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21世紀を生きる子供への大人のかかわりかたvol.2--イベントレポート

7/5(日)、Skyrocket Projectさん主催の教育トークショー「21世紀を生きる子供への大人のかかわりかた」が開催されました。
ゲストにインフィニティ国際学院の大谷真樹先生、トビタテ!留学JAPANプロジェクトディレクターの船橋力先生、ドルトン東京学園副校長の安居長敏先生をお招きし、日本の学校教育の現状と選択肢をもう少し広くしたこれからの教育の展望を考察しました。
今後の教育に大人はどのように関わり子どもたちと向き合っていけばいいのか、まとめてみたいと思います。

それぞれの共通点

まずは、ゲスト三先生の自己紹介から始まりました。
個々の紹介のなかで共通項がいくつかみえてきたので、紹介させていただきます。

<大谷真樹先生プロフィール>
1961年八戸市生まれ。学習院大学経済学部卒業。NEC勤務を経て、株式会社インフォプラント(現 株式会社マクロミル)を創業。2001年に起業家のアカデミー賞といわれる『アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・スタートアップ部門優秀賞』を受賞。2008年に八戸大学客員教授、2010年に八戸大学・八戸短期大学総合研究所所長・教授、2011年に八戸大学学長補佐、2012年から2018年3月まで八戸学院大学学長を務めた。大学では「中小企業・ベンチャー企業論」「イノベーションマネジメント」「新農業ビジネス」等の科目を担当。社会人講座「起業家養成講座」の主任講師も務め、数多くの起業家を輩出している。
(インフィニティ国際学院HPより転載)
<船橋 力 先生プロフィール>
文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクトディレクター
1994年 伊藤忠商事株式会社に入社
2000年 株式会社ウィル・シードを設立
2009年 世界経済フォーラムの
     ヤング・グローバルリーダーに選出
2013年 現職
(トビタテ!留学JAPAN HPより転載)
<安居 長敏先生プロフィール>
ドルトン東京学園 中等部・高等部
滋賀県の私学で20年間教員を務めた後に転身。コミュニティFMを2局設立し、パソコンサポート事業を起業。その後、再び学校現場に戻り、滋賀学園中学校・高等学校/校長、沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校/校長を歴任。2019年4月から、ドルトン東京学園中等部・高等部/参事(副校長補佐)として「学習者中心」の教育を推進。
(大塚商会HPより転載)

●のんびりとした田舎暮らしを体験(大谷先生・安居先生)

大谷先生は青森県の地元の小中高校でのんびりとした空間の中で育ち、安居先生は滋賀県で田んぼをやりながら小中高校を過ごす、という平凡な家庭の中で超ローカルな生き方をしていました。
お二人の田舎暮らしの経験が、東京など首都圏との温度差を感じることにもつながっているようです。

●大企業をあっさり退職(大谷先生・船橋先生)

大谷先生は新卒でNECに、船橋先生は新卒で伊藤忠商事にそれぞれ入社されています。
今でこそ崩れつつある制度なので、若い方は普通に感じるかもしれませんが、ガチガチに年功序列・終身雇用が成り立っていた時代に大企業に早々と見切りをつけて独自路線を歩んでいく思い切りの良さは、なかなか真似できない行動です。

●起業をするものの、いち早く売却に転じる(大谷先生・船橋先生)

大谷先生は、株式会社インフォプラントを創業。
この会社では注目されはじめたばかりのインターネットを使ったリサーチ(調査)活動やインタラクティブコンテンツ制作(質問に答えて最適商品を勧めるなど潜在顧客と双方向にやりとりをするコンテンツ)、テレビ番組企画・制作などをされていましたが、のちにYahooグループに売却しています。

船橋先生は株式会社ウィル・シードを設立。
全国の学校教育に体験型ゲームを使って環境、ビジネスを体験して自分事にさせるという活動をし、全国60自治体6万人ほど、大企業500社くらいの規模にまで拡大されましたが、12年ほどで河合塾グループに売却しています。

