志磨遼平研究室

しま研令和元年度研究論文「『平凡』以前、以後。ー時代の転換期におけるドレスコーズの芸術…

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しま研令和元年度研究論文「『平凡』以前、以後。ー時代の転換期におけるドレスコーズの芸術性についての研究ー」連載公開中。

マガジン

  • 『ベイビー・ブルー & ロンリー・ボーイ』

    ドレスコーズと毛皮のマリーズの歌詞で連なるストーリーです。 1曲目から曲順通りにご覧ください。

  • 『平凡』以前、以後。

    令和元年元日、ドレスコーズ 6th Album 『ジャス』と同日発表の、しま研初の研究論文。無料公開中♪

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志磨遼平研究室令和元年度研究論文公開のご案内。

ドレスコーズ『ジャズ』発表から本日で1年。 令和元年元日、『ジャズ』と同日に発表した志磨遼平についての初の研究論文を、本日よりこちらのnoteにて、連載形式での公開をはじめます。 令和元年度研究論文「『平凡』以前、以後。ー時代の転換期におけるドレスコーズの芸術性についての研究ー」 こちらのマガジンからご覧ください。👇🏻👇🏻👇🏻 『ベイビー・ブルー&ロンリー・ボーイ』 2018年に開催されたドレスコーズの全国ツアー「“dresscodes plays the dres

    • おわりに 『12月23日のドレスコーズ』

      『12月23日のドレスコーズ』    天皇陛下(現・上皇陛下)は、平成最後の天皇誕生日の記者会見で、この国の象徴として歩んだ歳月を「旅」としてふりかえり、旅路をともにした皇后陛下への労いの意を表された。 2018年の『12月23日のドレスコーズ』のステージで初披露された “Bon Voyage” は、「旅」をテーマに描かれた楽曲であり、当時本研究で既に制作していた『ベイビー・ブルー&ロンリー・ボーイ』も奇しくもまた、マックとメリーの「旅」の物語である。  『平凡』以後、ぼ

      • 人類滅亡後のドレスコーズ

        第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 人類滅亡後のドレスコーズ  まもなく迎える新時代でも志磨は、変わらず音楽による記録を続けるだろう。  「ドレスコーズ」という看板には、「レコーズ(記録)」という文字がはじめから掲げられているように、志磨のこの世での使命は、「記録家」である。  ぼくらの民族を歌った『ジャズ』を最後に、志磨はこれまでのように作品のテーマや本当の意味を、オープンなインタビューやコンテンツでは語らなくなるだろう。  新時代では、顔のない仮面で新人類

        • 死者との共存

          第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 死者との共存  『平凡』制作時から、突然志磨のスピリチュアル発言が増えた。  本当に増えた。  ツイッターやドレスコーズマガジンの記事などで、デヴィット・ボウイをはじめ、死者の名前をよく口にしては、ファンを動揺させている。  しかし、「物理的に存在しない民族」ぼくらドレスコーズにとっては、物理的に存在しない死者との共存も可能ではないだろうか。  不謹慎ではあるが、死によって生きていた頃よりも死者を身近に感じる瞬間は多い。人間は

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        マガジン

        • 『ベイビー・ブルー & ロンリー・ボーイ』
          22本
        • 『平凡』以前、以後。
          34本

        記事

          『平凡』の答え

          第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 『平凡』の答え  顔がない仮面で新人類を装い、「透明の幕」で仕切られた「部屋」に隠れて研究を進めるぼくらは、『平凡』の世界でノーマリストを装い、ミーミストの活動を続ける平凡さんのようだ。 新時代での新人類とぼくらドレスコーズ、そして『平凡』社会でのノーマリストとミーミストの関係はよく似ている。  『平凡』社会では、文化的遺産を個人で所有する者が罰せられるように、時間をかけて垂直思考をすることによろこびを感じ、新人類と違う行動をとる

          『平凡』の答え

          顔がないアートワークの意味

          第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 顔がないアートワークの意味  先日発表された『ジャズ』のジャケットとアートワークは、民族的な衣装に身を包んだ志磨の、顔が消された肖像画だった。 マネキン(=ノーマリストの姿)がジャケットだった『平凡』からついに、顔がなくなってしまった。 このジャケットのコンセプトは ≪まもなく滅びんとする「人類」の肖像≫ らしいが、これは、均質化された新人類の姿でもあるのではないだろうか。 AIと共存し、ほぼAI化していく新人類の姿は、きっと数

          顔がないアートワークの意味

          丸山康太、越川和磨との関係性

          第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 丸山康太、越川和磨との関係性  では、志磨のかつてのバンドメンバーも、ドレスコーズの民族であるのかと問われると、そうではない。バンドとしてのドレスコーズの形態から考えると、彼らは「演劇」のように、一時的に作品やライブを共にする存在である。  毛皮のマリーズ、オリジナル・ドレスコーズ時代に、いつも志磨のとなりにいた丸山康太と越川和磨。 彼らもまた旅人であり、ぼくらドレスコーズと一時的に合流してはまた、それぞれ別の旅路に歩む関係なの

          丸山康太、越川和磨との関係性

          『ジャズ』は誰のための音楽か

          第6章 ぼくらの『ジャズ』視聴前レビュー 『ジャズ』は誰のための音楽か   “meme” というつながりをもつ、志磨とぼくらドレスコーズは、『平凡』以降、「部屋」ごと旅をはじめ、ジプシーのような移動民族となった。  新時代における均質化された新人類の世界に順応できないぼくらは、「透明の幕」に包まれた「部屋」に身をひそめた、物理的に「存在しない民族」である。  ジプシーがとても濃い血のつながりを持つように、ぼくらドレスコーズはごく近い “meme” という文化の遺伝子情報

