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「ロココ様式」って一体何か、知っていますか?

ビジネスに使えるデザインの話

「人生とビジネスに役立つデザインの話」マガジン。グラフィックデザイン、書体から建築までビジネスに使えるデザインの話を扱います。


「ロココ調」の「ロココ」は美術様式

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派手でサロン向きのロココ

「ロココ調」……聞き流して、見流してきたんですが、え?何?それと突然、その正体が知りたくなったりしませんか?「いや、なんとなくは知っているんですよ」と思うも、「なんとなく」というベールは剥がせない。ということで、剥がしてみることにしました。

ロココを語るのが、少し面倒な理由

ロココを理解するには、美術史、建築の歴史などを流れの理解も必要になってきます。文脈のなかで「このあたりがロココ」という具合に全体の理解も必要になってきます。「新古典主義」を理解するために「古典主義」を知る必要があるように。しかし、ちょっと面倒なので、全体は後回し。まずは、ロココそのものを不完全で良いので、ざっくりで良いので知っていこうと思います。

ロココとはなにかのざっくりしたまとめ

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ロココは、元来、ロカイユ様式から来た言葉で、もともとは貝殻模様の岩組(いわぐみ)から来ていますが、それが植物を彷彿させる非対称な曲線を多用した装飾を意味するものとなりました。バロック様式に一部とも言われていますが、バロックが豪壮・華麗なのに対して、ロココは、優美・繊細で、荘厳なバロックに飽きた宮廷が、サロンのための内装装飾として、好んで広まったのが、ロココ様式。音楽で言えば、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトその後、その装飾過多ぶりを反省するかのように、ロココという言葉は、蔑称ぎみに使われましたが、しばらくして、こういった様式を総称するものとなりました。ロココのまえにバロックがあり、あとに新古典主義があります。ロココをイメージで捉えるなら、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』を観るのが良さそうです。

観ての通り、水色とピンク。可愛らしい派手さ。ソフィア・コッポラが好きそうなテーマともいえます。

ロココ

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「ポンパドゥール夫人の肖像」(1755年、ラ・トゥール作)

ロココ(Rococo)とは美術様式。これが絵画、家具、建築、陶器、はたまた音楽にまで及びます。

ロココの語源は、ロカイユ(rocaille)。ロカイユとは、「岩」の意味で、17世紀の美術様式、バロック時代のグロット(庭園洞窟)の特徴的な貝殻で装飾された岩組を意味した言葉でした。それが転じて、1730年代に流行した、貝殻の曲線を多用したインテリア装飾をロカイユ装飾(ロカイユ模様)と呼ぶようになりました。ロカイユ装飾は、植物の葉のような複雑な曲線を用いた特有のもの。

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Floral and acanthus leaf design by Alexis Peyrotte (1750)

ロココの時代

18世紀

18世紀、ルイ15世のフランス宮廷から始まり、ヨーロッパの他国にも伝えられ、流行しました。ロココの前にバロックがあり、ロココの後に、新古典主義があります。
新古典主義の時代(18世紀末~)になって、振り返るようにして、前時代の装飾様式について「退廃的」とし、蔑称的に「ロココ」と使われましたが、その後、時代一般の美術・文化の傾向を指す用語として、広く使われるようになりました。

豪壮・華麗なバロックに対して、優美・繊細なロココ

と言われています。両者の境界は必ずしも明確ではなく、ロココは、バロックの一種とも考えられています。

ポンパドゥール夫人(1721年 - 1764年)を中心とするサロン文化の最盛期にロココ様式は流行。デュ・バリー夫人(1743年 - 1793年)の時代まで続きます。ルイ16世(在位1774年 - 1792年)が即位した頃から、装飾を抑え、直線と均衡を重んじるルイ16世様式(広義の新古典主義様式)に次第に取って代われていきます。それでも、ロココ的な美意識や雰囲気は、宮廷が実権を失う1789年のフランス革命まで継続していきます。スウェーデンでは、1771年に即位したグスタフ3世の治世を「ロココの時代」と称しています。スウェーデンのロココ様式の流行は、1792年にグスタフ3世が暗殺されるまで続きました。

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デュ・バリー夫人( Madame du Barry,)(1743年 - 1793年)

