは明らかにインドアな人間だが、たまにはこういうところも悪くない。ぼくがスポッチャのアトラクションでいちばん興奮したのは「セグウェイドリフト」だ。専用のコースでセグウェイ(並行二輪車)に乗って走り回るやつである。

ラウンドワンが提示する「セグウェイドリフト」のイメージ

 バッティングだとかパターゴルフだとかトランポリンだとかはその場で勝手にプレイできるが、この「セグウェイドリフト」は予約制(1組15分間)となっている。プレイする前に受付に行って申込書みたいなのを提出しなくちゃいけない。とはいっても、ぼくらの前にプレイしているひとたちは誰もいなかったので待ち時間ゼロでプレイできることになった。

 1人1枚ずつ申込書に名前を記入する。セグウェイ機器一式を受け取って自分たちで持ち運び(重たいので「これって本当は腕の筋肉を鍛えるアトラクションなんじゃない?」などと言い合いながら)、セグウェイのコースへ向かう。手と膝に安全防具を着け、いざセグウェイに乗ると、意外とバランスをとるのが難しい! まず最初に橋部がコツを掴んで、その次にぼくと佐野もコツを掴んでコース内をぐるぐる走り回ったが、楢崎と松田は運転にだいぶ手こずっているようだった。でも、最終的にはみんなきちんと乗れて、「セグウェイおもしろい!」的な時間を共有したよ。

 しばらくすると「セグウェイをご利用の方はそろそろお時間ですので機器を受付に持ち帰ってください」というアナウンスが流れてきて、ぼくと佐野はコースの外へ出たが、あとの3人はまだコースに残ってセグウェイに乗っていた。その時にぼくは3人を撮ってやろうと思い立って、スマホで写真を何枚か撮ってやった。そのうちの一枚がこれだ!

 ……えっとですね、さすがにここに橋部たちの姿が写った写真を掲載するわけにはいかないんで、間違えてシャッターを押した時に撮れてしまった失敗写真でご容赦ください。一応このnoteはぼくがどこの誰だか非公表でやっているnoteなもので……。コースの外に置かれた黄色い安全装具らしきものが写っているこのブレブレの写真を掲載したところで、ぼくらがセグウェイに乗ったことの何の証明にもならないとは思いますが、見たところで意味がないのは橋部たちが写る写真だって同じです。

 セグウェイ機器一式を受付に返却したあとは、非常階段風の階段を上って屋上へ行って、フジテレビの社屋をバックにバレーボールとバドミントンに勤しんだ。どっちもやるのは久しぶりだ。ぼくは中学生の頃、バレーボールの最初の打ち込み(アンダーハンドサーブと言うらしい)が得意だった。久しぶりにバレーボールをやって、綺麗にアンダーハンドサーブを決めて、みんなから「おー!」と言われて、ぼくはそのことを思い出した。まあ、逆に言うとそれ以外の技はからっきしダメってことなんだけど。

 本当はもっと橋部たちと一緒にいたかったのだが、ここでぼくは二件目の新年会に向かわなければいけない時間となった。橋部には事前にそのことを伝えていたので、みんなで屋上から室内へ戻ったタイミングで「ぼくはじゃあここで!」と告げると、ぼくは小走りでスポッチャを退出して、東京テレポート駅からりんかい線に乗って、大崎駅でJR山手線に乗り換えて目黒駅へ向かった。さて、ぼくがこの日向かった二件目の新年会とは何の集まりだったのでしょうか。みなさん気になるところだと思いますが、もう3,000字を超えているので真相は次回ということで。別に引っ張っているわけではないんですよ!(ぼくの人生に引っ張るべき出来事なんてない!)

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