猜疑心が強く疑心暗鬼という「鬼」にとり憑かれてしまっているからだ。

『ソーシャルメディアは、もはや社会になくてはならない存在となっていますが、日本ではネット空間は、あくまでバーチャルなものと捉える傾向が顕著です。普段は大人しいのに、ネット空間では性格が豹変ひょうへんし、他人に罵詈ばり雑言を浴びせる人が多いことからもそれは分かりますが、こうしたネット空間に対する認識というのは、実は生産性に大きな影響を与えているのです。ネット空間でのふるまいとリアルな世界でのふるまいは実は裏でリンクしており、リアル社会で他人を信用できない人は、ネット社会でもやはり他人を信用することができません。~日本におけるソーシャルメディアの利用が閲覧に偏っているのだとすると、ネット空間上で飛び交う情報は、少数の人が発信したものということになり、全体像を示していない可能性が出てきます。ネット空間上の情報や言論に偏りがあるという話は、多くの利用者が気付いていることだと思いますが、この調査結果はそれを裏付ける材料のひとつといってよいでしょう。日本の場合、発信する人が少数ということに加え、ネット上の情報の多くが、すでに存在している情報のコピーであるケースも多く、同じ情報が拡散されることでさらに偏りが生じている可能性が否定できません。情報に偏りがあり、その情報源が独立していない場合、いわゆる「集合知」が成立しないというリスクが生じてきます。集合知というのは、簡単にいってしまうと「みんなの意見は正しい」という考え方です。~しかしながら、「みんなの意見は正しい」という命題が成立するためには、①意見の多様性、②意見の独立性、③意見の分散性、④意見の集約性、という4つの条件を満たしている必要があります。つまり、多様な価値観を持った人が集まり、皆が他人に左右されず、独自の情報源を使って自分の考えを表明した結果を集約すれば、必然的に正しい答えが得られるという理屈です。その点からすると、日本のネット空間は、発信者の数が少なく、情報に偏りがあるため、情報の信頼性が低下してしまうことになります。~「SNSで知り合う人のほとんどは信用できる」と回答した日本人はわずか12.9%ですが、米国は64.4%、英国は68.3%に達します。逆に日本人の87.1%は「あまり信用できない」「信用できない」と答えており、ネット空間で知り合う相手に対して信用していないという現実が浮き彫りになっています。実は、他人を信用できないという話はネット空間に特有のものではありません。ネットかリアルかは区別せず「ほとんどの人は信用できる」と回答した日本人はわずか33.7%しかおらず、その割合は各国の半分となっています。つまり日本人は基本的に他人を信用しておらず、ネット空間ではその傾向がさらに顕著になっているにすぎないわけです。日本人は猜疑心さいぎしんが強く、他人を信用しないという話は、海外でビジネスをした経験のある人なら、実感として理解できるのではないでしょうか。米国は契約社会といわれていますが、それは一部のカルチャーを極端に解釈したものにすぎません。米国では意外と信用ベースで話が進むことが多く、後になって金銭的に揉もめることもそれほど多くありません。中国に至っては、いったん信頼関係ができると、ここまで信用してよいのだろうかというくらいまで、相手から信用してもらえることすらあります。日本人や日本社会がグローバル化できないのは、英語などの問題ではなく、他人を信用できないという性格が大きく影響している可能性があります。経済活動において、相手を信用できないことによって生じるコストは膨大な金額になりますから、日本は多くの富を失っているのです。信用できない相手と取引するリスクを軽減するためには、多額の調査費用をかけて相手を調べたり、すべての案件で契約書を作成するといった作業が必要となり、時間とコストを浪費します。これを回避するには、よく知っている相手だけに取引を絞り、狭い範囲で顔を合わせて経済活動するしか方法がなくなってしまうでしょう。日本企業の中には、昔からの取引先以外とは取引しない、資本関係のある下請け会社にしか発注しないというところも多いのですが、こうした商慣習というのは、よく知った相手とだけ取引することでリスクを回避しているわけです。しかしながら、特定の相手とだけ取引を続けていると、馴れ合いが生じやすいですし、何より、もっと好条件で取引できる相手がいたとしても、それを排除するメカニズムが働いてしまいます。こうした環境では十分な市場原理が働かず、結局は多大なコストを支払う結果となるのです。先ほどテレワークについて言及しましたが、信用できない性格が、日本においてテレワークが浸透しない原因のひとつになっている可能性は十分にあるでしょう。血のにじむようなコスト削減努力を行っても、儲かった実感が得られないことの背景には、こうした見えないコストが関係しているということを私たちはもっと認識するべきだと筆者は考えます。これからの時代は、否が応でもビジネスのネット化がさらに進みます。ネットという広域プラットフォームを十分に活用するためには、まずリアルな世界において、他人を信用する「能力」が必要となります。信用しつつも過度に依存しないという振る舞い方が身に付けば、ネット空間が異質なものにはならず、ビジネスのネット化もスムーズになるでしょう。』

自分にとって都合が良いECサイトでの買物やネットバンクでの振込は使うのに「ネットは個人情報の流出が怖いから主に閲覧しているだけ」というヒトがヒノモトに多いのは猜疑心が強く疑心暗鬼という「鬼」にとり憑かれてしまっているからだ。

なぜ日本のネット空間は「間違った情報」が欧米より多いのか
積極的に情報発信をする人が少ない
https://president.jp/articles/-/33239

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?