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MARVELとは真逆!ジェームズ・ガン監督にしか撮れない最凶ヒーロー映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』紹介

8月14日から公開された『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』。スーパーマンやバットマンなどに登場するヴィラン(悪役)達によって結成された特殊部隊が不可能な任務に挑むアクション映画だ。

SNSなどを見てると、勘違いしてる方もいるが、今作は2016年に製作された『スーサイド・スクワッド』の続編ではなく、新たにリブートされた作品となっている。本作の製作経緯や登場キャラクター達の背景などについては、以前の記事でまとめたので、気になる人はチェックして欲しい。

製作発表された時から、公開を心待ちにしていた作品。既に字幕版で2回観たが、これが予想以上の傑作だった。今回の記事では、映画の感想とともに魅力を書いていきたい。

【ブラックかつユニークでPOP!ジェームズ・ガンの才能が炸裂した脚本が素晴らしい】

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ワーナーが好き勝手に作って良いと後押ししただけあって、本作はブラックユーモアとゴア描写満載の、ジェームス・ガン監督の作風が全面に押し出された作品となっている。

ハーレイ・クインが可愛いから観たいとか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのようなポップなヒーロー映画を想像してる人には、けっこうな毒を含んだ作品になっていることを先に伝えておきたい。
(ただしハーレイ・クインは安定して可愛いので、その点はご安心を)

※PG15だけあって、ゴア描写はしっかりあるので、苦手な人は要注意!

本作はまず、脚本が素晴らしい。
ヒーロー映画に戦争映画、怪獣映画と、さまざまな要素が詰め込まれたうえに、政治風刺や社会的メッセージまで入れて綺麗にまとめているのだから、ガン監督、本当天才というしかない。

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本作が普通のヒーロー映画と違うのは、スーサイドスクワッドは、ヒーローではなくヴィラン達で結成されたチームということ。メンバーは、極悪人というよりは何かしらの理由で、社会に適応できなかったはぐれ者達として描かれている。合衆国政府から使い捨てにされる存在だ。

ヴィランという存在だからこそ、人を殺すことに迷いがないし、あっさり死んだりする。本作のスーサイドスクワッドのメンバーは全員で14人。果たして誰が生き残るか…そういったデスゲーム的展開としても観るのも楽しい。通常のヒーロー映画では考えられないことが起きるという点が本作の面白さに繋がっている。

「悪いと思ってた人達が実はいい人達でした」というような白けた展開もない。善人とはいえないが、根っからのクズでもない。過去に『スーパー!』(2011)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを撮ってきた監督だけあって、この辺りのバランス感覚も上手い。

結果的に、MARVEL作品とはあらゆる意味で真逆の存在だし、MARVEL&ディズニーではできないことをDC&ワーナーでやってるという点も面白い。

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劇中のキャラクターの台詞を借りるなら、『社会の底辺にいる嫌われ者集団』。そんな彼等が世界を救うという構図自体が皮肉が効いているし痛快なのだ。

改めて脚本を見てみると、ガン監督がこれまでのキャリアで培ったものが、全て反映されてるようにも思える。好きなものを詰め込みながら、エンターテイメントとしてきっちり仕上げる、ガン監督の手腕にただただ脱帽してしまう。

【多彩なアクションと強烈過ぎるキャラクター達に魅了される】

ジェームス・ガン監督のキャリア史上、最も規模の大きい撮影となった本作はアクション描写も凄い。驚いたのは冒頭のビーチの場面、ロケかと思っていたら、何とスタジオにビーチを作ったとのこと。

他にも劇中のジャングルや、ルナ将軍の宮殿なども、ロケではなくスタジオ内にセットを組んでいる。こうしたスケールの大きさと予算の掛け方はハリウッドだからこそできることだろう。それだけに劇中の描写もど派手。映画が進むにつれ、破壊と爆破が景気よく連発される、それが爽快で気持ちいい。

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各キャラクターのアクションにも注目したい。個人的にお気に入りなのは、ジャングルの中で、ブラッドスポートとピースメーカーがお互いの腕を競い合う場面。ユニークな殺し方自体も面白いが、ピースメーカーを演じたジョン・シナは、プロレスラーだけあって動きがキレッキレ。丸太のような太い腕で暴れまわる姿は、それだけで面白い。

そして、本作にはガン監督がこれまでの作品の中でも、最もお気に入りというアクションシーンがある。それが捕まったハーレイが脱出を図る一連のシーン。この流れるようなアクションもリズミカルかつ痛快。それでなくても、今作のハーレイはやたら走るシーンが多くて過去2作に比べても身体を張っているという印象が強い。

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素晴らしい脚本と豪華なセット、さらに個性的なキャラクター達が映画を盛り上げる。やってる事はえぐいけど、見た目が可愛いキング・シャークや、母親のトラウマを抱えたポルカドットマンなど、スーサイドスクワッドのメンバーはもちろん、指示を出す政府側のメンバーまで全員見事にキャラが立ちまくっている。登場人物全員、癖が強いのだけど、だからこそより人間味が溢れている。

