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和菓子とコミュニティ

和菓子は時に不親切だ。
コンテクストが共有されていないと伝わらないコトがあまりにも多い。
「伝統」と「わかりやすさ」はトレードオフであり、
現代の消費者に嗜好に合わせるには一定の「わかりやすさ」が必要である。
特有の「わかりにくさ」が潜在的なお客様を遠ざけ、
現代の和菓子離れに繋がっている。

しかし、文化が途絶えた訳ではない。
むしろ茶道や伝統的な和菓子にまつわるコミュニティは、
そのハイコンテクストさゆえ実に強固だ。
現在茶道と呼ばれる茶の湯が完成したとされている江戸時代から
400年以上たった今でも全国各地に脈々と息づいている。

そこには分かる人にしか分からない世界がある。
差し出された和菓子に、飾られた花に、壁にかかった掛け軸に
思考を巡らせ五感で空間を、体験を楽しむ。
ただそのどれもが前提知識が共有されていないと
体験としては未完成で終わりかねない。
差し出せれた菓子が何を模したものなのか、
菓銘の意味がわからなければ脳裏に写し、思いを馳せることもできない。
しかし、それさえも一座建立の相互コミュニケーション
として成立させる懐の深さがある。
その懐の深さが今日まで伝統とコミュニティを守ってこれた
大きな要因ではないかと推測する。
現代においては非日常を味わえる貴重な場でもある。

和菓子は文化の変革期にいる。
現代人の嗜好が変わっているなら、それに合わせて和菓子側も「わかりやすさ」を意識する必要があるのではないでしょうか。
味をアレンジするのもひとつでしょうし、
形や味を変えずとも珈琲や紅茶と楽しむ現代の日常に近い体験を提供し、
和菓子への入り口を広げるのもそのひとつ。
一座建立の精神が今、求められている。


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