キツネじゃない!? 稲荷(おいなり)さんてにゃに?
お稲荷さんってにゃに?
答えは、神様。でもどんな神様なの?って話をしていきます。まず日本にある神社の総数は8万社。そのなかでもっとも多いのが、八幡様を祀る神社。八幡とは、日本古来の「八百万の神」という概念から来ています。その神々を祀るのが八幡信仰。この八幡を奉る神社である八幡神社が日本で最も多く、ついで伊勢信仰、3番めが天神信仰(天満宮、天神社、北野神社)、4番めが稲荷信仰(稲荷神社、宇賀神社、稲荷社)(※1)。
八幡神は、元来は大漁旗を意味する海神で、神社では誉田別尊(ほんだわけのみこと)、あるいは応神天皇(おうじんてんのう)の祭神名で祀られています。大分県の宇佐氏が崇敬した地方神でしたが、ご神託を通じて第15代天皇である応神天皇の化身とされ、土着的な神と天皇のご神霊が結びついた特別な性格を持ちあわせてます。八幡神は、571年に宇佐の地にはじめて示顕(じげん:示しあらわすこと)したと伝えられており、宇佐神宮(大分県宇佐市)は八幡宮の総本宮です。石清水八幡宮(京都府八幡市)、筥崎宮(はこざきぐう、福岡県福岡市)または鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)をあわせて、日本三大八幡宮(4つだけど)とされています。
では、稲荷とは? 稲荷は、文字通り、稲の豊穣を守る神様です。「稲(い)生(な)り」がその語源。稲のような食物を司る神を古くは、「御饌津神(みけつがみ)」と呼んでいました。この神名に「三狐神(みけつがみ)」の字をあてたので、いつしかキツネが稲荷神の使いになったという説があります。そのほかにも、まずそもそも昔の日本人は、キツネを神聖な動物として扱っていました。その理由が、農事の始まる春先から秋の収穫期にかけて、キツネが里に降りてきて姿を現し、収穫が終わると山に帰り、姿を消したことから、農耕を見守る存在として神聖し始めたからでした。そのほかにも、キツネが穀物を食べる野ネズミを襲うので、狐が稲の守り神になったともいう説もあったりします。
キツネは神様じゃなくて、その使い
いずれにしろ、ではキツネが神様か?というと神聖視はしていたものの、キツネは神様の眷属(けんぞく)として扱われました。眷属(けんぞく)とは、「神様の使者」という意味です。
稲荷神社の総本宮
稲荷神社の総本宮は、京都市伏見区にある伏見稲荷大社。総本宮とは、日本の新教は心霊を他に分けて祀る風習があり、その大元になっているところ。総本社とも言います。
伏見の地には、2000年以上昔は狩猟民たちが暮らしていました。そこへ朝鮮半島から稲作の先端技術をもった秦(はた)という人たちが入植してきます。伏見に暮らしていた狩猟民たちは、山の狼(おおかみ)を神の使いとしていましたが、稲作の定着とともに狼は山に追いやられ、代わりにキツネが稲の神の使いとなったそうです(狼、かわいそう)。オオカミ信仰(今も、埼玉県秩父郡の三峰神社(みつみねじんじゃ)や東京奥多摩の大嶽神社(おおだけじんじゃ)などが残る)はかつて日本各地にあったそうです。オオカミは人間を襲うこともある怖い動物でしたが、同時に農作物などを食い荒らす野生動物も襲うので、神聖視されるようになったそうです。しかし、稲作が普及し、それにともってオオカミ信仰はキツネを眷属とする稲荷信仰に取って代わっていきました。
お稲荷さんの正式名称
お稲荷さんの正式名称は、「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」。
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)とも呼ばれます。日本神話に登場する女神で、『古事記』では宇迦之御魂神、『日本書紀』では倉稲魂命と表記されています。名前の「宇迦」は、穀物・食物の意味。なので、宇迦之御魂神は穀物の神です。全国の稲荷神社には、この宇迦之御魂大神の他に保食神(うけもちのかみ)、御食津神(みけつのかみ)などが御祭神として祀られていることもあります。いずれの神様も「うか」、「うけ」、「け」という、食べ物を意味する名前を持つ神様です。伏見稲荷大社の主祭神です。稲荷主神としてウカノミタマの名前が文献に登場するのは室町時代以降。
キツネが咥えているもの
全国の稲荷神社に鎮座するキツネの像は、口に何かを咥えています。咥えているものは、稲穂、鍵、巻物、宝珠など。これらが意味するものは、稲穂は、五穀豊穣(ところで五穀とは、米・麦・あわ・きび・豆)。巻物は、稲荷の秘法を表すシンボルや神仏習合※時代に用いられていた「経文(荼枳尼天秘法/荼吉尼教典)」、または知恵の象徴です。宝珠は、穀霊の象徴、稲荷大神の徳光を表したもの、または稲荷大神が秘める霊妙な神徳を象徴したもの。鍵は、稲荷大神の宝蔵を開く秘鍵や米倉の鍵を象徴しており、富貴、豊穣、諸願成就を表しています。
稲荷寿司(いなりずし)の語源
稲荷寿司(いなりずし)は、ご存知、甘辛く煮た油揚げの中に、酢飯を詰めたお寿司です。「お稲荷さん」「お稲荷」「いなり」などとも呼ばれています。この名前の由来は、諸説はあるものの、稲荷神社の稲荷神が有力な説。稲荷神は、前述の通り豊作の神なので、俵型であることが稲作に関連しています。また稲荷神(または狐?)にお供えしていた油揚げを使うことにも由来している説もあります。その発祥は、日本三大稲荷とも呼ばれる愛知県の豊川稲荷の門前町という説があります。
豊川稲荷では江戸時代後半に「あぶらげずし」が考え出されたといわれています。
まとめ
こうしてみてみると、日本の各地にある神社、何系の神様か、キツネがいたなら、何かを咥えていないか、などを確かめたくなってくるのではないでしょうか。日本の信仰は、なかなかおもしろく掘っていくのが楽しそうです。
参照
※1
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?