建築

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ロココ建築(英語: Rococo architecture)。主に宮廷建築で用いられた後期バロック建築の傾向で、独立した建築様式ではありません。ヨーロッパのバロック建築最盛期の後、18世紀フランスに始まり、欧州各国に伝わっていきました。

ロココ様式は、植物の葉のような自由な曲線を複雑・優美に配したもので、そうした装飾が天井周りに多く使われ、壁と天井の境界が明確でなくなるのがロココの特徴です大規模・重厚なバロック宮殿よりは、小規模なサロンを好む繊細な趣味が基調にあります。

室内装飾が主で、独自の様式というよりは、バロック建築の一変形とも見られています。

ロココ時代の特徴は、室内にロココの名の由来となった「ロカイユ」という独特の装飾が全体にちりばめられていること。特徴は、その優雅で軽妙で官能的な雰囲気すらあるその形。一見、植物の蔦、骨、貝殻、サンゴ、しぶきをあげる波頭、タツノオトシゴなどに似ていますが、実は何かを描写しているわけではないただの非対称形の抽象彫刻。この室内装飾の要素のひとつが、ロココのスタイルの名称となります。バロック様式との違いはこの装飾方法。したがって、バロック末期の室内意匠に限定して用いるべきだとする考えもあります。

ロココという語は元来蔑称であり、同義的な意味で「ルイ15世様式」と呼ぶことが多くあります。

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ルイ15世(フランス王)(在位:1715年9月1日 - 1774年5月10日)

ロカイユ装飾の素材は、木材やストゥッコ。ストゥッコ(stucco)とは、吹付材の一種で、セメント系、けい酸質系、合成樹脂系などの厚付けの仕上塗材を外壁表面などに吹き付け、コテやローラーなどで表面に凹凸模様をつける手法のこと。重厚な雰囲気をもち、外壁・内壁・天井などの仕上げに用いられるものです。このストゥッコなどでこの流線的で不規則に湾曲したロカイユ装飾が形作られています。

こうしたロカイユ装飾が主流になる前は、ゴシックの古典装飾がほとんどであったが、その堅苦しい古典装飾に飽きた人々は、ロカイユ装飾の曲線の斬新さを歓迎しました。

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サンスーシ宮殿(独: Schloss Sanssouci)の「ヴォルテールの部屋」
Deutsche Fotothek‎, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7944180による


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エカテリーナ宮殿
Stan Shebs, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=65095による


陶磁器

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マイセン陶磁(ドイツ)


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セーヴルの陶器
I, Sailko, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2672758による

セーヴルの陶器(フランス)。ポンパドゥール夫人の支援により発達したもの。

絵画

1725年に第1回が開催されるアカデミーのサロン(サロン・ド・パリ)が定期的に開催され、美術品が広く鑑賞されるようになります。アントワーヌ・ヴァトー、フランソワ・ブーシェ(1703年9月29日 - 1770年5月30日)、ジャン・オノレ・フラゴナールなどの画家が知られています。ヴァトーはロココ前期(1710-20年代)、ブーシェはロココ盛期(1730-50年代)、フラゴナールはロココ後期(1760-80年代)の代表的な画家とされています。

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ブーシェ『昼食』1739年、ルーヴル美術館


音楽

フランスのF.クープラン、ラモーら、イタリア(スペイン)のD.スカルラッティ、オーストリアのモーツァルトらに見られる装飾音符を多用した軽快・優美・繊細な音楽様式を音楽におけるロココ様式と呼んでいます。バロック時代後期から古典派まで様々な形で現れ、別名ギャラント様式ともいいます。
モーツァルトのピアノソナタのほか、フルートとハープの協奏曲、初期のピアノ協奏曲、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』などが好例。

現代にみるロココ

ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』に、現代に再現されたロココスタイルを観ることができます。