ニ先生とも、一流企業に入りながらも早めに見切りをつけ起業し、ここから更に飛躍するというのびしろを残しつつも売却、さらに新しいことにチャレンジしていくところに共通項を見つけました。
常にアンテナを張り、時代の潮流を読むことに長けた良い例だと思います。

メディアを使う(大谷先生、安居先生)

意外な共通点をみつけました。
大谷先生はジャーナリストとして活躍されておりフジテレビとの繋がりが強い先生です。株式会社インフォプラントでも番組の企画や制作にかかわっていました。
一方の安居先生は、当初、滋賀県の私学で20年間教員を務めていましたが、その後転身。コミュニティFMを2局設立しています。
このことから、メディアを使って最先端の生の情報を手に入れることもひとつのカギだと感じました。

トークセッションの内容・まとめ

ここからは、トークセッションで三先生がお話していたことを書きます。

圧倒されたダボス会議とトビタテ!設立(船橋先生)

約10年前、船橋先生が40歳の時に参加したダボス会議(毎年1月スイスで開催され今年で50回目を迎える会議)。
このとき、他の国のリーダーがなんだか楽しそうにみえます。
圧倒されたと同時に日本の力のなさを感じた船橋先生が立ち上げたのがトビタテ!留学JAPANです。

先生が40歳の時にダボスに行き強く感じたのは、20歳くらいのときには海外に気軽に行ける環境を整えるということ。

この思いを民間企業になげかけ、資金調達を始めます(2015年のKUMON NowのOB・OGインタビューで「200億の民間からの寄付」を目標としているとお話されているので、そのスケール間の大きさには驚きです)。

2020年までに海外に行く学生を1万人集める、というプランです。
複雑な問題解決をするためには多様な人のコミュニティを作ることが必要です。
そのためにはいろいろな形の留学があると考えました。
そして、思いに共感した著名人も多数います。
ソフトバンクの孫正義さんは個人で10億、会社から10億を拠出しているという力の入れようです。
成績をみないで海外に行かせる」ことがこのプロジェクトの一つの大きな特徴として挙げられます。
具体的には、自分で行きたい期間だけ、やりたいことをして帰ってくるということです。

今はコロナの影響で募集が止まっており、4月から留学する予定でいた人ができない状態です。
そのため、2020年でこのプロジェクトは終了する予定でしたが1年延期をすることが決まりました。

留学に興味がある人は7月にホームページで告知するのでチェックしてみてください、とのこと。
また過去に留学した約1000人がレポートを書いているページもあるので、こちらもかなり参考になると思います。
あわせてチェックしてみてください。

●海外留学の課題と新しい留学スタイル(船橋先生)

トビタテ!のプロジェクトを進めていくうえで、日本の学生による海外留学への課題もいくつか浮かび上がってきました。

一つは、高校生の海外留学の数がまだまだ少ない、ということ。
2017年現在で高校生の海外留学者数が約47,000人。
高校生の全体数が約3,226,000人。
全体の1.5%にも満たない数字です。
更に内訳を見てみると留学者数約47,000人の内、約91.5%に当たる43,000人弱の生徒が3か月未満の留学となっています。

属性をみると私立の高校生が圧倒的に多いこともわかりました。
また、「高校で留学を経験すれば大学進学後6~7割の確率で再び海外留学をする」という現象もみられます。

大学生・社会人に関しても2004年をピーク時から3割ほど減少したところでほぼ横ばいの状態が続いているようです。これに関しては、人口減少の影響も少なからず出ていると思います。
大学や大学院では主に外国語学部で海外留学が義務付けられている学校もあるので意外な数字ではありますがこれが現状です。
こちらのページに詳しいデータが記載されているので是非参考にしてください。

娘の高校は私立の女子高ですが、いわゆる全日制の普通クラスの他にグローバルコースというものが設置されています。
人数は20人弱と少ないクラスではありますが3か月以上の留学をすることが条件となっており、当該コース所属のほとんどの生徒が半年~1年、海外留学をしています(まれに3ヶ月留学を選択する生徒あり)。

