あなたとはもっと椅子の多い部屋で出会いたかった

椅子、少なくなってきたね、、俺たち別れよっか


なんで?確かにあなたか私が座れば、この椅子取りゲームは終わるけれど、音楽が止まっても座らないという選択肢があるじゃない?


椅子のネジが緩んでるね、、俺たち、別れよっか


だからなんで!?なんでよ!?なんでそんなに別れたがるの!?


俺かお前が座れば、この恋はもうおしまいだ


そんなこと言わないでよ、ゲームの中で愛を育んできたじゃない!


お前みたいな人に座られたら椅子もきっと喜ぶと思う


わかった、私があなたの椅子になる、それでいいでしょ?


人間椅子で椅子取りゲームか…懐かしいな


…別の女に座ったことがあるのね


ああ、激しく座ってしまったよ…

回想シーン

ねぇ、目をつぶって、座ってみて、残念、あなたが今座ってるのは私ですぅ

ははは、君、笑えるねえ


しっ、誰か来る…!


誰かって、この部屋には俺たち二人だけしかいないだろう


静かに…!あなたは椅子の下に隠れて


いやあ、実に素晴らしい恋愛ごっこだ、モニターでずっと見ていました


あなたがこのゲームの主催者ね…


そろそろ音楽を流してもいいかな?


さぁ、どうでしょうね…


流すかどうかは私が決めることです


何を流す気かしら?


ポチっとな


ねぇ、どっかに置いてきたような
事が一つ二つ浮いているけど
ねぇ、ちゃんと拾っておこう
はじけて忘れてしまう前に

vaundy「踊り子」


これは…私たちの思い出の曲…!


おい嘘だろ…最後にこの曲が流れるなんて、これは俺たちの、思い出の曲じゃないか…!


今、私がそう言ったのよ


そうか…


おやおや、そんなところに隠れていたんですか?


くそっ…!見つかった…!


バカな彼にもわかるように説明しましょう、1分も立たないうちにこの曲は止まります、それも、急に


急に、なの…!?


急に、だと…!?


あなたたちはルールに従って残りの椅子を奪い合わなければならない、残された椅子はあと1つ、せいぜい頑張ってください、ヒヒヒヒヒ…


ねえ、もう一度考え直して、二人とも座らなければ曲が終わってもゲームは終わらない、私たちは別れなくて済むのよ


とりあえず歩き回ろう


なんで?


いいから早く歩いてくれ、でないと一周回って背中からぶつかるぞ


ひどい…!…ねえ、涙で椅子が見えないよ


俺だって泣きたいよ、でもこれは、仕方がないことだろ!


ねぇ、この椅子、私たちで育てない?


なにをバカなこと言ってるんだ!早く歩け!背中からぶつかるぞ!


わかった、やっぱり私に座ろう?


ダメだ、ルールを破ったら家族に何があるかわからない…


あなた既婚者だったの…!?


とぅるるる とぅるるる とぅるる


誤魔化さないで!あなた、私を騙したのね!


とぅるるる とぅるるる とぅるる


ねぇ!


悪かった、その代わり俺が椅子になる、俺に座れ


嫌よ!私が椅子になる!私という椅子に座らないと、きっとあなたは後悔するわよ!


ヒヒ、なにをしているんですか?あなたたち、バカみたいに四つん這いになって


主催者…!


モニターで見てますので、早く歩き回ってください、では、ヒヒヒヒヒ…


もう歩き回るしかない、これ以上あいつに逆らったら


あなたの家族、道連れにしちゃおうかしら?


バカな真似はよせ、早く立ち上がって歩き回れ


あーあ、こんな椅子、壊れちゃえばいいのに…


おい、なにをする気だ、まさか、壊す気か、やめろ!


ん……!ん……!硬い…!全然壊れない…!


ちゃんと女の子だから力がなくて良かった…


時代に乗って僕たちは
変わらず愛に生きるだろう
僕らが散って残るのは
変わらぬ愛の歌なんだろうな
らーらーらーららららー…

赤パーマの人「踊り子」


え!?曲が終わった…?


ヤバい、座らなきゃ!


ドシン…!


おやおや、尻と尻が半々で乗っている、これまた面白くなってきましたね、ヒヒヒヒヒ


私たち、同じ椅子に腰かけちゃったね


ははは、なんでいつもこうなるんだろうな


ヘラヘラしながら座ってる、心では泣いているのに


泣いてなんかいないよ


いいや、泣いている、あなたは私との別れをすごく惜しんでいる


なんで、そう思うんだ?


体の相性が気が狂うほど良かったから


…ご名答だよ、ははは


乾いた笑いね


どちらかが片方を押し退けて座ればこのゲームは終わりだ


力の強い男の方が圧倒的に有利ね


次会ったらお前と二人でベンチに座りたい 
 

そうね、また会いましょう、今度は海の見えるベンチで…
 

約束する、何年かかっても2人で座れるベンチを探すよ
 

あれ……?嘘でしょ…あなた、目から…
 

おい、信じられねえよ…!こんなことってあるのかよ…!俺の目から…!俺の目から…!椅子が溢れ出てるよ…!!!
 

これは、確かに椅子よ!よくわからないけど…でもすごい!これだけ椅子があれば、何回、曲を流されても平気だわ!
 

やった!これで俺たち二人は永遠に椅子に座れるぞ…!
 


あれ……?この椅子って
 

俺が初めてお前の家に行ったとき、名残惜しそうにお前が捨てていた椅子だ…!
 

私が幼少の頃から使ってたおばあちゃんからもらった大事な椅子よ!

回想シーン

この椅子、私好き

そうかい、気に入ってくれてよかったよ

私、いつか職人になって、絶対におばあちゃんが座れない椅子を作ってやるんだから

なんでそんなひどいことを言うんだい?


そうか、俺の記憶にある椅子が涙の代わりに俺の目から出てきたんだ
 

まさかメモリーアイ(記憶の眼球)の持ち主とは、こりゃ一本取られましたわ、ヒヒヒヒヒ
 

椅子のこと、覚えていてくれたんだ…嬉しい


 
 
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よかったの?奥さんと別れて
 

いいんだ、あいつには尻に敷かれてばかりだったから、座られる人生より座る人生を選びたかったんだ
 

実際、今座ってるしね
 

ああ、とてもいいベンチだ、そして海もきれいだ
 

見つけてくれてありがとう
 

いいんだ、お前には迷惑をかけた
 

そうだ、今度私たちで椅子作りしない? 
 

椅子作りか、子作りの前にか?
 

バカ、もうやめてよ~
 

あの時の椅子より、俺のは硬いぞ~
 

やめてってば~


ヒヒヒヒヒ
ヒヒ
ヒヒヒヒヒ
ヒヒヒヒヒ
ヒヒ
ヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒ
ごめんなさい
ヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒヒヒヒヒ
いや、失礼
ヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
笑いが止まらなくて
ヒヒヒヒヒヒヒ、ヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒ、ヒヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ…

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!



おわり

小さい頃からお金をもらうことが好きでした