最近の若い盆提灯は


 先日、自宅の盆提灯を片付けた。

  私はこの提灯が購入されて我が家に迎えられたときを知らないので、値段がどの程度だったのかわからない。それに、盆の時期に知人の家をまわって「はー、お宅の盆提灯はこれですか」などと品定めするような趣味も持っていない。
 だから、この提灯はおそらく、安物ではないがスタンダードな品なのだろうと勝手に考えるばかりである。

  提灯そのものは、虫食いはさておき特筆すべき点はない。ただ私は、盆提灯を見るたびにその仕組みに感嘆するばかりだ。

  内部の電球が発する熱が小規模な上昇気流を起こし、内部の透明で柄の描かれた筒を回転させ、その柄が提灯に投影される。
 見事なものだ。当初は蝋燭の火であったのかもしれないが、ともかくこれを最初に考案した人物は私にとって尊敬に値する。

  しかし最近は、蛍光灯や電球からLEDへと取り替えられていくのが時代の流れのようだ。提灯の中身がLEDになってしまった場合、筒を回転されるほどの熱を発さないだろう。
 現在の最新型の盆提灯は一体どうなっているのか。そして将来的にはどうなっていくのだろうか。 

 モーターでゆっくり回転するようになるのか。あるいは提灯そのものが球形、あるいは円柱形のスクリーンとなり、回転しているかのような模様を映し出すのか。

  若者がレコードを知らないように、子供がビデオテープを知らないように、盆提灯が電球の熱を必要とした時代を知らない世代がいつか誕生するのかもしれない。

  できればその時代にも、盆提灯を設置して天井に映る影の模様をぼんやり眺めるだけの、冴えない素晴らしき休日を過ごしたいものだ。
 私はひっそりと盆提灯の箱に願いを詰めておいた。 


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