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えんそくvol.2稽古場レポート③『東京三人姉妹』:トーク&シャッフル編

続・えんそく稽古場レポート。今回はレポ①に引き続き、『東京三人姉妹』です。

やはり本番が近づいてくると、役者の人たちが作品にどんどん入り込んでるのが分かるので、期待感も煽られるものです。そして実際面白そうです(お世辞で面白そうとかは言わないので信じてくれ)。

稽古場レポートとは?:
「えんそく」主宰の小川結子さんの高校同期であり、たまにWebライター的なことをしたりしなかったりしている私あいけが、3/20(水)~24(日)に西荻窪「遊空間がざびぃ」にて上演される演劇公演『時間なら、あるわ』(作品は『東京三人姉妹』『JAM』の2本立て)の稽古場を、ぼんやりと見学して書いたレポートです👍

この日の稽古場、見た目こわい

この日はたまたま運悪く直前で役者さんの都合がつかなくなったりして、その場面の出演者が全員揃ってやれる場面がほぼなく、「稽古なにやるねん」状態だったらしいです。そんなこともある。

なので俺も当然「なにを書けばいいやら」「全部妄想で、ChatGPTとか使いながらあることないこと書いてみようか」とか思っていた……のですが、稽古の変則的な内容がむしろ新鮮で面白かったので、晴れてふつうに!書けます!という次第。

前半:突発演劇論フリートーク!

前半はいきなり、なんと演劇論みたいなフリートークに。しかしそれがめっぽう興味深い。手持ち無沙汰な時間ゆえの収穫というか、余白の時間の大切さを思います。

結構いろんな論点に話が飛んだので、箇条書きにしようか。手抜きじゃないですよ。(他にも、具体的な公演名・役者名とかも出てきて面白かった。)

●台本で読む文字の情報と、目で見る視覚情報が同じだと、「演劇見なくても台本読めばいいじゃん」となる。そこにズレがあったほうが、お客さんが想像力を膨らます余地が出る
●『東京三人姉妹』は言葉のパワーが強い(言葉がしっかりしている)台本なので、どこを強く効かせるか、どこをラフに芝居するのか、メリハリをつけるほうがいい
●我々(役者)は演劇に慣れすぎているので、「日常生活なら、このシチュエーションでふつうこのセリフ言わなくない?」みたいなことを考えなくなりがち
●役を自分に近づけるかどうか?は永遠の論争。「役になりきらなきゃ」と思うとかえって嘘になることがあるので、自分のなかにある似た感情や言動を引き出し、それを模倣するやり方がある。役をキャラクターとして作り込みすぎてしまわないこと
●ここでお客さんにどう思ってほしいのか?なにが面白いのか?という俯瞰の視点で全体を見たい

とくに面白いなと感じたことが2つ。

1つ目は、「キャラクター」を作り込みすぎないという点。

これは素人からすると、あらかじめガチガチに作り込んどいたほうが安心だよねとか思っちゃうのですが、やっぱり『東京三人姉妹』は近代的なリアリズムの演劇なので、演劇演劇したフィクション感が際立つ必要がないってことなんでしょうか(単純化して言えば)。楽しそうだけど難しそうな話。

2つ目。この日の会話のなかで、「最近あんまり『先輩が演劇論を熱く語る』みたいな場面もないよね」という話にもなったのですが、だからこそ、突発的にこんな演劇論の話を交わせるのも、主宰の小川さんの作るえんそくという場のフラットさがあってこそなんだろうということ。

いまは意見の押し付けにならぬようみんなが気を遣う時代になっていて、けれど自分以外の役や全体のことで考えた内容は共有し合ったほうがいいのもまた事実で。

1つ目の話にも関わることですが、小川さんは「えんそくは過程を大事にしたいので、本番前に役を作り込みすぎる必要はない。本番も『過程』のひとつとして捉えて、いろいろチャレンジしてもらっていい」とも言ってました。

こういう「場」の話っていうのは単に本番を一回観に行っただけだと当然なかなか見えないところなんだけど、どんなジャンルであれ、いい作品の裏にはきっといい場があるんだなあというのは近ごろしみじみ思うことです。大人として。

後半:シャッフル稽古!

