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ツレの弁当箱。

昨日、大事なツレとお別れした。
20年近くの長い付き合いで、「あぁついにこの時が来たか」そんな気持ちだった。

特別な思い出というほどのことはないけれど、気づいたら一緒にいたように思う。そういえばあの時も、と思う場面はたくさん浮かんでくる。

大学に入ったら流石に、と思っていたけれどやっぱり時々一緒だった。社会人になっても縁は切れなくて、何だかホッとする心の支えでもあった。

このままずっと一緒なんじゃないかな。
そう当たり前の存在として日々を過ごしていたのに、手から滑り落ちたソレはいとも簡単に壊れてしまった。その無惨な姿を見て「あぁついにこの時が来たか」と悟った。

ダヤンの絵柄が入ったお弁当箱。
これが私の20年来のツレ。

もう絵はカスカスで、その輪郭がかすかに残るばかり。なのに内側の傷はほぼなくわりかし綺麗だ。本当によく頑張ってくれた(衛生的に…という意見は置いておく)。

梅干しと海苔ののった市松模様のごはん。
レギュラーメンバーのチキンナゲットは、今も大好き。
彩りのブロッコリーにはマヨネーズが欠かせない。

16歳、バレエの大舞台。食事制限をしなきゃなかった時は本当に辛かった。あの時ほどお弁当の時間が嫌だったことは他にない。

大学のキャンパス、空き教室で友達と食べるお弁当もおいしかった。自分で作るお弁当の難しさとか面倒さもこの時よく理解した。

社会人1社目は社食を流し込むように食べていたから、2社目でお弁当を楽しむ時間が得られたことで、自分にとっての「心地よさ」とは何かを知った。

いろんな場面を共にしてきた、本当に。
いざお別れとなった時、生き物ならば、ここに「またいつか」の思いも含まれるかもしれない。でもツレはお弁当箱だし、素材的に巡ってかえってくる事もなさそうだ。

やはりこれが、永遠の別れか。
魂はなくとも、九十九神が宿るくらいには想いがあったと思う。
「長い間お疲れ様、お世話になりました。」



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