美術様式の文脈

初期キリスト教美術 2世紀末から3世紀初頭
メロヴィング朝 5世紀末から8世紀
カロリング朝 8世紀末から10世紀
 オットー朝 10世紀から11世紀
ロマネスク 10世紀末から12世紀
ゴシック 12世紀から15世紀
国際ゴシック 14世紀後半から15世紀前半
初期フランドル派 15世紀から16世紀
イタリア・ルネサンス 13世紀末から16世紀半ば
盛期ルネサンス 15世紀半ばから16世紀前半(1450年〜1527年)
北方ルネサンス 15世紀後半から16世紀末
マニエリスム 16世紀から19世紀
グロテスク装飾 16世紀から18世紀
フォンテーヌブロー派 16世紀末
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バロック 17世紀
カラヴァジェスキ 17世紀
古典主義 17世紀
スペイン黄金時代美術 17世紀
 オランダ黄金時代絵画 17世紀
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ロココ 18世紀
シノワズリ 18世紀
ピクチャレスク 18世紀
新古典主義 18世紀
ロマン主義 18世紀
ゴシック・リヴァイヴァル 18世紀
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歴史主義 19世紀
写実主義 19世紀
ビーダーマイヤー 19世紀
ハドソン・リバー派 19世紀
バルビゾン派 19世紀
マッキア派 19世紀
移動派 19世紀
トーナリズム 19世紀
ラファエル前派 19世紀
唯美主義 19世紀
ヴィクトリア朝絵画 19世紀
グリュンダーツァイト 19世紀
ジャポニスム 19世紀
印象派 19世紀
ポスト印象派 19世紀
新印象派 19世紀
クロワゾニスム- 綜合主義(ポン=タヴァン派) 19世紀
ナビ派 19世紀
世紀末芸術 19世紀
象徴主義(ロシア象徴主義) 19世紀
アーツ・アンド・クラフツ運動 19世紀
アール・ヌーヴォー 19世紀
分離派 19世紀
素朴派 19世紀
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フォーヴィスム 20世紀前半
キュビスム 20世紀前半
ダダイスム 20世紀前半
未来派 20世紀前半
ノヴェチェント 20世紀前半
イマジズム 20世紀前半
ヴォーティシズム 20世紀前半
ブリュッケ 20世紀前半
表現主義 20世紀前半
新即物主義 20世紀前半
ミュンヘン新芸術家協会 20世紀前半
青騎士 20世紀前半
ネオ・フォーヴィスム 20世紀前半
プレシジョニズム 20世紀前半
ロシア・アヴァンギャルド 20世紀前半
新造形主義 20世紀前半
デ・ステイル 20世紀前半
ピュリスム 20世紀前半
バウハウス 20世紀前半
アール・デコ 20世紀前半
シュルレアリスム 20世紀前半
エコール・ド・パリ 20世紀前半
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レトリスム 20世紀後半
叙情的抽象 20世紀後半
アンフォルメル 20世紀後半
抽象表現主義 20世紀後半
コブラ 20世紀後半
空間主義 20世紀後半
ネオダダ 20世紀後半
カラーフィールド・ペインティング 20世紀後半
ミニマリズム BMPT 20世紀後半
ポップアート 20世紀後半
ヌーヴォー・レアリスム 20世紀後半
フルクサス 20世紀後半
コンピューターアート 20世紀後半
コンセプチュアル・アート 20世紀後半
ハプニング 20世紀後半
キネティックアート 20世紀後半
オプ・アート 20世紀後半
サイケデリック・アート 20世紀後半
ソフト・スカルプチュア 20世紀後半
ランド・アート 20世紀後半 
パフォーマンスアート 20世紀後半
システムズ・アート 20世紀後半
ビデオ・アート 20世紀後半
アルテ・ポーヴェラ 20世紀後半
インスタレーション 20世紀後半
フォトリアリズム 20世紀後半
新表現主義 20世紀後半
ローブロー 20世紀後半
アウトサイダー・アート 20世紀後半
アスキーアート 20世紀後半
バッド・ペインティング 20世紀後半
ボディアート 20世紀後半
アーティスト・ブック 20世紀後半
環境アート 20世紀後半
フェミニスト・アート 20世紀後半
ホログラフィ 20世紀後半
メール・アート 20世紀後半
ポスト・ミニマリズム 20世紀後半
プロセス・アート 20世紀後半
ロボット・アート 20世紀後半
ファンク・アート 20世紀後半
ワイルドスタイル 20世紀後半
シミュレーショニズム 20世紀後半
YBAs 20世紀後半
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メディアアート 21世紀
スタッキズム 21世紀
ネオ・フューチャリズム 21世紀
ハイパーリアリズム 21世紀
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参照






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