第11.5話

〜入部初日の放課後〜


「いよいよだな!」
「だね。」
「無理だけはすんなよ?」
「ははは。」
「まぁ、その辺はいくら言っても聞かねぇからなぁ」
「そんなことないよ。」


戯けながら部活に向かう準備をする克己


「どう?緊張してたりする??」


そう言いながら歩み寄ってくる里奈
克己は首を傾げながら


「どうだろ?」
「克己が緊張してるとこ、見たことない気がするなぁ…」
「そうねぇ、たしかに」


優希也はそう言いながら斜め上を見上げる
里奈は相槌を打つ


「俺だって緊張くらいするよ。」


苦笑いしながら2人にそっと伝えるように話すと同時に席を立つ克己
あまりの出来事に思わず『マジか?』『いつ?』など、2人は問い掛けそうになったが口にするのを控えた。
これから部活があるだけでなく、新しい環境に身を投じる仲間を今引き止めてまで聞くことではないと判断したからだ。


「じゃあ行ってくるね。」
「おう!」
「頑張ってね!」


教室に残る2人を背にして部活動に向かう克己
その後ろ姿を見送る2人…


「いよいよかぁ…」


そう呟く優希也の表情はどこか寂しげだ


「そういえば、お前の方はいつから始まんだ?」
「本格的には5月のゴールデンウィーク明けからみたい」
「そうかぁ…」
「それまでにバイト決めないとねー」
「もう目星はついてんのか?」
「まだこれから、、どこか良いバイトないかなぁって感じ」


少し遠くを見るような視線のまま『お前なら大概どこでも大丈夫だろ』と思う優希也
そんなことを直接言えるわけもなく


「どこか拾ってくれたら御の字だな!ドラフトで言うなら下位指名…いや育成か?」


と、嫌味たらしく言う。
もちろん本心ではないが、つい口にしてしまった。

優希也は自覚している…

寂しいのだということを

その理由もわかっている…

楽しかったのだ!

この半年間が…

楽しすぎたのだ。。。

「本当、何位でも良いから引っ掛かってほしいね!」


里奈は笑いながら返す
優希也の気持ちを知ってか知らずか…
いや、知る由もないのだが
いつも憎まれ口を叩かれたら喰って掛かるのに "こういうとき"に限っていつもと違う返しをしてくる…
それは天性のモノなのだがそれにより優希也は…優希也の心は救われるのであった。
照れくさいため素直に言えないが、心の中で『ありがとう』とつぶやく優希也だが


「じゃあ、さっさと帰ってバイト探しするしかないな!」


そう戯けながら
照れくさい素振りを見せないように言うと


「手伝ってくれるの?やったー!ありがとう!!一人じゃなかなか決められなくって、どうしようかなぁっえ思ってたとこなんだ!助かる!!」


しまった、と思ったときには時すでに遅し…
ルンルンに目が輝いてる里奈の表情を見てNOとは言えず……渋々OKを出す優希也。


(言葉遣いには気をつけよう…)


ため息混じりにそうボヤきながら教室を出る優希也と、満面の笑みで教室を後にする里奈


(まぁいいか)


里奈の笑顔を見てると自然と思う
なんだかんだ言ってもこの腐れ縁は強く深くつながっているのだ。


「決まるまで毎日つきあってもらおうかな?」
「それはイヤだ!」


茶目っ気たっぷりな里奈の発言に対して即座に返答する
そして…


「「ゲームする時間がなくなる!!」」


優希也が続け様に発しようとした言葉に里奈が被せる
それは耳にタコができるほどに聞いてきた優希也の常套句
そのため被せることは容易だった。


「てめっ…」
「はははははー!」


そうこうしてるうちに裏門に差しかかった。
グランドの方を振り返りながら


(頑張れよ)


優希也はそう心の中でつぶやいた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?