中野真人

日々のこと。

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最近の記事

子どもを待つ、そして子どもを信じる

 2024年4月14日、「軽度知的障害のある子ども・青年の発達と教育」(全国障害問題研究会兵庫支部主催)に参加した。元治智子さんと三木裕和さんの話を聞いた。  元治さんの話で、印象的だったのは、特別支援学級の子どもたちに対して、先生が「この子はやったらできるんです」と言う先生の話。これに対して、確かに「やったらできる」時もある。調子のよいときには、いつもはできないこともスラスラできてしまうときもある、起伏がある、と話す。この話を聞いて、「やったらできるんです」と声をかけてい

    • 実務家教員に関する小論

       最近、実務家教員に関して調べていた。少し忙しくなってきたのでいったん自分の研究に戻ることにしようと思うが、せっかくなので中途半端な内容ではあるが、少しまとめてみようと思う。実務家教員に関しては、ある程度のことが分かってきた。  教職大学院は実務家教員を全体の4割配置することが義務付けられており、専門職大学院において義務付けられている3割を上回っている。これは専門職大学院の実情を踏まえたものだとされているが(徳永2014)、その実情は課題が山積している。実務家教員のいわゆる

      • 罪を犯した人は、それ相応の罰を受ければ良いのか

         罪を犯した人は、単にそれ相応の罰を受ければ良いのか。そして、罪を「償う」とはどういうことか。島根あさひ社会復帰促進センター(以下、島根あさひ)のあるプログラムでの様子を聞かせてもらった。島根あさひは映画『プリズン・サークル』(2020)でも話題になった。「TC(Therapeutic Community、回復共同体)」という更生プログラムを取り入れている。TCとは、イギリスの精神病院ではじまり、1960年代以降に欧米で広まった治療法のことで、問題を抱えた人同士が「対話」をす

        • ひろしま未来交流会に参加して

          3月8日(金)、ひろしま未来交流会に参加した。ずっと気になってはいたが、参加できずにいた。知っている人も参加するとのことで、少し安心して参加することができた。参加したメンバーで最初にテーマを決め、その後テーマに沿って話が進められていった。 まずは「ひろしま遺産」について。こういうものを作って認定していく。それを英語で発信していくことができれば良いのではないか。そんな話になった。その中で元宇品の海岸の話になり、面白かった。瀬戸内海に面する海岸で、砂浜になっていて人が海に出られ

        子どもを待つ、そして子どもを信じる

          教育を「教師ー生徒」の関係から拡大して捉えていく

          矢野利裕(2023)「教育と市場、ときどき身体:「新自由主義」批判を超えて」『現代思想』を読む。一方的に雑多なものがまとめられた概念である「新自由主義」を批判することが生産的な議論ではないのではないかという主張には、ある程度の説得力があったように思う。日本の教育学者のみならず、アメリカの教育学者の中でも、「新自由主義を批判すればいいや」といった風潮は存在するように思う。そうした中で、学校制度を痛烈に批判したイリイチが新自由主義者として名高いフリードマンの「教育バウチャー」を評

          教育を「教師ー生徒」の関係から拡大して捉えていく

          何かに頼って生きるのではなく、自律的に生きたいと思った今日この頃。

          今日は朝から右肩が痛い。筋肉が張った感じがするので、多分寝違えたのだと思うが、そのせいで何をするにも猫背のようになる。別に嫌なことがあったわけでもないのに、暗い気分になってくる。嫌な感じだ。 今まで私は、何らかの権威にすがって生きることに対して、抵抗感があった。誰もが聞きなじみのある権威だ。大学という権威にすがれば、「○○大学卒」であることを誇りに思い始めるかもしれない。先生という権威にすがれば、先生の言うことを何でも聞くようになるかもしれない。宗教という権威にすがれば、自

          何かに頼って生きるのではなく、自律的に生きたいと思った今日この頃。

          ドビュッシー「交響詩『海』」

          最近、ドビュッシーの「交響詩『海』」を聴くことが増えた。どこで知ったのか覚えていないが、結構気に入っている。 クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862-1918)は、フランスの作曲家。代表作は、今回取り上げる『海』や『夜想曲』等が挙げられる。一般的によく知られているのは、『月の光』や『アラベスク』、『夢』などだろうか。印象主義音楽と呼ばれる、20世紀初期のフランスに興ったクラシック音楽の流派の一つの先駆け的な人物でもある(本人は「印象派」と呼ばれるこ

          ドビュッシー「交響詩『海』」

          最近は「構成主義」です…かね…?

          今日は朝5時に起床した。とはいえ、あまり眠れた感じもしない。ずっと起きていたのと同じようなものかもしれない。今日も色々とやるべきことがあるので、昼間眠くなっても眠るわけにはいかない。 最近は構成主義について調べている。少し前に興味があって調べていたことがあるが、大ざっぱな構成主義に対する認識を確認する程度だった。今は「心理学的構成主義」と「社会的構成主義」、「プラグマティックな社会的構成主義」など、ピアジェやヴィゴツキーなどの訳書にあたりながら丁寧に調べている。 色々と確

          最近は「構成主義」です…かね…?

