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【楽園実験】ねずみのカースト制度と人間のパラダイスの末路【ユニバース25】


楽園実験とは?

wikipediaより画像引用

 1972年アメリカの動物行動学者ジョン B. カルフーンはネズミにとって天敵が全くいない、食事も無限にある「ねずみの楽園実験」を行いました。

 当時、急激な人口爆発による影響と都市計画をマウスを使ったシュミレーションを行うことで予測しようとするものでした。

楽園実験の条件

 マウスたちには「楽園」とされる環境の条件として
生物に脅威を及ぼす5つのトリガーを排除する環境をつくりました。

 その5とは

・住処から追い出される
・食糧難
・悪天候
・病気
・ネズミを襲う天敵

 です。

 実験チームは2.7mx 2.7mのスペースに巣箱を用意し、
 マウスたちに食料や水もふんだんに与えました。

 このような環境をつくり、マウスが形成される社会を観察することで、のちの人間社会がどうなっていくのかというヒントを得ようとしたのです。

 初めはオス4匹・メス4匹を楽園に放ち、実験が開始されました。


楽園実験のフェーズ『適応期』

 はじめは環境の変化についていけずに挙動不審なマウスたちでしたが、次第に環境に慣れはじめます。

 このときは特にマウス同士で争う様子もなく、のびのびと暮らしていました。

 そして104日後、新たに1匹の子マウスが生まれ、この実験開始から子マウス誕生までを『適応期』と呼ぶことにしました。


楽園実験のフェーズ『社会形成期』

 そこから楽園の子マウスたちは爆発的に増えていきます。
 20、40、80、300…。
 実験開始から1年すぎる頃には、640匹を超えていました。

 マウスたちは、家族ごとに別れ、徐々に社会を形成しはじめました。十分な居住スペースがあるにも関わらず、家族たちは集団で行動し、食事を取るときなども常に一緒に行動しはじめます。

 そして、ここで問題が起きます。

 食料や水が大量に確保されている空間にも関わらず、群れの中で【格差】が生まれたのです。

 10匹ほどのマウスの群れは、比較的穏やかに過ごしていましたが、100以上の群れではマウスたちはお互いの縄張り争いをはじめ、お互いの強さによって格差が生じてしまいました。

オスマウスたちの格差の5段階

ボスマウス…ドシンと構えて戦わず、優位な地位を築いた強いマウス。支配階級。ハーレムを作っている。

好戦マウス…好戦的な性格。地位の上がり下がりが激しいマウス。支配階級。

浮気者マウス…被支配階級。異性・同性・子供関係なく性的アピールをするマウス。穏やかで攻撃に参加することはない。

依存型マウス…被支配階級。浮気者マウスより執拗に相手を追い回すマウス。

回避型マウス…被支配階級。他のマウスに興味がなく、エサも他のマウスが寝静まった頃にひっそり取るマウス。メスに興味を持たない。

メスマウスたちの格差の2段階

マダムマウス…支配階級の配偶者とマウス。子供を健康的に育てることができる。

スラムマウス…被支配階級。弱いオスマウスに代わり、巣を守ることから攻撃的で荒々しい。子供を虐待し、ネグレクトをするネズミもいた。

 支配階級のマウスたちは大きな巣穴に居住区を持ち、被支配階級のマウスたちは、スラムのような道端などに居住区を持っていました。

 本来の自然界であれば、被支配階級は群れから出て、他の群れで新たに支配階級となりますが、この楽園の中では他に逃げ場所はありません。
 その結果、被支配階級のマウスたちが生まれることになりました。

楽園実験のフェーズ『停滞期』

 マウスたちに格差が生まれることで、マウスたちの生まれるスピードが停滞ことになりました。

 停滞の背景にはメスマウスたちの子育てがありました。

 支配階級のボスマウスの妻である家持マウスは、育児にじっくりと専念することができ、乳児の死亡率も50%ほどに落ち着いていました。

 しかし、被支配階級の妻であるスラムマウスたちは、育児だけでなくオスに代わって縄張り争いをすることになり、非常に好戦的になり、自分の子供を食べたり、襲うことが増えたのです。