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ブラッドスポートとピースメーカーのライバル関係や、フラッグ大佐とハーレイ・クインの友情、ブラッドスポートとラットキャッチャー2の疑似父娘的な繋がりなど、各キャラクター達の関係性も本作の萌える点だ。
きっと映画を観終わる頃には、自分の推しキャラクターが見つかることだろう。

【親和性抜群!映画を盛り上げる名曲の数々】

ジェームズ・ガン監督作品の特徴として、音楽のセレクトの良さが挙げられるのだが、本作も例に漏れず。ジョニー・キャッシュ、ルイ・プリマなど往年のアーティストの名曲の数々が観る者の感情を盛り立てる。

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個人的に本作でも最もお気に入りの場面が、雨の中、スーサイドスクワッドのメンバーがバスから降り立つ一連の場面。ここで掛かるのが、ピクシーズの『Hey』という曲だが、この場面と曲の親和性が最高。このシーンだけでも何回でも繰り返し観たい。

また、往年のアーティストだけでなく、シンガーソングライターとして高い評価を得ている新進気鋭のアーティスト、グランド・サンも楽曲提供をしている。本国の予告編でも流れているジェシー・レイズとのデュエット曲『Rain』も名曲。MVも格好良いのだが、本作の劇中でこの曲が使用されてる場面も渋くて格好良い!

ということで、いかがだっただろうか。『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』。今年公開されたハリウッド大作の中でも期待を裏切らない傑作となっている。そして、スケールの大きさや音響などは、やはり映画館向け。

このご時世なので、強くは勧められないが、気になってる人は是非チェックしてみて欲しい。


※注意!ここから下記は本編の小ネタや裏話などをまとめたものになります。鑑賞してからご覧下さい。


【ネタバレ注意!小ネタ&裏話集】

今回のスースクには、実は様々な小ネタが仕掛けられていたり、裏話が存在する。ここではその一片を紹介していきたい。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのキャラクターがカメオ出演!
実は本作には、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に出演するマンティス役ことポム・クレメンティーフがカメオ出演している。登場するのは、フラッグ大佐達がバーを訪れる場面。バーの内部を映したときに、ダンサー達にカメラが向くが、その中で一際目立っている女性こそポム・クレメンティーフだ。

ちなみに本国で公開された時は、あまり話題にならなかったらしく、ガン監督も戸惑ったとか。日本では本国の情報が伝わっているためか、早い段階でポム・クレメンティーフが出演していることを指摘している人も見かけられた。

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②【キングシャークの中の人と「怪獣出てきましたぞ」おじさんは同一人物!】
シルベルスタ・スタローンが声の出演をしていることでも知られるキングシャーク。それとは別に撮影時にはキングシャークを動かす人=中の人がいるのだが、実は本作の政府組織のメンバーと同一人物。それが予告編で「怪獣出ましたぞ」というオタク発言(本編では改定されてるが)でお馴染みの眼鏡おじさんことスティーヴ・アギー。

ジェームズ・ガン監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)に出演してるほか、ジェームズ・ガン製作の『ブライトバーン 恐怖の拡散者』(2019)年にも出演している。下の集合写真からも、その存在を確認できる。というか、キングシャークってこんな風に撮っていたんだ。

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③【出番はイタチ役だけじゃない!ジェームズ・ガン作品お馴染みの俳優のユニークなカメオ出演】
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のロケット役をはじめ、ジェームズガン監督作品常連のショーン・ガン。今作ではイタチこと、ウィーゼルの中の人を演じているが、実はそれ以外にも出演している。

それが序盤、刑務所の中でポルカ・ドットマンがメンバーに加わる場面。この時にポルカ・ドットマンにひどい言葉を投げ掛けるスキンヘッドの男がショーン・ガン。顔のアップも映すので気付いた人も多いのでは。

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【ハーレイ視点でのユニークな演出は、ゲームが元ネタ!】
ハーレイが脱出する際、相手を倒すたび、血の代わりに花束が飛び散るというユニークな演出。これは実は2012年に発売された『ロリポップチェーンソー』という18禁ゲームからインスピレーションを得たとのこと。

このゲームの海外版のシナリオ監修を担当したのがガン監督ということで、その繋がりかららしい。血ではなく花というところが、ハーレイのキャラクターを合っててとてもユニーク。

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これより下記は本作の裏話を扱った記事をいくつか挙げさせていただいた。特に洋画や海外ドラマ、アメコミなどの海外ポップカルチャー専門メディアの『THE RIVER』さんが本作にまつわるエピソードを多数挙げている。

より深く本作を知りたい人は、『THE RIVER』さんのサイトにいくと実に様々な記事があるのでお薦めだ。

上記記事は、本作の終盤の展開についてのネタバレ。これは結構衝撃的。

上記記事はエンドロール中、後のポストクレジットシーンについての解説。あのキャラの意外な話や今後の展開についてなど。


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