          発達障害の当事者と付き合うことを通して

          11月に入ったと思えないほどの暖かさ。異常気象なのか、何なのか…。まぁ、秋が好きな私としては、願ったり叶ったりと言った感じ。 最近、アルバイトの関係で、発達障害のある大人の方と話をする機会が多い。その人は、一般的に「おとなの発達障害」なんて言われるような、軽度発達障害という感じではない。思いっきり発達障害の特徴が前面に出ている感じの人だ。 その人と話していて思うのは、「発達障害も、ちゃんと障害だ」ということ。別に、だから悪い、というわけではない。ただ、「発達障害なんて、個

          発達障害の当事者と付き合うことを通して

          居所不明児童と児童虐待に関して

           居所不明児童。正式には、居所不明児童生徒と言い、義務教育期間にありながら不就学となっている小学生(児童)と中学生(生徒)を指す。今年、映画「怪物」で話題となった是枝裕和監督による代表作「誰も知らない」(2004年公開)も、「巣鴨子ども置き去り」という保護責任者遺棄事件に着想を得た作品だった。写真にある山寺香による『誰もボクを見ていない:なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(ポプラ社、2017年)は、2014年3月29日、埼玉県川口市のアパートの一室で背中を刃物で刺され

          居所不明児童と児童虐待に関して

          エビデンスをどう捉え、「つかう」のか〜教育実践記録の位置付けに関する考察をもとに〜

           ふとしたことをきっかけに、「エビデンスに基づく教育」に関して、教育においてエビデンスとされるものは何なのか、について考えていた。いろいろと資料を探していたところ、教育におけるエビデンスの階層性という議論に行きついた。これが下に示した図にあるようなものだが、これに基づいて考えればよさそうだ。  それにしても、エビデンスに基づく教育は、その議論がある程度まとまってきたとは言え、基本的に統計的なデータを大切にしたい人たちが中心に語ってきたこともあり、よく分からないところも多い。

          エビデンスをどう捉え、「つかう」のか〜教育実践記録の位置付けに関する考察をもとに〜

          数値データを盲信することの怖さ

          村上靖彦(2023)『客観性の落とし穴』(ちくまプリマ―新書)を読み終えた。「客観性と数値をそんなに信用して大丈夫だろうか」という視点から、客観性や数値だけでない、個人の経験やその語りに基づく「共同的な経験のダイナミズム」(p.123)に目を向けることの大切さを改めて考えさせられた。「それってあなたの感想でしょう?」と、ともすれば個人の感想や実感を捨て置き、客観的な数値ばかりを追いかけ信用する現在の風潮に対して、個人的な経験の生々しさを大切にすること、統治者の視点に立って語る

          数値データを盲信することの怖さ

          デジタルツールの活用は進むだろうが、それは「どうして可能なのか」に目を向けること

          この動画では、Apple認定校である関西大学初等部の様子が紹介されている。当たり前のようにiPadを全員が使い、「ミューズ学習」や自由な移動を伴った授業などを通して、ロジカル思考や創造的な活動を行う。 ギヨーム・ピトロン(2022)『なぜデジタル社会は「持続不可能」なのか』(原書房)を読んでいるために、こういった状況は「どのようにして」形作られてきたのか、その背景を知ることの重要性を思う。こうした子どもたちの活動の背景には、多くの鉱山労働者やデータセンターが存在しているし、

          デジタルツールの活用は進むだろうが、それは「どうして可能なのか」に目を向けること

          あらゆるモノにインターネットをつなげる

          デジタル社会の拡大は、今や止まることを知らない。「すべてのものをインターネットに接続する」という「IOT」は、1999年には誕生した言葉だ。「携帯電話、タブレット端末、温度計、時計、照明システム、エアコンなど、IOTの発展は目覚ましく、世界で200億個のモノが接続されている」(ギヨーム・ピトロン2022)。医療用のアプリケーションも登場し、スマホを持ち歩くだけで歩数から睡眠時間まで、あらゆることを調べてデータにしてくれる。そしてそれは蓄積される。 最近よく見るAppleのC

          あらゆるモノにインターネットをつなげる

          増大していく国防費に関して

           リトアニアで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を踏まえ、加盟国の国防費を国内総生産(GDP)の「最低2%」とすることを「永続的な約束」として申し合わせたという。これに伴って日本も、2027年度に防衛費をGDPの2%に引き上げる。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化していることを踏まえれば、仕方のないことのようにも思えるが、こういった緊張関係の中では、国防費を増大させていくしかないのだろうか。国防費を増やさず、現状維持を続けること

          増大していく国防費に関して

          LGBT法案に反対する保守派の動画を見てみた

           LGBT理解増進法案、いわゆるLGBT法案が2023年6月23日に施行された。この件については、いろんな意見が飛び交った。法案を推し進めたい人と、そうでない人。その背景にエマニュエル駐日大使やG7サミットがあったことも影響しているのかもしれない。  そのような中で、保守派の中でLGBT法案に強く反対していた人たちがいた。興味本位で、その人たちが主張を繰り広げている動画を見てみることにした。すると、気分が悪くなるほど適当なことを話していることがわかった。適当な話をしながら、

          LGBT法案に反対する保守派の動画を見てみた