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【耳読note】『黄色い家』川上未映子

2024年2月 「第75回読売文学賞」(小説賞)受賞作品
2024年 「本屋大賞第6位受賞」作品

(あらすじ)
水商売で働くシングルマザーと暮らす高校生の花(はな)。
生活は苦しく、アルバイトでためたお金を母親の交際相手に盗まれたことをきっかけに、家を出て母親の友人である黄美子(きみこ)と暮らすようになる。

2人で始めたスナック「れもん」は花の生きる希望となり、そこに同世代の女友達2人欄(らん)と桃子(ももこ)も加わる。蘭と桃子も貧困や愛情を注がれずに育った女の子。やがて幸運を呼ぶと思い込む「黄色い家」で4人の共同生活が始まる。

まじめに働くことを花に教えてくれていたスナック「れもん」は火事で焼失してしまう。

4人で生活をするために、お金を稼ぐために、花は詐欺まがいの一役を仕事として担うことになり、まわりも巻き込まれていく…。

(感想・ネタバレ)
貧しい中でも普通の考えを持っていた花が、「貧困」から抜け出せず、周りにいる人の影響もうけて、詐欺の「出し子」に手を染めてしまう。その心の動揺が良く伝わってきた。

詐欺への加担は絶対に悪いことだけれども、育った家庭環境や、まわりの環境で、簡単にその世界に入ってしまうのだなと、また一度入ると抜け出せなくなってしまうのだなとも思った。

カード詐欺の手口も巧妙で、その手法なども良く描かれていて、作者の川上未映子さんは良く取材したのだとも感じた。

青少年が詐欺に加担して非行に走り、自らの行為を悪いとも思わないのは、むしろまわいにいる大人のせいではないか。青少年を利用している。格差社会が無くならない限り、この手の特殊詐欺は無くならないのかとも思った。

花の変貌ぶりに心が奪われ、また後半のストーリーの展開に聴き入った。

ちょっと重たい物語であったが、花は悪い心を持った女の子ではない。黄美子さんや琴美さんが好きで、人のことを信じられる女の子だ。「黄色い家」での「共同生活」にこだわりすぎたのだ。

どん底まで落ちた花だが、ラストシーンでは何か心落ち落ち着くものを感じた。




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