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翻訳者でも間違える!?よくある欧文の間違い3選

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


翻訳と欧文組版の知識は別物

わたしの会社では英語の原稿をいただいてパンフレットやウェブサイトにデザインに反映するという仕事も請け負っています。そうした仕事を通じてよく見かける「英文組版の間違い」があります。英語そのものは間違っていないのだけれど、選ぶ文字や記号の使い方が間違っているといるんです。それというのも翻訳の知識と欧文の組版は別物で、欧文の組版ルールという存在そのものが知られていないこともあるくらいです。

組版とは、もともとは活版印刷において文字を「組む」んで「版」を作る行為を指します。それが展開されて現在では「活字の組み方」ルールという意味でも使われています。

活字を印刷機上で調節する印刷工
By Deutsche Fotothek‎, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6543777

大学の教授たちでも、この欧文の組版ルールを知っている方はあまりいらっしゃらない。結果、デザインを制作する側で修正するのですが、もちろん欧文組版ルールをしらないデザイン会社も多く存在します。ということは、誰も気づかないまま、世に出てしまう欧文の組版の間違いというものが存在しています。今回は、そんな間違いのよく見かけるものを5つご紹介していきます。


1. 括弧()が全角

括弧のは英語では、ブラケット(bracket)とかパーレンシス(Parenthesis)と言います。どういうわけか翻訳されたテキストは、この括弧の部分だけ全角になっているのがよくあります。全角(ぜんかく)とは、文字の幅が半角文字2つぶんのもの。半角のゼロを2つならべると「00」となりますが、全角のゼロひとつだと「0」となり、同じゼロでも幅が違うことがわかります。
ちなみにこちらが全角の括弧「()」、そしてこちらが半角の括弧「()」。よく見るとびみょーに上下の位置も違うことがわかると思います。これは日本語には、ベースラインより下にはみ出る文字はありませんが、欧文には小文字のpやq、yなどベースラインより下にはみ出る文字があります。そのため上下の中心が日本語より下になるためです。

さて、この括弧だけ全角のテキストをコピペしてIndesignというエディトリアルデザイン用のアプリケーションのテキストボックスに流し込むとします。Wordsで原稿をもらった状態だと見た目はこうなります。

これ、Wikipediaからの原稿なんですが、たちが悪いことに括弧以外にも欧文組版としての間違いがあります。あとでもそれについてもふれます。

括弧の部分はパッと見てもあまり違和感がありません。これをIndesign上に用意したテキストボックスに流し込むと……

ピンクの部分に「その文字ありません」という表示が……

文字化けのようになっています。これはIndesignが「その文字はありません」と表示したものです。なぜならこのテキストはフォントが欧文用の書体(これはHelvetica Neue)になっているからです。Helvetica Neueには、全角の文字は用意されていません。ということでエラーになります。

ちなみに日本語では()の前後にスペースを入れませんが、欧文なら()の外側にそれぞれ半角スペースが必要です。

青い点が半角スペースの存在を示しています。

ということで括弧(パーレンシスを略して「パーレン」と呼んだりもします)は次のように欧文では扱ってください。

括弧は半角: ()
括弧の外側前後には半角スペース
例:半角スペース(for example)半角スペース
※ただし、閉じ括弧のあとにカンマ(,)やピリオド(.)が来る場合は半角スペースは不要。


2. 引用符やアポストロフィがマヌケなやつ

こちらも超絶よくあるミスなのですすが、英語の引用符、アポストロフィが、マヌケな引用符(dumb quotes)と呼ばれるものになっていることがあります。具体的に見てみましょう。

上がマヌケな引用符が使わている間違った例
下が正しい引用符。クネッとしていて向きがあります。

これは英語圏でもけっこう見かけるミスです。欧文組版の世界(狭い)では、有名なミスです。しかし冒頭でも触れましたが、これは話す、読む英語におけるミスではないんですよね。手書き文字上でのミスでもない。「表記する」英文上のミスなんです。つまり翻訳者よりもデザイナー側が扱う領域なんです。頻繁に仕事をする翻訳者さんなら共有したほうがミスが減って効率的ではありますが。しかしデザインの勉強のなかでここまで欧文組版のルールを学ぶ機会はなかなかないかもしれません。それに知られていないので細かく正しく修正しても、その価値を理解してもらいにくいかも(笑)。だからぜひ多くのかたに欧文組版ルールってあるんだよ!と知ってもらいましょう(この記事をシェアしてください!)。

途中ですが、このような欧文組版をどう学べば良いのでしょうか。より細かい専門のガイドはいくつかあるのですが、こちらの本が読みやすくわかりやすいのでおすすめです。デザイナーのみならず、欧文表記をする企業の広報の方もざっと目を通しておくとアドバンテージになることでしょう。



3.スラッシュの前後にスペースをいれてしまう

括弧と同様に日本語にもある記号は扱いが混乱しがちなんですが、欧文ではスラッシュ(/)の前後は読みにくくならないなら、基本半角スペースは入れません。

When leaving the classroom, the teacher noticed that a student had left his/her backpack.

例文はgrammarly.comより引用しました。

日本語のスラッシュ「/」の大きさになれている?こともあってから、スラッシュの前後にスペースを入れたくなるかもしれませんが、欧文ではスラッシュの前後にスペースを入れません。

まとめ

じつはまだまだ翻訳者さんでも間違えてしまうことがある欧文組版ルールの間違いがあるのですが、今回は以上3つの存在とともに「欧文組版ルールなんてものがあるんだ」ということを知っていただければと思います。

このような些細な間違いなんて重要じゃない気もすると思います。しかしたとえばビジネスで挨拶に来た方がきちっとした実績を持っていて、仕立ての良いスーツも着ているのに、ネクタイの結び方がめちゃくちゃだとしたら、「あれ、大丈夫かな?」という一抹の不安が浮かんだりしないでしょうか?些末だけれれど大事なこともあるんです。

こんな欧文組版ルールをまた機会があれば、ご紹介していきたいと思います。関連した記事は、「関連記事」で紹介しておきます。


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参照




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