人はお金じゃない。お金なんて大したことない。

と、お金がない人が言っても、あまり説得力がありません。ややもすると、貧乏人のひがみに聞こえます。お金持ちが「人はお金じゃない！お金なんて大したことない！」と言うからこそ、説得力があります。

非常に逆説的なようですが、一度手に入れた者だからこそ言える真実がある。そして、そのような境地に至った人でも、100%お金を否定することはないでしょう。やっぱりお金は大事だけれども、お金がすべてではないよ、くらいのものでしょう。

私はお金持ちでないので「人はお金じゃない！お金なんて大したことない！」とは言えませんが、少しだけその感覚が理解できたことがあります。それは、ロレックスの時計を買った際のことです。

1年かかって苦労して転職し、仕事にも慣れて無事半年が経過。誕生日の自分へのご褒美に、何年間も欲しかったロレックスのエクスプローラーを購入したのです。現金一括で約40万円を握りしめて購入した興奮は、今も忘れられません。後にも先にも、自分のために購入した物で、これを超える物はありません。

腕につけていると、自分はその時計に見合う素晴らしい価値がある人間なのだと思え、自己肯定感が上がります。

加えて、百貨店、飲食店、不動産会社、銀行の社員、それにキャバクラ嬢や合コンで出会った女の子も(笑)、さりげなくチェックして「ロレックスがお好きなんですか？」「素敵な時計ですね！」と褒めてくれます。

褒められて、悪い気になるわけがありません(笑)　ロレックスは、「私はお金持ちです！」というわかりやすいアイコンであり、PRになるのです。

そのような生活を5年ほど続けたある日、メンテナンスのためオーバーホールに出すことにしました。オーバーホールには数週間かかるということで、リリーフのためソーラー電波時計を使ったところ、これにハマったのです。

まず、止まる心配がない。ロレックスは自動巻きなので、一日中身につけて生活しているぶんには止まる心配はほぼないのですが、休日に置きっぱなしにしていると、月曜の朝に止まっていて慌てたことが何度かありました。

そして、1秒たりとも狂わず、正確な時を刻むこと。クロノメーター規格を取得しているロレックスといえども、1週間で数秒ズレてくるのは避けられません。

ついでに言うと、初回オーバーホール費用は無料でしたが、2回目以降は数万円単位の費用がかかるので、ランニングコストがけっこうかかり続けます。あと、ステンレスの削り出しなので、ちょっと重い。

結局、オーバーホールから戻ってきても、ソーラー電波時計を使い続け、3年ほど前からは2万円ほどのファーウェイのスマートウォッチを使っています。歩数、活動量、心拍数、睡眠の深さなどを計測できるからです。

だれひとりとして褒めてくれたことはありませんが(笑)、私は満足しています。腕時計に求めるもの、腕時計に対する考え方、価値観が、すっかり変わったのです。

今なら言えます。

ロレックスは良い時計だけど、しょせん時計。世間で言われるほど、大したことはありませんよ！