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037.読書日記/そして誰もいなくなった風、仏ミステリ「恐るべき太陽」

ミシェル・ビュッシは「黒い睡蓮」という、モネが「睡蓮」を描いたジベルニーが舞台のミステリを読んだのが最初で、その後「彼女のいない飛行機」「時は殺人者(上・下)」を読んで、「恐るべき太陽」が4作品目。ポール・ゴーギャン晩年の地、ヒバオア島(フランス領ポリネシア)が舞台です。2023年文春ミステリベスト10の海外部門8位。

ピエール・ルメートルを読むまでは、フランスミステリとは縁遠くて、家にメグレ警部シリーズが全巻揃ってたのに2冊くらいしか読んでなかった(バルザック全集もあったから、聞いたことないけど父はフランス文学好きなのかも)。それが、ビュッシもこれで翻訳されてるのは全部読んだし、フランスの刑事ドラマ「アストリッドとラファエル」も楽しく見てたし、なんとなく私的に北欧ミステリの後にプチフランスブーム到来してる感。

「ネタバレ」って言葉は語感があまり好きでないし、「ネタバレ」されたって怒るなら、そもそもSNSや解説や感想など見なきゃいいのに、と思う方ですが(私は結末がわかっていても楽しめるタイプです)、この本の解説でも「※以下、本書のネタバレを含みます」と表示してあったので、私も世の風潮にならって記します。以下、ネタバレを含みます。


「恐るべき太陽」と言うのは、人気作家と作家志望の女性5人が集まって行う「創作アトリエ」の宿泊施設の名前。恐るべき太陽荘の周りには5人の参加者に似せた石像が置かれ、クリスティの「そして誰もいなくなった」のような設定。

先に三冊読んで、ビュッシには騙されるイメージが強いので、警戒しながら(笑)読んでいたのが、途中から実家でプレ介護家政婦修行をして、毎日寝る前30分くらいに細切れで朦朧とした脳で読んでた。だからか、結末にたどり着いた時に、クレムとマイマ視点で交互に語られていると見せかけて、5人の登場人物が順に語っていたとわかり、「へ?登場人物が順に綴っていたやろ?」と逆に驚いた。切れ切れで前に読んだところの記憶が曖昧なまま読み進めたからか、文章を素直に受け取って、ここはファレイーヌ、ここはマリ=アンブルが語っていると思って読んでた。最後のエロイーズとクレムは帰りの電車で読んだので騙されたけどw
「そして誰もいなくなった」の設定を取り入れてる風に見せかけて「アクロイド殺し」の要素も入ってる。ってか「アクロイド殺し」のような語り手の嘘は無い、「わたしを信頼して」とわざわざ断っておいて、その隙間をついた構成になっていた。

ちょうど実家を出る日の朝食がピザで、
母「今日の朝ごはん、何する?」
私「ピザやで」
母「ピザ?どこにあるん?ピザ買いに行く?」
私「冷凍室にある」
母「朝ごはんどうしよ?」
私「朝はピザ。ピザやで」
母「ピザ?」
と、ずっとピザピザ言ってたので、ふと思いついて母に肘を指差し、「ここは何?」と聞いてみたら、「ヒジ」と答えた。引っ掛からへんのや、と驚いたら、「ここはヒジやわな。間違うわけない」とか言ってて、認知症にピザ10回言ってクイズは通用しないのであった。
私もビュッシに騙されなかったのは、推理しながら読まずに、眠気と闘いながら、文章を素直に読んでいたからだったのかな〜などと思ってしまった。

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