失敗学のすすめ
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さて本日は【失敗して落ち込んでいる方必読】の明日の話題になる書籍Vol.4を紹介いたします。
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『失敗学のすすめ 畑村洋太郎 講談社文庫』
1.概要
失敗から学ぶことが重要だと説いた本。
本書によると、失敗には良い失敗(未知、新しい体験でのもの)と悪い失敗(人為的な不注意、怠慢によるもの)があって、悪い失敗を防ぎ、良い失敗から学ぶことの意味が身に染みる内容になっています。
▼本の目次
第1章 失敗とは何か
第2章 失敗の種類と特徴
第3章 失敗情報の伝わり方・伝え方
第4章 全体を理解する
第5章 失敗こそが想像を生む
第6章 失敗を立体的にとらえる
第7章 致命的な失敗をなくす
第8章 失敗を生かすシステム作り
2.失敗の分類
失敗は下記の10個に細分化することができます。
仕事やプライベートで何か失敗した時に、その失敗の属性は何なのかを細分化し、どうすれば失敗を少なくできるのかを考えることができます。
▼無知
→「こうすれば失敗が防げる」と解決策や予防策が分かっているにも関わらず、本人の勉強不足や無知によって起こる失敗。
▼不注意
→人為的な不注意によるもの。注意力不足、過労や寝不足等も要注意。
▼手順の不順守
→しかるべき手順を守らなかったために起こる失敗。
▼誤判断
→状況を正しく理解できなかったために起こるミス。判断ミスによる失敗。
▼調査と検討の不足
→判断材料の不足や検討不足によって起こる失敗。
▼制約条件の変化
→事前に想定した条件が変化してしまうことによって起こる失敗。
▼企画不良
→企画そのものに問題があることによって起こる失敗。
▼価値観不良
→自分の価値観が周囲と違うことによって起こる失敗。「俺はこうやって上手くやってきた」など、自分の過去の成功例に頼って失敗してしまうケースもこれ。
▼組織運営不良
→物事を実行する組織自体が上手くいっていないために起こる失敗。
▼未知
→前例のない新しい体験で、誰もが新しく対応を迫られて失敗してしまうケース。この失敗はとても価値のあるものであり、未知の失敗から学ぶことで、新しい発見がある。
3.失敗の特性
また、失敗という情報は、受け継がれるごとに減衰し、隠され、単純化し、利害によって内容を変えられ、ローカル化され、神話化されやすい特性をもっています。
周りに伝わりにくく、後に生かされないんですね。
もったいないです。
失敗を後に活かすために、失敗情報を管理して、知識化するフォーマット、手順が本書で提案されています。
失敗になりうる事象の発生→ 経過→原因→対処→総括→記述→知識化→記録→伝達
この順に失敗情報を知識化するのが良く、この順は人間が物事を理解する思考パターンに沿っているそうです。
例: 期日に納品できなかった
事象:
取引先から制作を依頼された宣伝用のビデオを、納品を約束した期日までに届けられなかった。
経過:
A社から小売店向けに新商品を説明するビデオの制作を依頼された。
他にも仕事が多々入っていたが、なにぶんはじめての依頼だったので、将来の取引拡大を考えてある程度の無理は承知で受けた。
無理といっても制作スケジュールの調整で十分対応できる範囲内に思えたが、別の得意先のB社の仕事で思わぬトラブルが発生。
担当者がそちらに対応にかり出されてしまい、この時間的にロスがひびいてA社との約束の日までに間に合わず、事情を話して1週間遅れでの納入で納得してもらった。
原因:
B社は最も大事な得意先で、対応を間違えてもしも以降の仕事を切られることになると会社にとって致命的である。
社内的には、すべての仕事においてB社が優先されるにもかかわらず、末永く付き合っていく取引先になってもらいたいという気持ちから、ついA社から出された無理な条件での注文をそのまま受けたことが間違いだった。
対処:
A社の担当者、担当役員のもとへ直接出向いても心からお詫びをし、社内の上司とも相談して料金を割り引くことで納得してもらった。
なお、ケガの功名というべきか、このトラブルをきっかけにA社の担当者とは懇意になれた。
総括:
どんな事情であれ、納期に遅れたことは許されないことである。
一方、得意先のB社からの仕事によって成り立っている会社で、それ以外からの注文を無理なスケジュールで処理することは難しい。
短期間で仕上げてA社からの評価を高めようとしたとはいえ、後先のことを考えずに無理なスケジュールを安易に承諾したことは間違いだった。
知識化:
無理な注文をこなして取引先から評価されるには、必ず約束を守らなければならない。
急なトラブルにも対応できるように、スケジュール調整には細心の注意を払うべきである。
また、クレーム処理はとにかく誠実な対応が一番である。運が良ければ、それがきっかけで取引先といい関係を結ぶことができる可能性もある。
そして、記録、伝達に。
このように失敗した当事者の感じたこと、考えたことを主観的な情報をそのまま記載することが大切で、失敗情報は知識化しないと伝わらないそうです。
上記のようなフォーマットを生かしデータベース化することが必要になります。
5.最後に
日本には失敗が恥じだという文化があり、失敗情報を共有するシステムがありません。日本企業が失敗すると、責任がどこにあるかを追求しがちです。
しかし、本当に大切なことは失敗の責任を追求することではなく、今後、同じような失敗をしないようにすることであり、
アメリカではすでに失敗を批判せず、次に生かすシステム、文化があります。
また、本書は上記以外にもハインリッヒの法則、局所最適・全体最悪、そして組織についても言及していて、学ぶことが非常に多いです。
そんな本書は明日の話題になること間違いなしでしょう。
こちらからは以上です。
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