行先はカナダ、オーストラリア、アメリカが多数を占めています。
これからますます少子化にむかうので、人数的には減ってくるとは思いますが、私立を中心に海外留学を推奨する学校は増えてくるのではないかと予測しています。

大学生の留学ももちろんですが、高校生の留学の門戸をもう少し開いて欲しいと感じました。

●今の日本とこれからの日本(船橋先生)

更に海外留学の問題点として、地域格差が大きい、という指摘がありました。

先ほど紹介したトビタテ!のデータを見ても分かるように、東京・大阪と地方とでは海外留学をする生徒の数に大きな差があります。
地方には、留学の情報がほとんどおりてこないのです。

これを解消するためにいま注目しているのが、オンライン。
中学・高校・地方から海外に届けるというミッションのもと、アツい思いをもった学校の先生を1000人集めて教育コミュニティをたちあげ、8月にキックオフイベントを開催する予定です。

とにかく世界からみた日本は、まだまだ閉ざされていて相当マヒしている状態です。
江戸時代の経済的鎖国とも違い、いまの日本は精神的鎖国状態になっているのではないかと危惧しています。
大谷先生の言葉を借りれば「日本はガラパゴス化」している、といったところでしょうか。

グローバルの時代において日本がどれだけまずいかということと、日本がこれからどれくらい貢献できるかということに尽きると思います。
留学するのが当たり前の選択肢のひとつになってほしい」という船橋先生の強い思いを感じました。

もっとも、いまトビタテ!のなかにおいても少々息苦しさを感じることがあるそうです。
せっかく留学を経験しても、みんな判を押したように大学受験をしてしまう、将来が決まってしまう、という事実が一方であります。

多様な生き方、価値観に触れない限り日本は解放されないのではないか、
日本を解放するために留学は必要だ、とお考えのようです。

そのため、昨年、船橋先生はもう一度チャレンジしようとご自身がシンガポールに留学しています。
アジアのリーダーを束ねるようなハブになれないかと立ち上がり、更に新しいことにチャレンジしている姿をもっといろいろな方に見ていただきたいと思います。

●人生の選択、選ぶのは…(安居先生)

安居先生は、新卒から今までの軌跡を中心にお話しされました。

当初、一旦はデザイン会社への就職が決まっていましたが、空きが出た学校が見つかったので赴任した安居先生。
特に女子高に行きたかった、というわけではなく公立の学校があまり好きではなかったから私立の学校へ赴任し、担任として10年、裏方に回って10年。

20年入ったときに、突如、教職から外れ、地域のFMを作ります。
きっかけは、阪神淡路大震災。
見よう見まねにFMを開始したものの収入が入ってこなかったため、42歳の時に収入を得るため起業します。
折しも時代はヤフーが街頭でモデムを配って、インターネットがちょうど始まるというときでした。
そのため、インターネット接続、パソコンメンテナンス、PCインストラクターで生計をたて、個別対応など様々なことを学ぶことができました。
再び教育機関に戻り、滋賀学園で11年務め、管理職、校長へとなります。
校長二年目に沖縄アミックスインターナショナルからオファーがあり2年間勤めています。
この学校は私立ではあるのですが、公立っぽいマネジメントをするというユニークな学校でした。

ざっと半生をみただけでも山あり谷ありの感じを受けたのですが、そこで印象に残ったのが、「自分が岐路にたった時にはどちらが楽しいかでその道を選ぶ」というお話でした。

おそらくたいていの人は選択するにあたり「どちらが自分の得意分野か、できることが」を基準とする人が多いのではないかと思います。
そこをあえて、できるできないではなく「どちらが楽しいか」を選ぶ。
更に、その中に、より困難な道が用意されているようであればあえてそれを選ぶ
「困難がなければ道は開かれない」という考えに共感しました。

●安居先生が思う「海外留学」

先生が今所属しているドルトンの生徒・1期生155人に対し留学に関するアンケート調査をとり、みえてきたことがあったようです。

6年後の進路に対し、海外の大学まで考えている生徒は全体の46.3%。
自宅から通学圏が約3割。
「大学で海外留学の制度があれば希望するか」という問いに対しては8.3が絶対したい、26.5%が機会があれば、と回答しておりある程度行きたいと思っている生徒がいることが判明しました。

