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生誕80年・没後40年 ジョン・レノンとともに読書を⑤

○『問いつめられたパパとママの本』伊丹十三 

 JLは、ショーンが生まれてから5年間ハウスハズバンド(主夫)をしていました。ちょうどその頃、JLと同様、ハウスハズバンド(主夫)なんて耳慣れない言葉を世に知らしめた人が、監督業に乗り出す前の伊丹十三でした。1979年に公開された『もう頬づえはつかない』という映画で、ちょっと情けない中年男役をあてられた伊丹十三は、上手な洗濯物の干しかたを主演の桃井かおりに云々するというシーンを見事に演じていて、ハウスハズバンドの片鱗をうかがわせていました。

 もっとも、この本、じつは、伊丹十三がパパになる前、名前も確か「一三」だった頃雑誌に連載していたエッセイをまとめたものなんですが、パパになった後で書いたあとがきがなかなか興味深いので、非常に大雑把に紹介しますと(詳しくは本書をお読みくださいネ)……。

 伊丹十三は、子供が生まれたとき、奥さん(俳優の宮本信子ですね)と、親がよく子供にいう嘘、例えば「電話をいじっちゃダメよ。ほら、もう電話、壊れちゃった。遊ぶのおしまいよ」とか「そういうことは大人になったらわかるからね」といった類の嘘は絶対つかないようにしようと決めたそうです。そして、はたと気づいてしまいます。こうした嘘をつかないとなると、親の権威なんてものはなくなって、子供と対等に向き合わなきゃならない、それまでのどこか上下関係を前提とした親子関係では通用しない、と。もちろんこれは、男女関係、教師対生徒の関係、職場関係などにも言えることで、そうして個対個で対等に向き合うことを実践すると、結果的に、徹底的な自由と平等が訪れてしまう、権威や管理や差別から人間を解放してしまう、と。これは伊丹十三が、デンマークの小学校低学年で行われている性教育の現場を取材しての感想でもあるのですが、なんともJL的というか、ジョン&ヨーコ的な考え方ではないでしょうか。

 この本は、ペアレンティング本の体裁を取りながら、一種の科学エッセイになっています。「空ハナゼ青イノ?」「ローソクノ火ハ吹クト消エルノニ炭ノ火は吹クトドウシテオコルノ?」「ネコノ眼ハなぜ光ルノ?」などなど、答えられないと今ならチコちゃんに叱られそうなことがたくさん載っていて、楽しめますヨ。

文・絵 清水家!(弟)

※記事上の写真は、左から『JOHN LENNON ANTHOLOGY』のBOOK(ライナーノーツですね)と、『問いつめられたパパとママの本』の、現在の中公文庫のものとは装丁が異なる本(新潮文庫とかつての中公文庫)。

 ↓こんなミニプレスを作りました。ジュンク堂書店吉祥寺店6階レジ付近で開催中の選書フェア『ブックマンション×ジュンク堂書店吉祥寺店 コラボ企画 第一弾』』コーナー、清水家!の棚に置いてあります(12月31日まで)。よろしければお持ち帰りください。

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