↑というネーミングはいま自分が適当に名付けただけですが、なんせ各場面ごとの役者さんが揃ってなかったので、シャッフルしてやってみようぜと。

こんな感じで配役をランダムにシャッフルし、

台本見ながら、あみだくじで当たった役の芝居をします。その繰り返し。

自分以外の何にだってなれるのが芝居というもの、とはいえ、「その雰囲気でそのセリフ言う?」みたいな可笑しさがつねに漂いながら稽古は進みます。

正直、これを通して何が掴めるのかは最初はあまり分かっていなかったのですが、途中からは「なるほど」と。

要するにこのときは、「自分の役ではない役を演じている」というある種の「無責任さ」がかえっていろんな新鮮な意見・気づきを共有しやすくさせていたように見えました。たとえば

「ここはもっとポップに早くやり取りしたほうが面白いかも」
「いざこの役をやってみると、ここで『仕事辞める』ってセリフはは言い出しづらかったので、一旦はけてから言った」
「家にいる場面だから、いまの会話聞きながらも(役としては)今日の夕飯のこと考えてた」

みたいな。生身の身体どうしのプリミティブな芸術だからこそ、どんな手法であれ何かしらの学びが得られるのが演劇の魅力なのかもしれません。

また大事なこととしては、家の室内で進む会話劇なので、シャッフル状態ゆえの「必要以上に力が入りすぎてない感じ」が家にいるようなリラックス感につながってもいたなと。

つねに声を張るわけでもなく、なんなら何か別のことに気をとられながら話半分に会話してたりもする。家での日常会話ってそういうものですよね。もちろん完全に「リアル」に接近しちゃうとなかなかパフォーマンスとして成立はしないので、塩梅の問題ではありますが。

いずれにせよ、「ここは家なのだ」という前提を身体に染み込ませることが、三姉妹にとっていまの家はどんな空間なのか?三姉妹の関係性はどうなっているのか? みたいな表現にも直結するはずですし、我々観客も三姉妹のことを好きになれそうな気がします。(『東京三人姉妹』という公演にとっていくつかの勝利条件があるとすれば、「この三姉妹をお客さんに好きになってもらうこと」がまず大きな条件のひとつです。)

と、門外漢なりにいろいろ言語化を試みてみましたが、役者の人たちの中ではきっと言葉にもできないような身体知みたいなものが蓄積されてるんでしょうし、このレポート自体もまた、観光客のようにある種「無責任」な立場からの観測記録だと思ってもらえれば。楽しみ楽しみ。

稽古場レポは、イレギュラーな形ですがもう1回ぶん予定しています。

(ていうか俺もぼちぼちチケット予約しなくては。。)

▽公演情報はこちら

◇公演スケジュール
3月20日(水)19:30〜東京三人姉妹
3月21日(木)19:30〜JAM
3月22日(金)14:00〜JAM / 19:30〜東京三人姉妹
3月23日(土)14:00〜東京三人姉妹 / 19:30〜JAM
3月24日(日)13:00〜JAM / 17:00〜東京三人姉妹
※開場は40分前を予定。※上演時間は各 約80分

◇チケット料金
一般 3500 円
U30 3000 円
学生(養成所の研修生可)2000円
2作品セット券 5500円
桟敷席 2000円 (最前列、各回限定10席)
※当日精算のみ。全ステージ当日券あり。

◇メンバー
作 峰村美穂
演出 峰村美穂 小川結子
出演 青柳糸 安齋彩音 太田旭紀 小川結子 小坂優 土本燈子 都倉有加 ノナカモヱリ 宮内萌々花 宮津侑生
舞台監督 後関貴大
制作 佐倉ゆい花
音響 成田章太郎
照明プランナー 上原可琳 
照明操作 新貝友紀乃
楽曲 縫部たまき(シロイソラ)
アートワーク ゆえ

協力 anonet  街の星座 植田望裕 大島一貴(あいけ) 國崎史人

企画、製作 えんそく


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