ただ、これは東京の学校だから、という理由では必ずしもないようだということも少しずつわかってきています。

滋賀県の中堅にも至らない中高一貫校を対象に、中二時にニュージーランドに連れて行ったらどうなるかを実験している学校がありました。
その結果、前半1か月半共同生活、後半1か月ホームステイを体験することで子どもたちが自分でコントロールできるようになり、たくましくなって帰ってくるということがわかりました。

この結果をうけて、トビタテ!という制度がありチャンスがあるのに入れない生徒を飛び込ませるにはどうしたらいいか、一歩背中を押すために何をしてあげられるかを考察されていました。

特に、1.5%にも満たない高校生の海外留学。
大きな原因として部活をあげられていました。
部活問題がクリアになることで、海外留学の門戸は一気に広がる可能性を秘めています。

また、一概にはいえませんが、高校生の留学の傾向として、「ひとつの学校で3人留学生がでると翌年は留学を希望する人が増えるが、1人だけしか留学生が出ない学校だと、翌年は留学を希望する人がいなくなる」というデータもあがっているそうです。

●教育の「地域格差」を埋めていきたい(大谷先生)

私は教育の地域格差、学校間格差(特に公立の学校においては)を以前より感じています。
大谷先生は、特に地方での格差を感じるという発言をされていました。

地方では先生の情報量、前例がないということで、先生の意識を変えなければならないのですが、その機会すらないとのこと。
このことを日本の教育の危機とも感じているようで、以下のように話していました。

① 今までの教育昭和型の人材育成のしくみ、キャリアは崩れてきている。
20年前、40年前に培ってきた先生や親が経験してきたた経験値が活かせない。
実際、トヨタでも終身雇用が崩れている。
② 世界の教育はアジア、アフリカの若者のエネルギーがこわい。
インドでは300万人エンジニアを出している。
中国では教育に関する家庭のお金がすごい(子どもの教育費にお金をかけている)。
日本の若者に比べ圧倒的に危機感をいっぱい持っている。

これは国の大きな問題にもつながり、そういう意味ではトビタテ!のプロジェクトには大きな関心を寄せているようです。

また、ビフォービフォーコロナ、アフターコロナでも変わってくると予想しています。
これからはVUCA(Volatility:変動性、Uncertainly:不確実性、Conprexity:複雑性、ambiguity:曖昧性)の時代に突入し、アフターコロナでは劇的に変わります。
そのため、日本も早急にグローバリゼーション(社会・経済的に日本という国や地域を超えて地球規模に拡大してさまざまな変化をもたらすこと)に対応したほうが良いと警鐘を鳴らしています。

特に、AIロボットは、指数関数的に動くため、いつどうなるかがこれからは読めなくなってくるのではないかと思います。

これに対応するには「変化」ということがキーワードとなります。
変化できるもの、変化できる人が賢い、という時代がきます。
人が変化するためにはさまざまな体験をし、アウトサイド(世界)を知ることが必要となってきます。

世界が急に止まる。戻る。
資本主義社会がいけないんじゃないの?となってくる。
ベーシックインカム(政府がすべての国民に対して生活をするために最低限度の額を定期的に支給すること)になる。
地球の存続があやうくなってくる。
でもAIが台頭してくるから仕事がない。
野球がイースポーツになったり、サッカーになったりする可能性でさえでてきてしまうのです。

社会の要請に応じる時代は終わりです。
自分が何をしたいのか。自分を整えていく必要があります。

これからは留学・越境体験もいままでとは違ってきます。
世界をみて、日本はどうあるべきかを考える時だと思います。

●これからはまっさらなキャンバスに好きな色で絵を描く時代(大谷先生)

