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Dear...

 高校生のころ、授業中に友達と手紙のやり取りをした。Dearで書き始め、Fromで締めくくる手紙を、リボンの形やハートの形に折りたたみ、こっそり友達に回した。手紙の間にプリクラを挟んだりして。携帯も持ってたけど、メールではなく手書きのやり取りが楽しかった。もう二度と見たくないほど痛々しく、恥ずかしいことを書いていたと思う。

桜井亜美さんの「サーフ・スプラッシュ」を読みながら、ちぎったノートに書かれた、友達の小さな丸文字を思い出した。1999年に出されたこの本は、二人の女子高生の手紙のやり取りだけで物語が進む。家にも学校にも居場所を見い出せない二人の毎日は、一生懸命なんだけど、あまりにも刹那的で、危うくて、読んでいて切ない。

この本の巻末に、当時18歳だった竹内結子さんが解説を書いている。高校を卒業して間もない当時の竹内結子さんが、家庭が崩壊している主人公に自分を重ね、この本を自分の物語として読んでいたことが衝撃的だった。

“帰る家は暖かい家庭そのものに見えたが、カギのかかった空間がいくつもあるような場所だった(中略)なじめない自分に対する嫌悪と、理由のよく分からない疎外感をいつも抱いていた”

この物語は、とても悲しい結末を迎える。主人公は、一番あってはならない道を選んでしまう。

高校時代、友達への手紙に書いたのは家族には言えないようなこと、言いたくないこと。この本の主人公たちとは、取り巻く環境も悩みも全然違う高校時代だったけど、同じように友達にぶちまけることで危なっかしい10代を支え合った友達のことを思い出した。

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