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公開1周年、『トップガン マーヴェリック』レビュー

グランドシネマサンシャイン池袋は、上映開始から1年間、1日も休まずこの映画を上映し続け、現在も記録更新中だそうだ。私もこの映画館でIMAXを2回、4DXを1回鑑賞させてもらった。実際、この作品の良さは、大画面の戦闘機の迫力と轟音に包まれなくては伝わらないだろう。『トップガン マーヴェリック』は、映画館で観れなかったor生まれてなかった人たちが後になって羨むような、圧倒的体験を与えてくれる。

昨年の5月末に映画館で見たときは、何度も感嘆と笑いの声が客席から漏れ、最後に拍手まで起きた。こんな映画館体験は生まれて初めてだった。

オープニングから前作へのリスペクトで溢れているが、途中、それ以外にも多くの作品が頭に浮かぶ。マッハ10を出すシーンは『ライトスタッフ』や『トップガン』に影響をうけたアニメ『マクロスプラス』。クライマックスは『スターウォーズ』のデススター攻略などなど。しかし、驚くべきことに、『トップガン マーヴェリック』は、それら参照したであろう作品の興奮を次々と超えていってしまう。

また、そうした興奮や臨場感を増すためなのか、観客の目線と同化するようなショットが随所に挟まれているのも印象的だ。登場人物たちが、トム・クルーズの予想外の行動に驚き、見守る様は、まるで観客として見ている我々のようだ。

そうしたメタな構造は、将来的に無人機だけで戦いパイロットは不要になると説くエド・ハリスに対して、トムが「But, Not Today」と返すところで決定的になる。これはただの戦闘機映画ではなく、俳優とアクションの未来についての映画でもあるのだ。

そして、何百時間にもわたって、実際に飛んでいる戦闘機の中をIMAXカメラで撮影し、それぞれのリアルな表情を捉え編集してみせたことで、アクションと俳優の可能性を提示してみせた。

チームをまとめ上げるためにビーチでフットボールをする場面。トム・クルーズの顔のクローズアップは、前作でトニー・スコット監督が撮ったビーチバレーを思い出させるだけでなく(トニー・スコットにしか撮れないトムの「あの顔」!)、これからの映画を担う若い俳優たちに優しく微笑みかけているようでもある。感動的なシーンだ。

2020年以降少し足が遠のいてしまっていたとき、映画の、そして映画館の可能性を感じさせるこの作品に巡り会えたことを感謝したい。まだ体験していない方は、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。

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監督:ジョセフ・コシンスキー(『トロン:レガシー』、『オブリビオン』、『オンリー・ザ・ブレイブ』)

主演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー(『オンリー・ザ・ブレイブ』)、ジェニファー・コネリー(『オンリー・ザ・ブレイブ』)、ジョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマン、エド・ハリス、ヴァル・キルマー

音楽:ハロルド・フォルターメイヤー、レディー・ガガ、ハンス・ジマー

撮影:クラウディオ・ミランダ(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『トロン:レガシー』、『オブリビオン』、『オンリー・ザ・ブレイブ』)

編集:エディ・ハミルトン(『キック・アス』、『キングスマン』、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』)

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