前述したように、これからの社会は今まで20年前、40年前の親世代・先生世代が培ってきたノウハウの蓄積が全く役に立たない時代になると予想しています。

そのため、自分が何をすべきかを考えた時、「まっさらなキャンバスに好きな色で絵を描く時代」になってきているのではないかと述べられています。
キャンバスに絵を描くにはいろいろな刺激が必要です。
そして、その一つの選択肢として「留学」が挙げられるではないかと私は考えています。

なにか新しいことを始める時というのは、今までの自分の領域外のことを学ぶこととつながるため、外部刺激を求めようとします。
私の場合、ビフォーコロナの段階では対面でのセミナーであり、書籍であり、映像でした。
アフターコロナのフェーズに入り、これらにプラスしてオンラインセミナーが入ってきているのかなと感じています。
今はまだ外出するのは難しい段階ではありますが、コロナが落ち着いてきたころには更なる外部刺激として視察、旅行などが入ってくるのではないかと思います。

百聞は一見にしかず
いくら遠くから人づてに聞いたり書籍で調べたりしても、自分の目で確かめることには勝てません。
私はよく夫の仕事のつきあいで(夫は通訳ガイドをしています)旅程に入っている観光地の下見に行くのですが、駐車場から観光スポットまでの導線やトイレ事情などは、さすがの「るるぶ」にも載っていません。
やはり、自分の生の目で確かめることの必要性を感じます。

自分の目で確かめるという作業を、日本という国だけでなくもっと外の世界にも広げていければ更に多くの刺激を受けることができ、自分と向き合う時間にもつながるのではないかと思います。

本音が大事だと思うのです。
自分のことを良く知らないとこれからは生きていけない。
これからは信頼と共感が大事。
そのためにはどのようにしたら信頼を得るようになるかを考えていかなければならない。
自然とのかかわりの中で直観力をどう働かせていくか。
自分ごとができる子どもを作りたい

また、経産省「未来の教育」の中島さち子先生の資料を紹介していましたのでこちらにも載せておきます(中島先生はジャズピアニストで、STEAM教育を提唱している先生です)。

●これからの学校像(大谷先生)

今までの学校は幼少中高大一直線のレールがあって学年ごとにいくことが普通でした。
それも、同じペースでいくきわめて幹線的な一直線。
大学に行くための高校の3年、高校にいくための中学の3年、中学に行くための小学の6年、という感じで進んでいます。

それがおかしい、ということに気がついている人が一部いると思うのですが、安心感に縛られないと自分はだめではないかという錯覚に陥ってしまうのです。

世の中をよくよく見渡してみると、今では大学院に行く人もいるし、英語を学ぶ人もいます。
自分の住んでいる地域の慣習や文化を感じたりもします。

大谷先生は「複雑に進んでいる本来の社会の中に学校という場もがっつりと絡まっていって社会の一部として従来の寺子屋みたいな感じでやっていけばいいのではないか」と述べています。
属性・年齢関係なくやっていき、学校の先生自ら「子どもと一緒に未来を変えていく」というマインドに変えていくのです。
それが親のニーズを変えていくことにつながると思います。
従来の「偏差値」を指導するような価値観ではなく、そうではない、ということを大人が子供に伝えていくことの大切さを感じます。

今は、いくら素晴らしいプログラムがあってもそこに身を置いていいのかという一歩踏み出す勇気がないのではないか、と大谷先生は感じています。
とんがっている学校をみてもそのように感じているそうです。

●インフィニティ国際学院ではどういうことをする?(大谷先生)

インフィニティ国際学院は「偶然の出会いを旅の中で実現しようという学校」と説明しています。
一年目は英語力をあげるためフィリピンへ。
二年目は22か国をまわる。
一年を通して旅をする中でいろいろな体験をする。
自らの出会い、発見が自分のキャリアを考え、その先に自分が学びたい高等教育があると自分の中で腹落ちするそうです。

