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和菓子屋というメディア

「勝浦の日常垂れ流し型ローカルメディア」
和菓子屋もローカルメディアも、
その地域の魅力や個性を伝える役割がある。
僕たちが考える個性とは、作るものではなく、
今そこにあるもの。
これは都市の価値観に合わせ、
同質化した現状への意思表示。

和菓子屋はローカルメディアだ!

徳島県勝浦町。
人口5000人ほどの田舎町で小さな和菓子店を営んでいる。
「勝浦を盛り上げたい!」
「勝浦町に人を呼べる和菓子屋になりたい!」
幼い時から漠然とそう思っていたが、
現実は非常に厳しく、勝浦町の人口は毎年約80人ほど自然減している。
いつ合併されて勝浦という名前がなくなるかもわからない。
地方創生待った無しの状況である。
過疎化していく街の中で、いかに事業を継承していくかを考えるために
参考にしようと思ったのは、いわゆる老舗と言われる和菓子店。
地域との結びつきの強さを感じ、
これからの時代に即した地域と和菓子屋の関係性を考えることを数年のテーマとすることに決めた。
地元のNPOに理事として入り、同世代の人たちとまちづくりに関わったりと、
地方創生の現場に飛び込んだ。
そこで見たのは疲弊していく現場。
どれも長続きしそうには見えなかった。
都会の人たちにウケそうな着飾った姿を発信していることにも違和感を覚えた。
それでも地元の人たちは必死に知恵を絞り、
できることから懸命に行動を起こしている。
そんな中で和菓子屋として地域のためにできることに気づいた。
菓子を通して文化や風習、伝統を伝えること。
それは和菓子の大切な役割。
時代ごとに見た目や味が変化してきても、
変わらず残った菓子文化の本質の一つだ。
見た目がほとんど同じ羊羹でも、
その地域の川であったり、地域に残された民話や伝説にちなんだ、
名前をつけられたものがある。
それが和菓子屋がローカルメディアである理由だ。
たとえ勝浦の名前が地図から消えても、
その歴史は菓子とともに残すことはできると考えている。

なぜ今ローカルメディアなのか

日本の菓子文化は、その時代ごとに外来文化の影響を受けながらも自国の文化の中に消化・吸収し新たな日本の御菓子として常に進化・変化を遂げてきた歴史があります。
明治時代に言葉の上では和菓子と洋菓子に分けられた後も、菓子そのものは常に両義性を持って多様化しながらも進化・変化を続けてきました。
インターネットの普及により、全国・全世界の情報がなめらかにつながる現代において、この流れはさらに加速しており、特にここ数年間の菓子のバリエーションの多様化と同質化は過去の比ではなく急激に進んでいます。
コモディティ化し同質化した菓子、没個性な菓子が日本に溢れるのも時間の問題だと思われます。

これは地方創生においても共通する点があります。
都市化による同質化、没個性。
都市の価値観に合わせたものづくり。
ファッションものづくりの流れの中では
長く続かせようとする活動、企業は生きづらい。
組織として疲弊するのはもちろん、都市の価値観に合わせようとすることで、
地域の自信を喪失させてしまう。

だから僕は、
地域の価値観をありのまま伝えたい。
そのために垂れ流す。
地域の個性は、作るものではなく、今あるものだと信じているからだ。
これは、都市の価値観に合わせ、同質化した現状に対する意思表明である。
あらゆるものが都市化した時代の、
使い捨てのファッションものづくりに対して、
和菓子屋としてどう向き合うかを考えていきたい。
伝わりやすい、見やすいデザインは必要ではあるが、
コンテンツ自体を都市の価値観に合わせる必要はない。

和菓子屋の個性はメディアとしての役割において顕在化する。
菓子を通してその土地の文化や風習、季節感や伝統を伝えること。
同質化した時代に求められる個性のひとつだと考えます。
ならばより伝えることに特化したい。
菓子もアウトプットの一つ。
それがローカルメディアを始めようと思った理由です。

これは和菓子再興戦略のプロローグ。
知人の言葉を借りるなら「ニッチ発のマスアプローチ」
近い将来の菓子屋あり方のひとつとして提示したい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!