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えんそくvol.2稽古場レポート④『JAM』:通し映像編

稽古場レポートとは?:
「えんそく」主宰の小川結子さんの高校同期であり、たまにWebライター的なことをしたりしなかったりしている私あいけが、3/20(水)~24(日)に西荻窪「遊空間がざびぃ」にて上演される演劇公演『時間なら、あるわ』(作品は『東京三人姉妹』『JAM』の2本立て)の稽古場を、ぼんやりと見学して書いたレポートです🦕

↑というシリーズのはず、なんですが今回は変則的に、通し稽古の録画映像を見てレポートというかコメントというか感想を書いてみるスタイルです。これ「稽古場」レポなのか……?(便宜上、noteのタイトルはそのまま「稽古場レポ」ですが。)

さて。まず映像を観終えて思ったのは、「疲れないで観れたな」ということ。単に体の疲れの問題というよりは、心があっちこっちに揺れずに済んだなと。どういうことか説明します。

一般に、物語というのは「問題を解決するカタルシス」を連続させる、あるいは引っ張っていくことで人の興味関心を持続させます。たとえばジャンプのバトル漫画の「どっちが勝つのか」というドキドキ感は典型的です。もしくは立場的に「弱い」存在の主人公に感情移入をしてもらって、その主人公が後々になって逆転の大活躍をしたりとか。

それとは逆に、『東京三人姉妹』レポのときに名前を出したチェーホフなんかは「事件が起きない」戯曲を描く人だと言われます。直接的な元ネタというわけではなくとも、今回の『JAM』にもやはりチェーホフ的なエッセンスは多分に感じます。

いや、しかし単に「事件が起きない」と言うと語弊があるでしょうか? 実際『JAM』では長女イチカの帰宅に伴っていろんなことが起きるし、次女フツカの結婚の問題だって大変です。前回の『JAM』のレポでも僕がこんなことを書いてました。

演劇の会話の多くは、本当にあたりさわりのない「日常会話」ではなく、会話が物語を進める機能も担っている以上、会話のなかでつねに何かは起きているわけです。その「何か」をどれくらいドラマチックにするのか/しないのかという、リアリティの調節度合い。

えんそくvol.2稽古場レポート②『JAM』

つねに何かしらは起きている。けれど観客はその出来事の行方に振り回されるような形ではなく、出来事を出来事そのままに、フラットに見ることができる。……要は、それを今回の『JAM』の通し稽古でも感じました。はじめに書いた「疲れないで観れたな」は、そういうこと。

たとえばチェーホフを文庫本で読んでいるだけだと忘れがちなことですが、「事件が起きない」というのは台本上の話だけじゃなく、実際の芝居がそうさせている部分もとても大きい。当たり前といえば当たり前なんだけども。

というわけでざっくりまとめてしまうと、『JAM』にも『東京三人姉妹』にも共通しているのはきっと、「いったいこの話はどうなってしまうのか?」という展開によって興味を引っ張るのではなく「この姉妹たちの人生をありのままに写す」というリアリズムへの意識。自分のレポの引用部分の表現を借りるなら、それをまっとうするために役者の人たちは微細な「リアリティの調節」をしているのだろうと思います。

(そのへんの芝居の技術みたいなところは、映像だけだと深いところは分からんのであんまり下手に書けないし、直で観に行ってくれ!としか言えない!)

……とまあ、書いてはみたんですが。

そして「批評」としてはそんなに間違ったことも言ってないような気はしますが……これが「感想」となると、また違いますよね。いざ本番を劇場で見たらまた全然違うことを思うでしょうし。観終えたあとで、イチカ・フツカ・サイカ・ヨナカの、あの場面、あの動き、あのセリフが良かったなあというのを、僕もきっと指折り数えて反芻するんでしょうから。

逆に、なんで今回はそうならなかったか?と考えると、「稽古だから」というよりはやはり「映像だから」に尽きると思いました。劇場で生で見たほうが、他のことに意識が行かなくなって作品だけに集中できる。役者の一挙手一投足や、小道具や音楽や様々な要素に対して。

これまた当たり前の話だけども、劇場で、それぞれ一回きりの本番を見るのが一番いいに決まっているなと改めて思います。そしてそれがもうすぐ見れるわけなので。

稽古場レポートの文章でできることなんて多くないけれど、その期待感を、少しでも斜め上のほうに持って行けていたらと。

もう予約はお済みでしょうか。

▽公演情報はこちら

◇公演スケジュール
3月20日(水)19:30〜東京三人姉妹
3月21日(木)19:30〜JAM
3月22日(金)14:00〜JAM / 19:30〜東京三人姉妹
3月23日(土)14:00〜東京三人姉妹 / 19:30〜JAM
3月24日(日)13:00〜JAM / 17:00〜東京三人姉妹
※開場は40分前を予定。※上演時間は各 約80分

◇チケット料金
一般 3500 円
U30 3000 円
学生(養成所の研修生可)2000円
2作品セット券 5500円
桟敷席 2000円 (最前列、各回限定10席)
※当日精算のみ。全ステージ当日券あり。

◇メンバー
作 峰村美穂
演出 峰村美穂 小川結子
出演 青柳糸 安齋彩音 太田旭紀 小川結子 小坂優 土本燈子 都倉有加 ノナカモヱリ 宮内萌々花 宮津侑生
舞台監督 後関貴大
制作 佐倉ゆい花
音響 成田章太郎
照明プランナー 上原可琳 
照明操作 新貝友紀乃
楽曲 縫部たまき(シロイソラ)
アートワーク ゆえ

協力 anonet  街の星座 植田望裕 大島一貴(あいけ) 國崎史人

企画、製作 えんそく

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