          『ジャズ』は誰のための音楽か

          ドレスコーズとは

          第5章 新時代のドレスコーズ ドレスコーズとは ―― 「ドレスコーズとは、何なのか。」  この永遠の問いについて、我々志磨遼平研究室は、本研究において以下の結論を出した。  ドレスコーズとは、志磨遼平、そして志磨とごく近い文化的特徴 “meme” を共有する、とてもよく似た「ぼくら」からなる “民族” である。 民族(みんぞく、ethnic group)とは一定の文化的特徴を基準として他と区別される共同体をいう。(Wikipedia「民族」)    また、志磨と

          ドレスコーズとは

          ドレスコーズがひとりになった理由

          第5章 新時代のドレスコーズ ドレスコーズがひとりになった理由    2014年9月、『Hippies E.P.』の発表をもって、オリジナル・ドレスコーズの志磨以外のメンバー全員が脱退し、ドレスコーズは志磨ひとりになった。それ以来、志磨は自分以外のメンバーを固定していない。おそらく今後もドレスコーズのバンドメンバーが固定されることはないだろう。    では、志磨はなぜ、バンドメンバーを固定せず、今もひとりのままなのだろうか。  それは、「ぼくら」を待っていたからである。

          ドレスコーズがひとりになった理由

          「ぼくら」の本当の意味

          第5章 新時代のドレスコーズ 「ぼくら」の本当の意味    志磨は自身でも認めているとおり、歌詞やコラムなどにおいて「ぼくら」という人称をよく使う。「とてもよく似たぼくら」というふうに、志磨は自分と自分のファンが似ているということを自覚しているが、この「ぼくら」こそが、志磨とファンの関係性を意味しているのだ。  では、「ぼくら」とは、どのようなつながりであるのか。  それは、『平凡』でさんざん語られた “meme”である。 “meme” とは、≪親から子ではなく、他人

          「ぼくら」の本当の意味

          人類のゆるやかな滅亡

          第4章 文化人類学としてのドレスコーズ 人類のゆるやかな滅亡  均質化された人間と、ぼくらに似た人間。 新時代においてどちらが増殖していくか、どちらが新しい種であるかを考えると、どちらが進化でどちらが退化かであるかは一目瞭然である。    科学の進歩により、人類にとって不可能であることはもはや限られており、悩んで苦労してなにかを生み出し、遺すという時代はもう終わりに近づいている。垂直思考型で、研究成果を遺すことによろこびを感じる志磨やぼくら、研究者たちの居場所は、均質化さ

          人類のゆるやかな滅亡

          進化か退化か ‐regress or progress ‐

          第4章 文化人類学としてのドレスコーズ 進化か退化か ‐ regress or progress ‐   様々な分野において、先人たちの研究や垂直思考によって生まれた発明や発想により科学や文化は進歩し、人間の生活は豊かになった。人々の寿命は延び、働かなくても充実して幸福に暮らせる未来はあと100年もしないうちにやってくるかもしれない。 均質化した未来では、例えば、死なない、死ねないという現代では想像のつかない悩みや、新しい倫理が生まれるだろう。 SNS上で、誰でもすぐで

          進化か退化か ‐regress or progress ‐

          志磨が世間と乖離する理由

          第4章 文化人類学としてのドレスコーズ 志磨が世間と乖離する理由   志磨が世間と乖離する理由は、思考の方向と深さの違いにある。 水平方向にしか展開しない現代人の思考に対し、志磨の思考は、垂直方向に深く展開していることが、『平凡』以降の作品を見るとよくわかる。  アルバム『1』の制作で、長谷川智樹先生の指導を受けた時期から、専門知識をより深く学び、ひとりで楽曲の研究を深めている。志磨がひとりになってからの研究成果として、ドレスコーズは『オーディション』以降、急速に進化を

          志磨が世間と乖離する理由

          平凡さんは今

          第4章 文化人類学としてのドレスコーズ 平凡さんは今   『平凡』が発表されて、2年が経った。≪エゴのテンプレート≫問題はますます悪化し、いまだに人々の目的は、「個性」を「発信」することである。  SNSに写真を投稿するために、カフェに出かける。買い物をする。料理を作る。街へ出る。それらの行動の目的は、「発信」して “いいね” やアクセス数という、「自分の存在が認められている」というわかりやすい評価を得るためである。  また、自分の意見や、賛否などの言葉での「発信」も、現

          平凡さんは今

          劇場とよく似た空間構造

          第3章 空間論として紐解くドレスコーズの芸術性 劇場とよく似た空間構造   志磨が部屋を出て、はじめて所属した外部空間がなぜ「演劇」だったかは、必然的である。 「演劇」の舞台と客席は、「透明な幕」または「第四の壁」と呼ばれる境界で仕切られている。『オーディション』以降、志磨がぼくらを迎え入れた「部屋」と「外」との境界もまた、「透明な幕」、「第四の壁」で仕切られていると考える。「部屋」の中から我々は、観劇で舞台を観るように、この境界を通して「外の世界」を「部屋」の中から観察

          劇場とよく似た空間構造