 その結果、スラムマウスの子マウスの死亡率は90%にも登りました。

 そして実験開始から560日経った頃には出生率よりも死亡率の方が並行することになりました。
 スラムマウスの子供たちは、みなメスに興味がない回避型マウスとなりました。

楽園実験のフェーズ『終末期』


 実験開始から600日後、マウスの乳児死亡率は100%を超え、920日後にはメスマウスは1匹も妊娠することはなくなりました。

 実験開始から1330日、残されたのは老化したマウスたちと、回避型マウスたちのみとなりました。

 ボスマウスやノーマルマウスたちは死に絶え、争いに参加をしない回避型マウスだけが残り、彼らはケンカによる傷がいっさいないことから「ビューティフルマウス(美しきものたち)」と呼ばれることになりました。

 そして1780日後は最後のマウスが死に、楽園実験は終了しました。

 このユニバース25は、25という数字の通り、25回もの楽園実験が行われ、いずれも最後はマウスは1匹残らず死亡したようです。

   ボスマウスやマダムマウスの子供たちは生き残そうなものですが、
   充分な敷地がないと運動不足になることや、近親交配によって疾患が発生しやすくなることが死亡率増加の原因と考えられるのではないでしょうか。

 この楽園実験は正式な論文が見当たらないことから、オカルト的な都市伝説とされることもあります。

 しかし、この楽園実験の結果は、現在の私たちの人間社会の問題にも当てはまるところがいくつかあります。
   このマウスの楽園実験から、私たちが学ぶべきことはあるのでしょうか?

 最後に私たち人間の実際の楽園の末路を見てみましょう。


リアル人間の楽園【ナウル共和国】

 かつて地上の楽園とも言われたナウル共和国。
 バチカン・モナコに続き、世界で3番めに小さいこの国は、1980年頃までとても豊かな国で有名でした。

  とある潤沢な資源によって国の財政がかなり潤っていたのです。

 ナウルの繁栄を築いたのはずばり「海鳥の糞」です。

 
ナウルの島は「海鳥の糞」の上につくられ、そしてこの糞や海水・サンゴ礁でできたものが非常に稀な物質(リン酸塩)であり、
   この資源を活かすことで、一時期アメリカや日本を超す世界最大の国民一人あたりのGDPを生み出すことに成功したのです。

 この海鳥の糞でできたリン酸塩が貴重な農業用の肥料として喜ばれ、世界中で高値で売れることになりました。

 ナウル共和国は瞬く間に富裕国となり、国から毎月お金が支給されるばかりか、水道や光熱費・学費や医療費もすべて無料となったのです。

 そこで、裕福になったナウルの人々は、次第に働くことをやめてしまいます。

 そしてナウル人の代わりに働くことになったのが出稼ぎ労働者の外国人たちです。

 最終的にナウルの人々の雇用形態は、国家公務員が10%、職を持たない人が90%にもおよび、ほとんどの人々が贅沢三昧の生活を送りました。

 今では国民の肥満の割合が約90%、糖尿病患者が30%にもなる超肥満体国となっています。

楽園の終わり

 そんなナウル共和国ですが、1990年頃になると豊富なリン酸塩も就きてしまいます。

  リン酸塩がなくなる前に、とナウル政府は国を上げて不動産投資をしたものの、失敗。

 ナウルは財政難に陥り、国民たちも働かざるを得なくなりました。
   現在オーストラリアやニュージーランドから支援を受けて、観光業などで国の財政の建て直しを測っているようです。

  私たち人間の楽園の最後は殺し合いではなく、お金やそれを生み出す資源がつきることではじまるのかもしれません。


  ですがこれからの社会は、AIや機械が働いてくれる社会が実現しそうです。

 これからAIの発展で、世界がどうなっていくのでしょうか。


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