これから社会に合わせた自分ではなく、自分が社会を選ぶ時代。
主人公は自分、ということをできれば中学生位から意識を持つようにするといいのではないか、と大谷先生。

また、今後は広域通信制の学校にも注目しているようで、N高の名前も出てきました。
教育って何?学校って何?という気づきを持った生徒が、自分で学べる時間を最大化して最低限の高校卒業程度のレポートを出す。
このような広域通信制の学校はこの先普通に選択肢のひとつになるのでは、と予測しています。
N高は現在生徒1万人くらい。
30%くらいの時間で高校に必要な単位の授業を終わらせ、残りの時間は自分の目的に沿った学びをしたり、実際に社会勉強をしたりする時間にあてます。

また、これからはリベラルアーツが必要であるとのこと(ここでいうリベラルアーツというのは、幅広い一般教養を身につける、というよりも自分に対する問いをたてる力のことをいうのではないかと私は解釈しました)。
そのためには精神性、仏教、感性(自分は何が好きかを敏感に判断できる能力)を磨くことの必要性を感じました。

今回、コロナでオンラインの授業をいろいろな人が体験できたのはよかったのではないかと思います。
大谷先生も、学校は「コロナが終わったから元に戻す」のではなく、これからも生かすという形でやるのがよいのではないかと提案しています。

また、発展型として海外に留学するだけでなく、3か月等の短いスパンにまで拡大して国内留学をするのも選択肢の一つではないかと提案しています。
自分の入った学校にとどまらない広い学びができます。

大谷先生は地域にしか行けない、ではなくて学びの環境に応じて行くようなダイナミックな学校システムが作れないかという妄想をしているようです。
その時に相互単位認定ができるようなことを考えているそうです。

単位互換に関しては私も以前より自分の妄想を何人かの知人に提案したことがあります。
海外では当たり前のようにバカンス(3週間程度の休みを年2回等)を取り、家族単位で国外旅行をする習慣があります。
日本では社会構造を変えなければならないので厳しいかもしれません。
ただ、同じような感覚で短期の国内留学をして、その間に取得した単位を所属する学校で認めてもらう制度などがあったら面白いのではないかと個人的には思います。

更に、これからの学校のありかたと、現状の公立学校についても言及されていました。

学校でオンラインもある
世界中をつなげる、もある
これからは小学校の頃から大学みたいに得意なものを教えるという方式にするのがいいのではないか
教科担任制に小学校もかわってきている
コロナ第2派、第3派がでてきたとき、首都圏分散で学校にいってもいいのではないか
世界のこと、地球のことをみてローカルなことをやる
シンクロ―カリー、アットローカリー(現地で考え、行動する)
そうなると、留学の意味も変わり、駐在の意味も変わる
留学とかが「こうつなげなければならない」ところだけ行けばいい
イメージがつなげれば特に行く必要ない

安居先生のような革新的な考え方をしても文科省、教育委員会の理解が進まないと実現できない
やれるところから我々がやっていかないといけないのではないか

私学にいるから簡単にいえるのであって、公立の学校でドルトンのような発想をしてもなかなか理解してもらえない
子ども、保護者はなにしているの?となる
コロナでのオンライン授業の進め方がきついのです
公立の先生方の思いを形にする教育委員会の大転換をはからないと、このまま生徒数が減ってしまうだろうと思います

●中央政府は学校を牛耳ることができない(船橋先生)

現状の公立の学校教育について船橋先生が次のようにげんきゅうされていました。

今回のコロナ禍においては日本のいいところ、悪いところがでてきてしまったようなかたちになっている
中央政府が牛耳れない
小中学校までは一体となっている
それにくらべ、高校は自由度は高い

まずは、先進的な県の知事をくどくのがいいのではないか
田舎に引っ越そうというがニーズがあれば、そういう学校に行かせればいいのでは

優秀なインターナショナルの先生は日本には来たがらない
いい学校がないといい先生がいかない
シンガポールにインターナショナルの多いのは環境がいいからだと思う
感度のいい知事は発信していくと転居者が増えるのではないかと期待している

子どもは、よそのお姉さんの言うことを信じる、ということもある
斜めのアドバイスは効果的であり、そういう意味では「トビタテ!」はいいのではないか
成功体験、わくわく体験をしていきたい

●憧れの大人、カッコイイ大人(安居先生)

