麗しのありふれたチーズバーガー


 マクドナルドが末期のソ連へ進出した際、客が行列を作っている写真を見たことがある。

  ハンバーガー。自由の国の資本の味。

  今日はハンバーガーにまつわる記憶について書こうと思う。

  私は幼い頃はやや小食気味で、なおかつ見慣れないものを食べることをひどく嫌う傾向があった。
 そのため、家族でファストフード店に行っても最も基本的なハンバーガーばかりを食べていた記憶がある。そもそも外食が多くなかったのも原因かもしれない。

  そのマイルールとも呼べない傾向が崩れたのは小学生の頃だった。
 その頃特に親しかった友人は、家族ぐるみの外出によく私を誘ってくれた。遊園地やスケートリンクに連れていってくれたことをよく覚えている。

 もしかすると私の両親も、私一人分の費用とお礼で思い出作りができることをありがたく思っていたのかもしれない。家族全員で行くとその何倍もかかるわけで、家計に響くだろうと想像できる。

  それはともかく、遠出をするとなると食事も外食で共にすることになる。そのときに一度、マクドナルドに連れてきてもらったのだ。

  マクドナルドにやってきて、私は困った。

 いつも通り普通のハンバーガーを食べてもいいのだけれども、最も安いものを注文すると気を遣っていると思われてむしろ話がややこしくなるかもしれない。実際、そういう出来事はあったのだ。
 かといって、いつも同じようなものを注文していた私はハンバーガーの種類をさほど知らなかった。

 どうしたものか、と困り果てているところで、友人が口にした。

「チーズバーガーがいい」

 まさに天の助けであった。いくら無知な私でもチーズバーガーくらいは知っている。同じのでお願いします、などと口にして、私はひと安心した。

  チーズバーガーにはチーズが挟まっていた。普通のハンバーガーと違ってチーズの味がした。
  当たり前である。

  それ以来、私は普通のハンバーガー以外のものを主に注文するようになった。チーズバーガーもそれ以来、頼んだ記憶がない。
 それよりも期間限定のものを見ると注文してしまう、平均的消費者となったのだ。

  いまだにマクドナルドを見ると、そしてハンバーガーを食べると蘇る、ささいな記憶である。 


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