安居先生は憧れの大人、カッコイイ大人像として

自分の意見をしっかり言ってくれる大人
なにかに打ち込める大人

と挙げています。
自分でルールを決めてやる(自分なりの価値観に基づく行動指針を決めてやる)と、ああしたほうがいい、こうしたほうがいいとなり、それは自分で生きてきた経験値で尺度をはかることとなります。

未来の子どもたちはこの先の大人になることにはどこまで世界が広がっていくのかを創造していくことが大事です。
そのためには、今までの常識を捨てて、子どもと一緒に学ぼうという姿勢が必要です。
「子どもを教育していく」と、やらざるを得なくなってしまいます。
ではなく、「子どもと一緒に成長していくようなことを常に考えていく」というスタイルです。

●校長先生が裁量権を持っている(安居先生)

日本の学校は行政、教育委員会以上に校長先生が裁量権を持っているようです。
裏を返せば、校長先生が先進的な考えであれば第二・第三の木村先生(元大空小校長)、工藤先生(横浜創成中・高校長)、西郷先生(元桜丘中校長)のような学校が誕生する可能性を秘めています。

あとに続かない理由として、安居先生は以下のように挙げています。

校長先生は裁量権をもっている
校長は決める権限を持っている
法令違反をしたときだけ教育委員会
教育現場の人は知らないし、あまり触れたくない部分

あと3年すれば定年だからリスクをとらない校長が多い
システム上の問題があるのではないか
リスクを取れるような環境を整えたら変わってくるのでは

そして、これからの社会、過去の経験では活きないので、謙虚になることが必要であると発言しています。
ついつい子供に期待をかけてしまいがちだけど、生きているだけでいいじゃない!という感覚でいいのではないかという大人側の心のゆとりがカギとなりそうです。

創造させることはいいんだけど、あとは本人に任せる
自分で決めさせ行動させる
大人はそのための情報提供、きっかけづくりに徹するため、子どもは日頃からなにに興味があるかを探っておく
導こうと強引にすれば子どもの反発を生むのではないかと思う
強引にしないほうが実は親も楽

自分の経験値をもとに子どもにいってもむだ
任せる
情報は与える
でも決めさせる
本人にやらせる
口出しをする地元の公立は、昭和型の指導をしても生きる力をそぐだけ

ここで、放っておかれると不安になるのでは?というのが最大の壁になってくる
20年前の価値観で考えてしまう
子どもだって不安なのに大人だけ言いたいことだけ言うな、というはなし
子どもの不安を共有してあげることが大事
みんな人間勝手だから傷つきたくない

だからこそ、大人もわからない、不安なところがあるということを見せてもいいのでは
立場的に大人は絶対間違わない、子どもにとっては聞けばわかるという存在というのがいいのではないか

●月イチコーディネーターを募集したところ。。。(安居先生)

貴重な学びをさせたいときに、学校と留学生、地域と留学生をつなぐ人がそろっていないことが問題と考え行動を起こしたところ、全国から20校ほどが名乗りをあげました。
地域の人こそ、外とつなぐ、違うコミュニティに行くことで自分たちの強みを見せていくことができるのではないかと思います。

リーダーの発掘と、ネットワークを活かしていこうというこの活動。
これからも注視していきたいと思います。

まとめ

今回はかなり長文のレポートにお付き合いいただき、ありがとうございました。

今回のキーワード
・地方
・寺子屋
・留学
・オンライン(オフラインとのハイブリッド)

地域格差や学校間格差が顕著となっている昨今、寺子屋のような第三の学び舎でコーチやコーディネーターを育成し、海外も含めた新たな視点をもち視野を広げることがこれからの社会には重要な要素となってきます。

大人は子どもたちを時には情報提供をし、時にはヒントを与えつつ、最終決定は本人に委ねる、という見守りスタイルを確立していきたいところです。

最後になりますが、以前、「国外逃亡のしかた(欧州留学のすすめ)」という白川寧々さんのトークイベントの記事を載せました。
留学という選択肢の一つとして参考になるかと思いますので、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

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